第三話
俺益荒男と、ユリ・アンジュは王国の関所にたどり着いた。
何人か関所前で商人や冒険者が並んでいた。
益「…ウッ」
ユリ「大丈夫ですか。(・∀・)ニヤニヤ」
益「人ごとだと思いよって、元はといえば原因はあんただろ。」
ユリ「まぁ、そうですけど。これで今日は2食食べれましたね。」
益「2時間おきに食うもんじゃないわ‼」
待っている間、そんな話をしながらも自分たちの番が来た。
門兵「通行証、又は許可書を確認します」
益「はい。許可書」
門兵「確かに。新人冒険者ですか。」
益「そうですけど」
門兵「今森の中は獣や魔獣が多くうろついています。気を付けてくださいね。」
益「そうなんですね。気を付けます。」
そんなやり取りをして、森へ向かう。
その30分後、関所に連絡が入る。
「森がヤバい」
関所は直ちに森への通行制限がかけるが、通過してしまった益一行には伝える術もなく、放置となる。
益達はというと、特に問題なく森を探索していた。
益「葱って、あの葱で合ってる?」
ユリ「恐らく、益さんの想像しているもので合っていますよ」
益「どこに自生してるんだ?大体地中に埋まってると思って下の方を探しているんだけど」
ユリ「それでさっきから下を向いて歩いているんですか」
益「え?違うの?」
ユリ「違いますよ。あっ、そう言っていると来ましたよ。葱です。」
益「へ?( ゜д゜)」
益は驚愕もできなかった。鹿のような獣が現れたのだ。
なんと頭に葱が刺さった状態で。
益「何?あれ」
ユリ「何って葱です。それ以上でもそれ以下でもありません。」
益「あなた方には葱にしか興味ないのか。それ以下が問題だろ!!!!!」
ユリ「そういえば伝えていませんでしたね。頭部のみを攻撃してくださいね。また生えてくるので」
益「そういう問題?後攻撃手段ないし」
ユリ「昨日も今朝も見せたでしょ。あの風の魔法を使ってください。」
益「わかるか。」
ユリ「最近の若者はこれだから…。今回だけ私が見本を見せます。目ん玉かっぽじってよく見ておいてくださいね」
益「口悪いな」
ユリは少し獣に近づき、手をかざし、呪文のようなものを唱える。
ユリ「「風よ、爆ぜよ」」
そう唱えると獣の頭の上で小さな竜巻が発生する。
簡単に頭部の葱は刈り取られていった。
ユリ「わかりましたか。簡単でしょ。やってみてくださいね」
益「わかるか!!!!!もうちょっとわかりやすく教えてくれ」
ユリ「注文が多いですね」
益「仕方ないだろ。そこは勘弁してほしい」
ユリ「ではまず、心を鎮めてください。そして対象と効果範囲を決めていきます。」
益「敵を前に落ち着かんといかんのか。」
ユリ「そうです。そうしないと暴発しますよ。」
益「フラグかな」
ユリ「そんなことより、はい、落ち着いて対象をよく見て」
益「はい。」
ユリ「効果範囲を決めましたか」
益「はい。決めました。頭部より少し上を狙ってます。」
ユリ「後は、詠唱になります。「「風よ、爆ぜよ」」と唱えたら魔法の元となる自己の魔法行使力に応じて魔法が発動されます。」
益「へ~、結構簡単だな」
ユリ「さっきからそう言っているでしょ」
益「やってみるわ」
益は対象に近づき、唱える。
益「「風よ、爆ぜよ」」
特に何も起こらない。
益「あれ?」
ユリ「はい、もう一度。心を静めるところから」
益「…はい。」
益「「風よ、爆ぜよ」」
また、何も起こらない。
ユリ「もう一度‼」
益「…はい」
そんなやり取りを5回ほど繰り返し、
益「「風よ!!爆ぜよ!!!!!」」
やけくそで放った一発でようやく刈り取りに成功した。
益「思った以上にかかったな。想像以上に難しいぞ、これ」
ユリ「目測が甘いのですよ。こればかりは経験が必要ですので仕方のないことです。試行回数を増やして体と感覚で覚えていってください。」
益「因みに何回か放った魔法はどうなるんだ?」
ユリ「さぁ。事象に発現する前に行使力を失って霧散したのではないかと」
益「よくわからんが、ヨシってことで」
そこからは順調に採取を完了していった。
魔法に関して無駄打ちを何度かしてしまったが。
ユリは驚いていた。
いくら初級の魔法とは言え、何発もポンポンと放つことはできないのである。
また魔法行使の最中、おかしなことは何もなかった。効果範囲の選定ミスとお茶を濁した発言をしたが、対象に15m程度まで近づき、見ることだけで発動するこの魔法で、目測を誤っても魔法自体は発動するはずであった。