侵攻
日が昇る少し前、別動隊率いるオーネは国境線の東にある森の中にいた。
私は、部下に聞こえる程度の声で、
「まだか。夜明けは!」
私は、速くアース国に侵攻したい。別に、私は戦闘狂でなければ、アース国に恨みも持っていない。
しかし、陛下の望みとなったら、話は別だ。早く陛下のお役立てたい。
そんなことを考えていたら日が昇ってきた
気持ちが高まりすぎて声が少し上ずった
「ようやくか!」
一方、オーレス軍本隊の総大将のレックスは、国境線の西側の平野に陣を構えていた。
レックスも日が昇るのを待ち望んでいた。
そして、遂に日が昇ってきた。
東側が騒がしくなってきた
「オーネ、上手くやったようだな」
レックスは、座っていた椅子から立ち上がった
居並ぶ兵士たちに命じた
「全軍に告ぐ。アース国へ侵攻する。陛下のため、祖国のため命に代えても戦果を挙げろ!!」
「「おおっ!!!」」
割れるような雄たけびが大地に轟く
本隊がアース国に侵攻している時、別動隊は奇襲が成功した。
さらに、ヨウレイ率いる黒狐隊が攪乱して、敵側は混乱していた。
そんな状態の国が防衛できるはずもなく、主だった戦闘もなく敵城へと迫った。
その頃にはアース国の優勢は確固たるものになっていた。
サイヤン城の城門を突破したと同時にアース国王べジアンは、城兵の助命を引き換えに降伏する旨の使者を送ってきた。
この条件を和樹が承諾して、アース国はオーレス国に降伏した。
和樹は、戦後処理のためにサイヤン城に来ている。
俺が真っ先にやらないといけないのは、国王家族の処遇だ。
俺はサイヤン城の玉座に座る。
そこに、縄に縛られた国王べジアン、王妃シークネ、王女フォーネが連れて来られた
「面を上げよ」
「和樹殿、城兵の助命をしてくれてありがとう。」
「あぁ。だが、国民に示しをつけるためにべジアン殿たちは生かしては置けない」
「私の命は良いが。妻と娘の命は取らないで欲しい」
「この通りだ」
そう言うと、べジアンは深々と頭を下げた。
「あなた、私も一緒に参ります」
「シークネ、だが..」
「どこまでも、お供します」
「そうか。ありがとう」
「和樹殿、私からもお願いたします」
「いえ、私も父上と母上と共に..」
「だめだ。お前は生きろ」
「しかし、父上..」
「私たちの分も生きてフォーネ」
「母上..」
少しの沈黙が訪れた。
「和樹殿、フォーネを頼んだ」
「分かった」
「オーネ、二人を連れていけ」
「はっ」
3日後、アース国元国王夫妻は処刑された。
後世、この戦いはオーレス帝国初代皇帝カズキの最初の戦争として語り継がれていく。