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6-4 水上蓮はどうしても選べない

「うぅ、重ったよりヘビーな話でした」

「ほんと急にこんな話をしてしまってすまん」

 俺は店長が作ってくれた賄いを食べながら経緯を話した(凌さんと話した時と同様に、細かいところはボカしつつ)。

「うーーーん。私がレンさんの立場だったら発狂しちゃいそうです」

「あはは、そんな深刻に考えなくても。ま、聞いてもらえただけでもすっきりしたし」

 頭を抱えているみつきが面白くてつい笑ってしまう。

 もしかしたら、あえて大げさにリアクションしてくれているのかもしれないけど、今はみつきの底なしの明るさがありがたかった。

「ちなみに凌さんはなんてアドバイスしてくれたんですか?」

「優先度の高い方を選べばいいんじゃないかって」

「なるほど、さすがは凌さん。リアリストですね。うーんでも、その優先度が高い方が選べないってところもありますよね?」

「そうだね、たしかに。パッと決められるほど歴然とした差はないかな。色々な要素を考慮した上で判断する必要があると思う」

 三木や椋梨との関係、和希やクラスメイトとの関係に優先度の差があるとしたら、それは極々僅かなものとなるだろう。それこそ紙一重だ。

「ちなみにさ。みつきだったらどっちを選ぶ? 率直な意見で構わないからさ」

 最終的に判断するのはもちろん俺だけど、第三者にとっての最適解というのも、一度聞いてみたくはあった。

「レンさんも難しいこと聞きますねー。……私ってこう見えてかなり打算的な人間なので、そんな私の意見ってことでいいなら」

「聞かせてほしい」

「——————私ならクラスの友人を選びます」

 それが自身を打算的と評する、みつきが出した答えだった。

「一応、理由も教えてほしいな」

「それはやっぱり……幸せの総量を考えたらってところですかね。クラスの友人さんは普通にリア充なんですよね? 残りの高校生活が二年近くあることを考えたら、そういった人と関わっていた方が楽しいと思うんです。文化祭、体育祭、修学旅行。それは高校生の今だからしかできない経験で取り返しはつきません。そう考えた時に、私は遥さんたちを選ぶことは難しいと考えました」

 みつきの言ったことはたしかに俺に欠けている視点だった。

 あまりに打算的すぎて、言った本人も苦しそうな表情を浮かべている。しかし、これも一つの真理だと思った。

 幸せの総量、言い得て妙だと思う。

 きっとどちらを選んでも後悔はするし、一方で楽しいこともあるはずだ。

 どちらを選んでも後悔するし、楽しいことがあるのであれば、より自分にとっての幸せが最大化される方を選ぶべきというのは合理的な判断だ。

「なるほどな。長期的な視点に立ってみるとみつきの言ってることはわかるよ。ただ、友人関係について、損得では考えたくないってのが正直なとこだな……」

「そうですね、私の考え方はとても冷たいと思います。けど、自分がより幸せになる未来を掴み取ろうとすることは悪いことですかね?」

「いや、一つの考え方としてはありだと思う。俺の中で選択の基準に『損得』ってのはなかったからさ。みつきの話を聞いてすごく参考になったよ」

 あれこれ考えた上で、それでもどちらかを選べなかった時は、みつきの考え方を取り入れて、自分がより幸せになれる方を選ぶというのはありだと思う。

「なら、よかったです! 最後に余計なお世話かもしれませんが、仮にクラスの友人を選んでも、別に遥さんとの関係がなくなるってわけではないと思います。だって、バイト先だって地元も同じなんですよ? だから大丈夫ですよ!」

「……そうだな。みつき、ありがとな」

 俺もそうだったらいいなと思う。けど、おそらくその未来はない。

 和希たちを選んだら、間違いなく三木は俺から距離を置く。それは三木の秘密を喧伝することだから、友達を裏切ることだから。

 そんな人間がどの面を下げて、友達を続ければいいっていうんだ?

 みつきの考えは参考になった。それでも俺は三木も椋梨も和希たちも、全員の幸せの総量が最大になるような選択をしたいんだ。 

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