第百二十八話 連合軍
第百二十八話 連合軍
サイド なし
公爵邸からほんの百メートルほどで起きる戦闘。否応なしに領都の守備隊はそこに集中する事になる。
だが、だからと言って簡単に対応できるわけではない。
『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛───ッ!!』
咆哮をあげ、全身から生やしたガトリングガンを乱射する怪物。その巨体もあってライフル程度ではかすり傷しかつけられないというのに、奴の攻撃は公爵軍を容赦なく襲う。
幾つもの銃口が突き出した巨体は、もはや小型の要塞と言ってもいい。そんなものが領都の中央に現れれば、いかに公爵軍とはいえ対応できる火力を即時に用意できなかった。
「がっ」
「ぐぁ!?」
「くそ……!」
公爵邸の敷地内に生える木々で身を隠しながら、小隊長が近くの兵士に怒鳴る様に問いかける。
「ライフル砲はまだ持って来れんのか!」
「恐らく、この雨で地面がぬかるみ車輪が嵌ったのかと」
「くそ……エルフや獣人の使者用にアスファルトを敷かなかったのが裏目に出たか……!」
公爵邸の広大な敷地内は、領都の文明度に反してとても自然豊かである。それは偏に、エルフや獣人の要人がやってきた際できる限りリラックスしてもらう為だった。多少踏み固められていても、雨の日に数トンの大砲を運ぶのは骨が折れる。
圧倒的火力と巨体でもって公爵邸の『庭』を蹂躙する怪物だが、奴がもたらす物は弾丸だけではない。
「っ、おい!」
「え、ぐあ!?」
『ガァァ……!』
木々の隙間からやってきたグールが、兵士の背後からしがみ付く。怪物の体内から排出された奴らが、公爵軍を次々と襲っているのだ。
咄嗟にその兵士が組み付いてきた個体に肘打ちを叩き込むも、痛覚の無いアンデットはその程度で怯まない。
「動くなよ!」
拳銃を引き抜いた小隊長がグールの眉間を撃ち抜き、仰け反った所を兵士が拘束を振りほどいた。
倒れたグールの胸へともう一発叩き込んで、小隊長が舌うちする。
「くそっ、このままでは……!」
公爵邸につめていた兵士はたった六十人程度。戦争でかなりの数が北に持っていかれている。現在三十人がこの怪物を仕留める為に動いているものの、全員グールからの攻撃もあって思うように動けていない。
既に四名の死者が出ている。味方が減ればその分一人あたりへの負担も増し、場合によってはグール化した仲間と戦うはめとなりいずれは崩壊する。
はっきり言って状況は最悪だ。街の冒険者に声をかけてはいるものの、公爵邸につくまでにどれだけかかるか。そもそも、公爵領は兵士が強い分冒険者の質は高くない。モラルは他の領と比べ良いのだが、代わりに戦闘経験が少ない分弱かった。
ライフルに持ち替えながら、小隊長が策を練ろうと思案する。その時だった。
「リリーシャ様からの命令です。手をお貸ししましょう」
「なに?」
聞き慣れない声に振り返れば、丁度影が一つ駆けていく所だった。
夜会巻きでまとめられた金髪に、雪の様に白く磁器よりもきめ細かい肌。エメラルドの色の瞳を輝かせた、銃弾飛び交う鉄火場には相応しくない華奢な体つきの見目麗しい女性。そう、エルフである。
リリーシャの教育係にして、唯一王国への立ち入りを許可された護衛。彼女が左右で長さの違うサーベルを両手に持ち、この場に現れたのだ。
その後ろ姿に、思わず小隊長と隣の兵士は叫んだ。
「「痴女だぁ!!」」
彼女の恰好を端的に表せば、『スリングショット水着』である。その様な名前の物はこの世界にまだないが、某剣士が見れば間違いなくそう口にするだろう。
白い背中もしなやかな手足も剥き出しで、小ぶりながらツンと上を向いた美尻を惜しげもなく晒していた。
前も当然の様に胸の先端と股間を辛うじて隠しているだけであり、肌面積が圧倒的に勝っている。
そんな恰好でグールの集団へと飛び込む姿は、これまた某剣士が見たら『どこのB級映画だ』と呟くに違いない。
モノクルをかけた彼女が、厚さ十センチもあるサンダルで走っている。だと言うのに、その足さばきに一切の淀みはない。むしろ鍛え上げられた公爵軍の兵士すら上回る脚力であった。
「ふっ!」
目にも止まらぬ太刀筋で駆け抜け様にグール二体の首を刎ね、彼女は襲われている兵士を助けに走りまわる。
その度にズレそうになる衣服?を一切気にした様子もなく、教育係はモノクルの位置を神経質そうに細かく直していた。
「ふむ。雨なのは好都合。火薬の臭いが薄れてだいぶ楽になりました」
そう呟く彼女の耳には、実は耳栓が詰められている。銃声で三半規管をやられない為であった。
「おい、後ろだ!」
故に、小隊長の声も届かない。
『ガァァ……!』
背後から迫るグールに気づく事はできない───かと、思われた。
しかし、彼女は振り返る事なく左手の比較的短いサーベルをグールの首に突き刺し、そのまま捻って骨と神経を引き裂いた。
魔力感知。エルフはその全身で大気中の魔力の流れを察知し、周囲の状況を把握する。熟練者となれば、見ただけで相手の感情さえ読み取れる程だ。
その精度は、あのドルトレス王が外交の度に自己催眠で化かし合いに挑まねばならなかったほど。リリーシャの教育係であり護衛でもある彼女の技量が、低いわけがない。
エルフ基準で拘束具同然の厚着をしている今も、その感度は非常に高いのである。
「『剣爛』や『ソードマン』には及びませんが……私も、剣士として一角の腕前と自負しております。グール程度に遅れは取りません」
そう言ってまた駆け出す彼女。事実、その太刀筋はシュミットやソードマンといった人間の限界近い領域には一歩届かない。遠く、大きな一歩分の差があった。
しかし、恐らく『戦闘経験』という点で彼女はあの二人を逆に大きく突き放す。
エルフの寿命は約千年。そして、この教育係の年齢は二百六十歳である。彼女は二百年前の戦争すら経験しているのだ。更には教育係として働く合間にも、剣の鍛錬を怠った日はない。
そこに加わるエルフ特有の膨大な魔力量と卓越した魔力制御からくる身体強化。一刀で生木さえ両断する剣腕は、グール相手に遺憾なく発揮される。
体表の結界で雨水を防ぎながら、彼女は縦横無尽に血と泥の地面を駆け抜けた。
「……驚いたが、これで多少は希望が見えたな」
「え、隊長見えたんですか。あの人のちく」
「ちげぇよ殺すぞ」
部下のこめかみに銃口を押し付けながら、小隊長が怪物を睨む。
モグラの様な化け物は、咆哮をあげながら散発的に攻撃する公爵軍の銃弾に時折身じろぎしては、反撃とガトリングガンを放っている。
その四肢を地面にしっかりと固定しながら。
「……妙だな。何故奴はあの場を動かない」
「わかりません。動けない、という可能性は?」
「『剣爛』からの報告で奴は地上での移動能力こそ低いが、足で這いずる様に動けると聞いている。物理的な理由で動けないという可能性は低い。そもそもただ動けないのなら穴に戻ればいいはずだ」
「となれば……まさか!」
「ああ。『退路』を確保している可能性がある。くそったれ……!」
泥まみれになりながら地面に伏せて銃撃をしのぎながら、小隊長が歯噛みする。
「既にウェンディゴ隊の侵入を許している可能性がある。シーゲル伍長がドワーフの職人を保護しに向かったらしいが……」
「彼は用心深い男です。きっと大丈夫とは思いますが」
「楽観はできんな。列車砲と職人。どちらがやられても王国に未来はない。列車砲はアリサ様が守ってくれるとして、職人は───ん?」
小隊長がそこで言葉を止め、キョロキョロと周囲を見回しはじめた。
「どうしました」
「何か、妙な音が聞こえないか」
「音、ですか?雨と銃声でよく……」
───メキメキメキ。
───ブォォン!ブォォォ……!
───キュロキュロキュロ……。
「え、これは……」
「近づいているな。くそ、今度は何だってんだ!」
「隊長、この音はまさかあの新兵器じゃ」
部下の言葉が終わる前に、地面に伏せていた彼らの腹に強い振動が伝わってきた。
かと思えば、すぐ近くの木がへし折られ倒れ始める。一本二本ではない。何本もの樹木が、纏めてだ。
「は?」
「なぁ!?」
気の抜けた声を発する部下を引きずって、小隊長が訳も分からぬままそこから離れた。
彼らの目の前を、巨大な鉄の塊が地響きをたてて進んで行く。
全高三メートル、全長九メートル。そして重量は九トンを超える、鋼の車。あの化け物ほどではなくとも、それでも動く要塞と呼べる兵器がそこにあった。
「あれは、例の倉庫で作られていた……!」
バトルタンク───戦車である。
ギュラギュラと音をたて、履帯が雨で濡れた地面もなんのそのと前進していく。人の頭ほどもある石が踏み砕かれ、立ち並ぶ木々は無造作になぎ倒されていった。
そして、その砲塔が怪物へと狙いを定める。
「いかん……!」
小隊長と部下が耳を塞ぎながら、戦車から離れた。直後、轟音が響く。
戦車に搭載された七十五ミリライフル砲が火を噴いたのだ。そして、
『ガァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!??』
これまで好き放題に暴れていた怪物が、絶叫をあげる。
茶色い体毛に覆われた巨体の、右前脚の付け根。そこが火山の噴火の様に弾け、肉片と血をまき散らす。泥の中にそれらが落ちていって、気色の悪い音を奏でた。
誰が見ても明らかに、戦車の砲弾があの怪物へ有効なダメージを与えた瞬間だった。
「くっそ、どこの馬鹿だアレを勝手に持ち出したのは!いいぞ、もっとやれ!」
「戦車ならこの雨の中でも戦える……これなら勝てますね、隊長!」
「そうだな。……うん?」
悪態こそつきながら不敵に笑う小隊長。そんな彼の所に、兵士が駆け寄ってくる。
それは、職人たちの護衛を任されていたシーゲル伍長とその分隊員だった。
「どうしてお前らがここにいる!職人たちの護衛はどうした!」
「そ、それが……」
怒鳴り声を出す小隊長に、シーゲル伍長が青い顔で言いよどんだ。
その様子に小隊長も眉間に皺を寄せる。なんせ伍長は部隊内でも冷静沈着かつ切り替えの早い男で有名なのだ。己が怒鳴っただけでこのように委縮しないと彼は知っている。
どういう事かと訝しむ小隊長に、伍長は戦車を指差した。
「あそこです」
「なに?」
「職人の方々は、あそこにいます」
「……はぁ!?」
二度目の砲声。それが空を切り、あろう事か公爵邸の端に着弾する。不幸中の幸いでそこは無人の部屋だったが、それを知る者はこの場にいない。
轟音と崩落音が響く中、勢いよく戦車のハッチが開いた。
「どこを狙っている!もっと右だ右!味方に当たったらどうする!」
「ああ!?聞こえんぞ馬鹿たれ!」
「がっはっは!この衝撃はいいのう!!」
「おい、あやつこっち向いておらんか?」
「目はないが、たぶんそうじゃろう。というか、銃口向けとるな」
自分に有効な攻撃を与えた存在に、当然ながら怪物は警戒心と敵意を向ける。右肩からおびただしい血を流しながら、唸り声をあげて全身の銃口を戦車に合わせた。
それに対し、大慌てで親方がハッチを閉じて戦車の中に体を引っ込ませる。
直後、鉛の豪雨が戦車上部を襲った。
「ぬおおおおおおお!?」
「無駄じゃ無駄じゃ。この戦車はガトリングガン程度では抜けんぞぉ」
「いや、たしか上部装甲は比較的薄くなかったか?」
「傾斜装甲の利点を活かせんからのう。どこまで防げるかわからん」
「あれ、結構やばい?」
「いいから後退せんか馬鹿どもぉ!!」
銃弾を弾き火花と甲高い音を鳴らし続けながら、戦車が後退する。先ほどまで彼らがいた場所に、怪物の左前脚が振り下ろされた。
ずしんと重く響く衝撃に戦車がぐらつき、通ってきたのとは別の木々に車両後部をぶつける。
「ぐぉぉ……どこ見て走ってんだ馬鹿野郎!」
「うるさいわい!でぇい、後ろがよく見えん……!」
「そもそも全体的に視界が悪いのう」
「髭で感知しようにも、車内からじゃなぁ」
「しょうがない。ハッチ開けるぞ」
ガチャリとまたそれぞれハッチを開き、お世辞にも上手いとは言えない運転で走る戦車。
それをあんぐりと見ていた小隊長が、伍長に顔を向ける。
「おま、えぇ……?」
「我々が到着した時には既に乗り込んでおられました。一応、ハンナ殿は公爵邸の部隊に任せてありますが……」
戦車がどうにかこうにかという様子で、怪物の体から放たれる鉛玉を回避し続ける。それは偏に怪物の狙いが荒いだけだ。いつその幸運が尽きてもおかしくはない。
いくら上部装甲とはいえ、戦車のそれは固い。だが何分未だ戦闘データの少ない兵器であるため、不安は大いにあった。
「くっ、とにかく援護だ!これ以上戦車を狙わせるな!」
「了解!」
小隊長と共にその場の公爵軍が怪物へと銃撃を行う。それにより、その意識が彼らにも向いた。
ガトリングガンが向けられるなり、彼らもすぐさま後退。木々を盾に銃撃をしのぐ。
それをよそに蛇行しながら向かってくる車両に、グールと交戦していた教育係がぎょっとした様子で回避した。
「ちょ、なんですかこれは!というか五月蠅い!そして臭い!」
「あぁん?なんだエルフか。新種のグールかと思ったぞ」
「どうしてこんな所にいるんじゃお前」
「何しとるんじゃ貴様。というか何じゃその恰好」
「変態か?変態だったわい」
「エルフじゃからな……」
「んなぁ!?」
ドワーフ達の言葉に、教育係が眦をつり上げる。
耳栓で声こそ聞こえないが、彼らが顔を出した事で表情と魔力から何を言っているかわかったのだ。
「誰が変態ですか!ちゃんと正装しているでしょう!!」
そう言って己の服……服?本人が服と主張している布を指差す教育係。
彼女の纏うスリングショット水着の様な布は、黒く染められていた。エルフなりの正装のつもりである。
だが、白く華奢な体で黒い扇情的な布を纏うのは逆に淫猥でさえあった。ついでに動き回ったせいで後ろ側がとても食い込んでいる。
結界で濡れないので体に張り付いてはいないが、そもそもの布の量と形状のせいで体のラインは丸わかりである。ついでに色々とはみ出しそうだ。
そんな姿で、エルフの教育係はなんら恥じる所はないと美乳を張ってモノクルの位置を直していた。
「変態じゃな」
「変態じゃろ」
「裸族に改名しろ」
「歳を考えろ婆」
「『剣爛』を見た後じゃから腕前に関してもそそらんな。帰れ」
「こ、この、言わせておけば……!」
美しい顔に青筋をたてる彼女だが、突如戦車から距離を取る様に跳ねた。
直後戦車へと鉛の豪雨が降り注ぐ。怪物が足を止めた戦車へと再び狙いを定めたのだ。
「何をしている!足を止めるな!射線を切って動き続けろ!!」
それを見て近くのグールを撃ち殺しながら小隊長が怒鳴る。その声はエンジン音と銃声で聞こえなかったものの、ドワーフ達も慌てて戦車を走らせはじめた。
教育係の後を追う様な軌道で。
「ちょ、なんで私についてくるのですか!?あの怪物の狙いは貴方達でしょう!」
「あぁ?聞こえんなぁ」
「儂ら結構な歳じゃからなぁ。お前さん程じゃないが」
「決して貴様の走った後の方が車両を進めやすそうと思ったわけではないぞ」
「ほれほれ、はよ走らんか。追いついてしまうぞ」
「あぁ~、グールが車輪に絡まらなくて楽じゃわい」
「後でぶち殺しますよ髭モグラども!!」
「「「「「なんじゃと白モヤシ!!」」」」」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ彼らに、小隊長の中で何かがきれた。
「ふざけやがって……」
「た、隊長?」
「あんな素人に、それも護衛対象に助けられているだぁ……?ふざけんじゃねえぞクソがぁ!」
掴みかかってきたグールを銃床で殴り飛ばし、小隊長が吠える。
「シーゲル伍長!手榴弾用意!!」
「はっ!」
すぐさま伍長が背嚢から手榴弾を取り出し、安全子を外す。
それはセルエルセス王の手記に残っていたパイナップル型の物ではなく、布で包んだ円筒状の形状をしていた。片側には余った布が一本に纏まって伸びており、もう片方には丸い突起が取り付けられている。
ようは、投げた際ぶつかった拍子に先端の撃針が雷管にぶつかる事で爆発するタイプの手榴弾だ。
「投げるのは構いませんが、怪物の体表がこれを爆発させられる程硬いかはわかりませんよ?毛皮相手にこの手榴弾は相性が悪いです」
「突き出ているガトリングガンを狙え。あそこなら確実に爆発する!」
伍長を守る様に小隊長達が円陣を組み、近づくグール達を蹴散らしていく。ちょうど、怪物の敵意は戦車の方に向けられていた。
小隊長が銃剣をライフルに装着しながら、犬歯をむき出しにした獰猛な笑みで伍長に振り返る。
「お前ならできるだろう」
「了解。やってみせます」
伸びた布を掴んで手榴弾を回す伍長。彼が遠心力で勢いをつけたそれが、雄々しい掛け声と共に投げられた。
怪物の巨体が開けられた大穴から碌に動かなかった事もあり、狙い違わずガトリングガンの一つに手榴弾が衝突する。
ガチリと撃針が押し込まれ、爆発。怪物の毛皮と肉を吹き飛ばし、更にはその下にあったガトリングガンの弾倉までも誘爆させた。
『ギィィィィィィア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!』
怪物の絶叫が強い雨がふる天に木霊する。
「よぉし!」
グールを蹴り倒して止めを刺しながら、小隊長が吠えた。
「各員、集まれ!俺達は王国最強の戦闘部隊だ!ドワーフやエルフの要人に後れをとるんじゃねぇ!こんな怪物程度、俺らだけで殺しきってみせろ!」
「了解ッ!!」
バラバラだった公爵軍が再集結し、グールの迎撃と手榴弾の投擲係に分かれて怪物を攻撃する。
「なんの、俺達もやるぞ!」
「次弾、装填したぞ!」
「狙いよぉし……撃てぇ!」
更には怪物が怯んだ事で戦車も停車し、狙いを定めそのどてっ腹へと砲弾を叩き込む。
「ああ、もう!火薬の音と臭いは嫌いです……!あとガソリンとやら!」
それらの音に眉間へ深い皺を寄せながらも、戦車に近づくグール達を片っ端から斬り捨てていくエルフ。
形こそ違い、獣人がこの場にいないながらも───二百年前の戦場を思い起こさせる光景が、公爵邸にて出来上がっていた。
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