31 賢者マーリン
「いきなり、入ってすまんのう、じゃがワシがいた方が話もスムーズに進むじゃろ」
部屋に入って来たのは、見た目が子供の姿をした女性だった。
「お主がタイラントドラゴンを一人で討伐したエリナじゃな、ワシは、マーリンと言う者じゃこんな見た目をしておるが、これでもお主の何十倍も長生きしておるのじゃ、この耳を見れば納得もいくじゃろ」
そう言って女性は、エリナに自分の尖った耳を見せる。
「エリナ様、マーリン様は、エルフ族であり陛下が幼少期の頃から教育係として王家に仕えております」
「それだけでは、ないマーリン殿は、私だけでは、なくリースの王妃教育も担当しさらに何代も前の王と王妃の教育をしてくれている、現在は、息子や娘達の教育もしてくれている」
アーシアがマーリンの説明をし王がさらに補足するように説明する。
「ほっほっほ、そんなに言われると照れるのじゃ、さてルイ坊よこのエリナと言う者も国が召喚した勇者の被害にあった者じゃろ?」
「はい、その通りです」
「そう、気を落ち込むでない、リースも責任を感じ過ぎじゃ、せっかくの綺麗な顔が台無しじゃぞ」
「しかし、マリーン様エリナさんの話を聞いてどれだけの女性の人生が失われてしまったのかと思うと、同じ女性としては、辛い思いです、ましてやその原因は、私達王家の者にあります」
「そうじゃな、確かにお主達が勇者召喚をしなければ、召喚された勇者が他人を洗脳するスキルなど持っていなければ、召喚された勇者が自分勝手な者でなければ、このような被害は、なかったかもしれぬ、ワシの弟子もな」
「マーリン殿、ファノン殿は、今はどうしておられますか?」
「うむ、ワシの故国エルフ王国で面倒を見ておるのじゃ、じゃがあまりにもショックな事じゃからな、今だに男性に対しては、恐怖を感じておるようじゃ、部屋からも出ようとせずに、あの子の師匠であるワシと女性のエルフには、どうにか心を許しておるようじゃがのう」
「そうでしたか」
「じゃが、今回の件でエルフの中には、べリクス王国に対しての怒りの声が上がっておるのも確かじゃ、中には、今回の事は、エルフ王国への裏切りだと考え同盟を解消すると言う声も上がっておるのじゃ」
「当然の事ですね、我々は、民達からの評判を考え偽りの情報を伝えたのですから」
「・・・・・・」
エリナは、王とマーリンの会話を黙って聞いている。
「マーリン様の住むエルフ王国と我がべリクス王国は、同盟を結んでおられるのです、さらにマーリン様には、ファノン様と言う弟子がおられたのですファノン様は、人間ですがエルフ王国でマーリン様から魔法を教わっていたのです、マーリン様は、賢者と呼ばれています、さらにファノン様は、魔王討伐の勇者パーティーの一人でした」
「なるほど、その愛弟子とも言える子が信じてあのクズと共に魔王討伐に向かわせたのにこんな結果になったから同盟も危うい状況と言う事か」
「ええ、しかもファノン様は、人間ですがエルフ王国では、他のエルフ達からも可愛がられていましたから余計にエルフ王国の者達は、今回の事でお怒りになられてるみたいですね」
「なるほど、それも当然か」
「しかし、そうなると同盟がなくなるのは、マズいのではござらぬか?」
「ほっほっほ、心配無用じゃ、同盟は、解消しないのじゃ」
エリナ達の会話を聞いていたマーリンは、答える。
「それは、本当ですか?」
「うむ、今回の事で同盟を解消しようと言う声は、上がったが女王とワシそれと臣下の者達でどうにか、静まったからのう、女王もお主の事は、わかっておるし、歴代の王達との長きにわたる同盟じゃ、お主が愚王なら同盟もここまでじゃったがお主は、王として優秀じゃからなお主の今までの功績も我が国は、ちゃんと理解しておる、じゃから安心するのじゃ」
「感謝します」
王と王妃は、マーリンに頭を下げ感謝を述べる。
「じゃが、今回の事は、いずれは、民達にも真実を伝えなければならぬのじゃ、勇者と共にパーティを組んでいた他の者達も別の国で静かに暮らしておるのじゃ、そして多くの女性が被害にあった、これは、お主達が背負わなければならない事じゃ」
「ええ、わかっております」
「私達が全ての責任を負います、ですが子供達は」
「わかっておるのじゃ、子供達にまで背負わせる気は、ないのじゃ、ただあの子達には、後世の者達に伝える役目を負ってもらうが、ワシも引き続き協力するから安心するのじゃ」
「マーリン様、ありがとうございます」
王妃は、感謝する。
「それにお主だって考えに考えて勇者召喚をする決意をしたのじゃろ? 確かにあの時は、魔王の進行が想像以上に早く、しかも相当な力を持っていたのじゃおそらくあの魔王に勝てる者は、その当時は、おらなかったのじゃ」
「賢者と呼ばれたマーリン様でも魔王は、倒せなかったのですか?」
「うむ、残念ながらワシでも相手にならん強さじゃ、それに魔王の進行は、本当に早くてのう、今すぐにでも魔王に対抗できる方法が別の世界から召喚させる勇者召喚しかなかったのじゃ、じゃが召喚した勇者がまさかあのような性格の者だったとは」
アーシアの質問にマーリンは、そう答える。
そしてマーリンは、エリナに顔を向ける。
「エリナとやら勇者召喚をした事によって災難じゃったななどと軽々しく言えないのじゃ、お主にとっては、何もかも失ってしまったのじゃからな、ワシの愛弟子も同じように大切なものを失ってしまったのじゃ、そしてこの国の多くの女性達が不幸な目に会ってしまったのじゃ、じゃがのうエリナよ言い訳にしかならないがルイ坊も決してこのような結果を望んで勇者召喚をしたわけじゃないのじゃ、魔王の進行は、その時本当に早くてもう時間を掛けている場合じゃなかったのじゃ、だから最後の希望としてそうするしかなかったのじゃ、結果的には、不幸な結果になってしまったが決してこんな結果になってほしくて勇者召喚をしたわけでは、ないと言う事は、わかってほしいのじゃ」
「・・・・・・」
「それにじゃ、勇者・・・いやあの異世界人も自分のいた世界では、犯罪者でもなくただの一般の平民の子だと思うのじゃ、この世界ではしゃいでいる子供達と同じようにな、それが強力な力を手に入れた事により、暴走してしまったと思うのじゃ、それにあの異世界人にも家族がいたはずじゃ、その家族から無理やりこの世界に連れて来たのじゃ、いわば被害者のようなものじゃ、きっと不安とかがあったと思うのじゃ、だからある程度の自由を許してしまったのじゃろう、機嫌を損ねて魔王討伐をしてくれなかったらとかそう言う思いが出てしまったのじゃ、だからと言って許せと言うわけじゃないのじゃ、ただ、色々な事情があったのもまた事実なのじゃ」
「・・・・・・」
マーリンの話をエリナは、黙って聞いている。
「すまぬのう、年を取るとどうも長話になって結局綺麗事を言ったとしてもお主の怒りには、何の関係もないと言うのにただ、ワシとしては、異世界人の事は、まだしも王族、貴族をあまり恨まないでくれぬか、何だったらこのババに愚痴を言うと良いのじゃ、ワシは、何百年と生きておるからの若者の愚痴の千や二千、聞いてやるのじゃ、ほっほっほ」
マーリンは、微笑んでエリナに言う。
「・・・・・・わからないわけじゃないさ、王族や貴族も私のようなただの村人の娘には、わからない大変な事があるのかもしれないって思ってたさ、あのクズの事もいきなり家族から引き離されてたった一人で知らない世界に来たら不安が出る事もわからないわけじゃない、だが、それでも私は・・・」
エリナは、そこまで言って言葉に詰まる。
「わかっているんだ、王族も貴族も悪くない、世界の平和のために魔王を倒すためにしたんだと、頭では、理解している、結果的にあのクズと魔王は、相打ちになった、世界は、救われた、嘘の情報を流したのも、あのクズがやったその後の混乱を抑えるために仕方なかった事、きっとたくさん悩んで考えて決めた事だと頭では、理解しているんだ・・・・・・理解しているんだ」
「そうかそうか、頭では、理解しているが感情の問題じゃな、頭と感情では、また別の問題じゃからのう、頭で理解できても感情がそれを許さないのじゃな、確かに王族、貴族のした事が間違っているとも思えないし、かと言ってお主のその感情も間違っているとも思えん、難しい問題なのじゃ、何が正しく何が間違いかそれは、わからないものじゃ」
「何百年も生きているエルフでもわからないのか?」
「そうじゃの、人より長く生きていてもわからない事だってあるのじゃ、ワシだって今回の勇者召喚は、本当に正しかったのかと思うくらいじゃ、じゃがの、生きていればこうやって何が正しくて何が間違いだったかなど、結局正解などないのじゃ、人生とは、そう言うものなのじゃ」
「そうか」
「だから、エリナよ死に場所を求めて冒険者をやっているお主の考えも正しいのか間違いなのかもわからないものじゃ、じゃが、それでもどうか死ぬ事は、もう少しだけ考え直しては、どうじゃ? ワシからすれば、お主などまだ若くかわいい子供みたいなものじゃ、若者が先に死にゆくのは、あまり見たくないのじゃ」
「・・・・・・少し考えて見ようと思う」
「ほっほっほ、そうか考えてくれるか、ならワシからの話は、以上じゃな、長話が過ぎたのう、すまぬなルイ坊、本題に入っては、くれぬか?」
「ええ」
王は、話し出すのだった。
読んでいただきありがとうございます。
同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。




