わたし、神です
「こんにちは、今日から貴方付きになった神です」
こんな言葉を街で突然かけられたらどう思う?
1.神様が現れた
2.ナンパされた?俺モテんじゃん!
3.新手の新興宗教
4.痛い人
俺はノータイムで3と結論付け、足早に去ることを選択する。
「ちょっと待ってお兄さん!私怪しいものじゃないです。話聞いて!」
ここで止まったら向こうの思うツボだ。下手するとン十万とかする壺とか売られかねん。あ、俺今上手いこと言った。
「ああもう、止まってくれないならこっちで止めますよ!いいですね!」
無視無視、糞あっつい中カモ探すのお疲れ様です。
そう心で呟きながら歩いていると、急に体が動かなくなる。というか、周囲の人々の動きも喧騒も止まっていた。
まるで世界そのものが停止したかの様だ。
「力使うのだって結構疲れるんですからね?現代人ときたら碌に信仰もしないし、初詣くらいしか神社に来たりお賽銭しないんですから……全く嘆かわしい」
凍った時の中、唯一そいつの声だけが響く。
「とりあえずこれで話は聞いてもらえますね。私が神かどうか信じて頂けましたか、境裕二さん?」
神かどうかは知らないが、いろんな意味でヤバイ奴に絡まれたのは間違いなさそうだ。名乗ってすらいない俺の名前を知っているという事は、事前に身辺調査が行われている証拠だ。そんな考えをしているとふとある疑問が浮かぶ。
『何故時間は止まっているのに思考は出来るのだろう?』
「それはそういうご都合主義になるよう、力を調整しているからですよ。そもそも時間を止めたところでそちらが認識出来なかったら話を聞いて貰えないじゃないですか」
それもそうかと納得する一方、じゃあ結局何が目的だよと思う。
「だから貴方付きになったんですって」
(自称神が俺に憑いた?人に取り憑く神様っていえば貧乏神しかいないじゃん!残念、裕二の人生はここで終わってしまったチーン……)
「人を勝手に貧乏神呼ばわりして幕を閉じないでください!寧ろ祝福を授けに来たんですよ私はプンプン」
プンプンなんて言葉に出す奴初めて見たわ。ぶりっ子なのは間違いないだろう。
「いい加減人の話聞いてくれます?そろそろ私も限界なんですけど」
こめかみに青筋立てつつ笑顔浮かべるの怖いんすけど。
(まあ聞く気は一切ないけど聞かなきゃこのまま時間止まったままだから、渋々ではあるが聞くだけ聞いてやる。ただし話し終わったら解放しろよ。俺この後営業回らないといけないから忙しいんだ)
「勿論ですとも。私も貴方に働いて貰わないと困りますしWIN-WINって訳です。こほん、でわ改めて」
「貴方の担当となった神、都留神楽比瑪です。これから宜しくお願いしますね、境裕二さん」
そう言って神楽はにっこりとほほ笑んだ。