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1 とあるSランク冒険者

新作投稿です。

 ここは、冒険者ギルド。

 素材採取、魔物討伐、護衛依頼など様々な依頼を受けて、生活費を稼いでいる、冒険者達の集まる場所である。

 高ランクになれれば、報酬も多くなり楽な生活を送る事ができるなど、夢や野望を持った者達が多くいる。

 ランクは、FからSまでありSに近いほど高ランクの実力者である。

 

「さて今日は、何にしようかね」


「薬草採取にゴブリン討伐か、低ランクだとこんなのばかりだな」


「護衛依頼か、でもなんか報酬が割に合わねえな」


 冒険者達が依頼を見て自分達がクリアできるか、そして報酬は、どうなのかを考慮して選んでいる。

 彼、彼女達だって自分の命は、大事である。

 だから、慎重に選ぶ者、勢いで選ぶ者など様々である。

 と、そんな所でギルドの入口の扉が開き、入って来る人物が一人、その人物を見て冒険者達の視線が一斉に集中する。


「お、おい、あれ」


「Sランク冒険者のエリナだ」


 視線が集中するのは、当然だ高ランクのましてや最高ランクのSランク冒険者なら嫌でも目に付く有名人である。

 そんな冒険者達の視線など気にせずエリナは、依頼が張られている掲示板に行く。


「・・・・・・」


 エリナは、掲示板を見て二枚の依頼用紙を取り受付に渡す。


「キングボアとキングベアーの討伐ですね、両方共Sランクの討伐依頼ですね、確かに受理しました、では、お気をつけて行ってください」


 エリナは、そのまま入口を出て討伐へと向かった。


「相変わらず、愛想がねえな」


「ああ、美人で超良い体してるのに、あの不愛想な所がなければなあ」


「なんか、関わるなってオーラみたいなのが出てるよな」


「で、どう思う? 成功すると思うか?」


「キングボアとキングベアーだろ? どっちも高ランクの冒険者でも何人かのパーティーでなきゃ討伐が難しい魔物だぞ」


「そうだよな、いくらSランクでもたった一人で行くのは、無茶だろ」


「でも、あいつなら何ともなく帰って来そうなんだよな」


『確かに』


 エリナが出て行った入口を見ながら冒険者達は、そんな会話をしていた。





「・・・・・・」


 エリナは、依頼の場所である森の中に来ていた。

 しばらく森を歩いていると、急に森にいた動物や鳥達が何かから逃げるように出て来た。

 逃げている動物達その何かを見ると。


『ブオオオオオオ!!』


 巨大なイノシシのような魔物が姿を現した。

 そう、これがキングボア。

 エリナが討伐する魔物の一匹である。


『ブオオオオオオ!!』


 キングボアは、エリナ目掛けて突進する。


「・・・・・・」


 エリナは、その場から跳躍しキングボアの突進を難なく躱し、さらに手に持っている武器この国では、珍しい刀を抜き落下する勢いを加えてキングボアの片目を突き刺す。


『ブオオオオオオ!!』


 片目をやられたキングボアは、悲鳴を上げる。

 その隙を逃さずエリナは、さらにキングボアとの距離を詰めとどめを刺そうとするが。


『ガオオオオオオ!!』


 森の茂みから大きなクマのような魔物が現れた。


「・・・・・・キングベアー」


 クマの魔物は、キングベアー。

 エリナが討伐するもう一匹の魔物が現れた。

 キングボアとキングベアー、二匹の魔物が一度に現れたこの状況は、非常にマズい状況である。

 この二匹は、最低でも高ランクの冒険者が複数で討伐できる強さである。

 しかし、それは、一匹ずつ相手をすればである。

 今の状況は、二匹を同時に相手をする状況、もはや最低でも高ランクの冒険者パーティーが複数いなければ、無理である。

 ましてやたった一人でこの二匹を相手にするのは、もはや絶望と言ってもいい。

 普通なら隙を見てどうにか逃げる方法を考えるものである。


「・・・・・・」


 しかし、エリナは、キングボアとキングベアーの二匹から逃げもせず最悪の一手ともいえる、戦う事を選択したのだ。


『ブオオオオオオ!!』


『ガオオオオオオ!!』


 キングボアとキングベアーは、同時に動き出した。

 キングボアの突進を刀を使って受け止めるが背後からキングベアーが鋭い爪で切り裂いて来る。

 しかし、エリナは、当たる直前に避けた事によりキングベアーの爪は、そのままキングボアに当たってしまう。


『ブオオオオオオ!!』


 切り裂かれた痛みでキングボアは、標的をエリナからキングベアーへと切り替えキングベアーに突進する。

 キングベアーは、キングボアの突進を受け止めるがキングベアーもまたエリナからキングボアに標的を変え二匹を同士討ちさせる状況に持ち込んだ。

 

『ブオオオオオオ!!』


『ガオオオオオオ!!』


 二匹は、エリナの事など忘れたのかお互いに激しい戦いをしている。

 この状況なら十分逃げる時間は、できる。

 しかし、エリナは、そのまま二匹の元に行き刀を抜く。


『ガオオオオオオ!!』


 エリナの存在に気づいたキングベアーは、エリナに切り裂くがエリナは、難なく躱し、その刀でキングベアーの首を切断する。


『ブオオオオオオ!!』

 

 その光景に何が起きたのか理解できなかったキングボアは、少しして何が起きたかを理解するがその時には、もう遅くエリナの刀がキングボアの首を切断していた。

 キングボアとキングベアーの切られた部分から血飛沫が勢いよく吹き出てその辺りを血の雨が降り注いだ。


「・・・・・・」


 エリナの傍には、討伐したキングボアとキングベアーの死体が転がっており、上空から血の雨が降りエリナにも当たっている。

 そんな血の雨の中でエリナは、ぽつりと言う。


「また、生き残った」


読んでいただきありがとうございます。

同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。

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