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【SF 空想科学】

出口のない結末

作者: 小雨川蛙

 遥か未来。

 タイムマシンの存在が当たり前になった時代において、歴史を研究していた学者の一人がとある事に気が付いた。

 「やはりおかしい」

 彼はそう呟いて机上の用紙に赤丸を付けた。

 タイムマシンが当たり前の時代にとって、過去の出来事を調べると言うのはある意味では無意味に等しい。

 と言うのも、気になる事があれば時間を遡り当時の光景を見てしまえば済むからだ。

 それでもどういう訳か、過去の研究をする者は後を絶たず、同時に過去を研究する者達は必ずこの隙間を発見する。

 「この時間だけ、どこにも記述が存在しない」

 過去の時間を調べていけば、調べるほど精密になっていく記録。

 その中に存在する『記述が全く存在しない』時間。

 それはタイムマシンが無い頃であれば永遠の謎として葬られていただろうが今はもう違う。

 むしろ、タイムマシンがある現在であれば何かしらの大発見をする可能性が高い。

 彼は胸を躍らせてタイムマシンに乗り込むと直ちにその時代へと移動した。


  学者の向かった時代の人間の一人が言った。

 「見ろ、ゲートが開いた!」

 「新しいタイムマシンが来るみたいだ! 今度こそ、ここから出られるかも知れない!」

 その声を聞いて、周りに何人もの人間が集まってきた。

 その姿は様々。

 どうやらタイムマシンが存在したあらゆる時代の人間達が各々目的を持ってこの時代にやって来たらしい。

 彼らは一様にやって来るタイムマシンを眺めていたが、やがて見ていた一人がため息と共に呟いた。

 「いや、あのタイムマシンの型は俺の時代と同じだ」

 それを聞いた別の時代の人間たちはため息をついてその場を後にした。

 「それじゃ、今回もダメか」

 「期待して損をした」

 「おい、今回はお前たちが説明をしておけよ」

 そんな言葉を投げかけられながら、学者と同じ時代から来た人間たちはため息をついた。

 「俺らの生まれた時代より前にも後にも、この時代は謎らしいな」

 「だからこそ、ああやって新しい犠牲者が来るんだろうよ。新発見をしたと喜んでな」

 タイムマシンから学者が降りてきた。彼は興奮した様子でこの暗い世界を見回している。

 その様を見て何人かが再びため息をついた。

 「俺らもあんな感じだったな」

 「ああ、新発見だと喜んだ物だ。そもそも誰が予想出来る?」

 学者の見つけた空白の時代。

 それはどういうわけか時間の流れない時代。

 「時間に干渉するタイムマシンもここじゃ、ただの置物だ」

 そうため息交じりに語る先駆者の前で学者が幾つもの放置されたタイムマシンを見つけた。

 「どれ、そろそろ説明してやるか」

  一人がそう言って歩き出した。

 程なくして学者の興奮は絶望に変わる。

 やがてこの場所から抜け出せるタイムマシンがやって来るのを待つ事になるだろう。

 知恵の探究故に出口のない時代に囚われた哀れな先駆者と同じように。

 

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