表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見送った友へ  作者: 薙神田浅
4/10

「はぁ。スライムかぁ。」


少女ことヴァイスは重い足取りで歩く。


「身を案じてくれているのかしら。リテアは口は悪いけど実はいい子なのかも・・・」



必死に懇願して教えてもらった深紅の少年の名――リテア



「リテアは私のことが苦手なのかしら?でもいいわ!ゆっくりお友達になっていけば。初めてのお友達になれるかしら!」


どこからか突き刺さるような視線があったが、辺りを見回しても誰もいない。ヴァイスは気のせいか、とずんずん進んでいく。


「それにしてもリテアってば酷いわ。スライムを倒してこいだなんて!私には無理なのに!」


ヴァイスは、死にゆくスライムを思い浮かべては涙をこらえ、ぐっと拳を握りしめる。


「あんなにかわいいのに!」




―――――――――――――――――


リテアは焦土となっている森にて、『遠視(スカイビジョン)』でヴァイスの行動を見ていた。

音声は聞き取れないため、ヴァイスが何を言っているのか分からないが、さっきの『お友達になりたい!』とでも言いたげな表情を睨まずにはいられなかった。危うく『遠視(スカイビジョン)』がばれるところだった。

それにしても・・・とリテアはヴァイスを眺める。


「泣きそうになってるぞ・・?まさかスライムにさえ負けるのか・・・?」


数秒もたたないうちに、ヴァイスがスライムと出会うのが見えた。スライムは1匹だ。倒す方法は、魔法を使える者にとっては簡単だ。適当にファイヤーボールでも打ち込んでおけばいい。1発で倒れる。だが、剣や斧などを使う者にとっては厄介極まりない魔物だ。理由は物理攻撃が効かないから。とは言っても、スライムは攻撃力は魔物中最弱、かつ移動も魔物の中で一番遅いので、物理攻撃が得意な者たちは避けていく。ヴァイスが魔法を使えることはサーチ済みだ。



「・・・・」


周囲に複数の気配がある。


「魔物に囲まれているな。」


ヴァイスが詠唱を唱え始めたのを見届けて、戦闘態勢に入る。


「遠出した甲斐があった。」


にやりと笑みを浮かべて言う


「今日は・・・ごちそうだ。」






5秒。刹那のことだった。100程いた魔物は一匹も残っていない。

リテアは人間の常識を超えた動きで魔物たちを刈り取っていった。

魔物たちの意識は死んだことすら知覚できていないだろう。


チャラチャラ とリテアの手の中で結晶が踊る。この結晶は魔石。魔力を持つ者の心臓が結晶化したものであるが、魔法を使えぬ者でも、魔法が使えるようになる代物だ。専用の武器にはめ込んで使ったりする。他にも使い方はあるが、長くなるのでここでは省略しておこう。魔物の多いこの世界では、魔力を持つ者が少ない人間の間で高額取引されている。


「さてと・・・ヴァイスはどうなったかな。」


遠視(スカイビジョン)』で見ると、ちょうど詠唱が終わって魔法が放たれている。


「氷魔法か。どのみち倒せそうだな。」


魔法がスライムに当たる。

迎えに行こうとリテアが腰を上げたその時、異変は起こった。


「何故・・・スライムは生きている・・・?」


ヴァイスも慌てている。酷く怯えて何かを叫んでいる。


「まずいな」


頭の中で警鐘が鳴る。

魔法に耐えた・・・魔法に耐えられるスライムなど見たことがない。しかもヴァイスの放った魔法は初級魔法ではない。中級魔法だ。初級魔法ですら耐えきれないスライムが、中級魔法に耐えた!?あれはスライムではない?

・・・とすれば何かがスライムに擬態している?


「擬態する・・・か。」


最悪だ。擬態ができるのは・・・上位の魔物、魔人だけだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ