3 エリナの一日
鳥がさえずる鳴き声。
窓から朝日が差し込んでいた。
「・・・・・・ん」
太陽の光が顔に当たり、エリナは、目を覚ます。
「・・・・・・ふあぁ」
口に手を当て小さく欠伸をした後に軽く伸びをする。
そして、洗面所に行き顔を洗ったりする。
「おはよう、エリナ」
「おはよう」
女将が挨拶をしたのでエリナも挨拶を返す。
「今日も朝早くから行くのかい?」
「依頼は、早い者勝ちだから」
「朝ご飯でも食っていきなよ」
「問題ない、近くで買うから」
「買うって、アンタ黒パンとか干し肉とか水だけでしょ? 稼いでるんだからもっと美味しい物食べなよ」
「美味しく食べられるならそうかもしれない、でも私にとっては、食事は、ただの栄養補給でしかないから」
「そうかもしれないけど、あたしは、アンタが心配なんだよ毎日依頼を受けに行って食事も同じ物ばかりで、アンタがいつか倒れちまうんじゃないかって心配なんだよ」
「心配してくれてありがとう、でも私は、大丈夫だから」
エリナは、女将に笑って答える。
そして自分の部屋に戻るのだった。
「大丈夫って言われても、あたしは、心配だよ」
戻って行くエリナの背中を見ながら女将は、独り言のようにつぶやいた。
部屋に戻り着替えて武器である刀を手に持ち、宿を出て行く。
外の市場に行き、エリナは、店の前で止まる。
「黒パンと干し肉と水をそれぞれ二つずつ」
「あいよ」
食料を注文しお金を払いエリナは、冒険者ギルドへと向かう。
ギルドの入口を開け中に入る。
相変わらず冒険者達の視線を集めているがエリナは、気にせず依頼が張ってある掲示板の所に向かう。
「・・・・・・」
エリナは、掲示板に張ってある紙を一枚取る、どうやら今日は、一枚だけのようだ。
依頼の紙を受付嬢の元に持って行く。
「おはようございます、依頼ですね、確認します」
受付嬢は、エリナが持って来た依頼を確認する。
「ジャイアントバードの討伐ですね、確かに受理しました、では、気をつけていってらっしゃい」
依頼を受理してもらいエリナは、ギルドを後にする。
場所は、変わりここは、山岳地帯。
その場所を歩いていた。
ここでちょうど良い所に座れる程の大きさの岩があるのでエリナは、そこに座り朝に買った黒パンと干し肉を一つずつ取り出して食べるのだった。
「・・・・・・」
黒パンは、固く中々噛み切れなくてしかも味もそんなに美味しくない。
干し肉も黒パン程味がないわけでは、ないがこちらも固くて中々噛み切れなかった。
低ランクの冒険者は、大体この食料が当たり前なので、早く高ランクになって旨い飯にありつきたいと思っている者が多いだろう。
ただ、エリナは、高ランクのSランク冒険者では、あるが彼女にとっては、食事は、ただの栄養補給に過ぎないのでこれで十分と言う考えである。
黒パンと干し肉を食べ終え水を飲んでいるエリナ。
水を飲み終え食事を終えたエリナは、再び動こうとしたその時。
『クアアアアアアア!!』
空から巨大な鳥がエリナに向かって来た。
エリナは、即座に刀を抜き受け流す。
「ジャイアントバードか」
エリナが依頼で討伐するジャイアントバードが現れた。
『クアアアアアアア!!』
ジャイアントバードは、再びエリナに向かって突っ込み足の鋭い爪でエリナに攻撃をする。
エリナは、その攻撃を刀で受け流す。
しかしジャイアントバードは、再び方向転換し再びエリナに向かって攻撃を仕掛けて来る。
エリナは、再び刀で受け流すが、ジャイアントバードは、再び方向転換をして攻撃をしてくるのでこのままでは、防戦一方である。
「・・・・・・」
エリナは、刀を鞘に納める。
諦めて大人しく命を狩られる覚悟を決めたのかジャイアントバードは、エリナに足の鋭い爪で攻撃をする。
鋭い爪がエリナを切り裂いたと思ったジャイアントバードは、方向転換して確認するがエリナの姿は、どこにもなかった。
『クア?』
ジャイアントバードは、どこにいるのか周囲を確認するがエリナの姿は、どこにも見当たらない。
「ここだ」
『!?』
声のした方を向くとエリナは、足にしがみついていた。
先ほどの攻撃で足にしがみついたようだ。
『クアア!!』
ジャイアントバードは、足を思いっきり振り落そうとするがエリナは、しっかりしがみついていて落とせないでいる。
その間にエリナは、刀を抜きジャイアントバードの足を切り落とした。
『クアア!!』
足を切り落とされた痛みからかバランスが崩れてそのまま地面に落ちてしまう。
そしてエリナは、そのまま刀を振り落としジャイアントバードの首を切断した。
「・・・・・・」
ジャイアントバードの死を確認したエリナは、収納袋に入れギルドがある王都へと戻るのだった。
王都に戻ったエリナは、そのままギルドへと行き受付嬢の元に向かった。
「依頼を完了した」
「では、奥の部屋にどうぞ」
受付嬢に言われエリナは、奥の部屋に行き、ジャイアントバード丸ごとの死体を出した。
「確かにジャイアントバードですね、いつも通り素材は、全てこちらで引き取ってよろしいでしょうか?」
「ああ」
「ジャイアントバードの肉は、とても美味しいんですよ? せめて少しくらい肉を貰っても良いのですよ?」
「必要ないから」
「わかりました、では、受付に戻ってください用意しますから」
「わかった」
エリナは、受付へと戻った。
やがて少しして受付嬢が報酬の入った袋を持ってくる。
「ジャイアントバードの討伐成功おめでとう、こちらが依頼の報酬になります、お疲れ様でした」
エリナは、報酬を受け取り自分が宿泊している宿に戻るのだった。
「お帰り、エリナ」
「ただいま」
「ご飯は、どうするんだい?」
「買った、黒パンと干し肉があるから大丈夫」
「そうかい、でも何か他の物が食べたくなったら言いなよ、作ってやるからさ」
「ありがとう」
エリナは、女将に礼を言って部屋に戻って行く。
そんなエリナを見て女将は、どこか心配そうな顔をしていた。
部屋に戻りエリナは、残った黒パンと干し肉を食べ、水を飲み終えそのままベッドに横になる。
「・・・・・・今日も生き残った」
エリナは、そう独り言をつぶやき眠りにつくのだった。
これがエリナの大体の一日である。
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同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。