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第一話 おかしな研究部

 新高校生の霊明禍々士は自分を変えようと考えていた。


 だが高校デビューの勇気はなくボーっと歩いていると目につくものがあった。


 『オカルト研究部』と・・・。


 そのオカルト研究部の門を叩き自分を変えようと考えていたが、まさか世界の常識までも変わってしまう異世界に繋がっていたとは知る由もない。


 現実の知識が通用しない世界で唯一与えられたものは『チョコ―レート』を操る能力だった。


 同じように異世界に入ったオカルト研究部の部員たちは着々といい能力をもらっている中、謎の能力を与えられてしまった禍々士は、そのチョコと同じように苦い経験をたくさんすることとなる。


 完全にイメージと違う高校デビューを果たした禍々士とオカルト研究部は異世界を研究(冒険)を無事に為せるのか。


 その裏にある黒幕と共に・・・

 キーンコーンカーン・・・


 眠たい目を擦りながら、耳にやたらと響くチャイムで目を覚ます。


「もう終わりか。」


 僕はいつの間にか終わっている授業は気にせずにトイレへ向かう。行く途中何故かみんなこっちを見てくる。

 何か面白いことでもあるのだろうか。気になるじゃないか。


「これかぁ。」


 トイレの鏡で自分の姿を見てみると、授業中顔を伏せていたせいだろうか、髪が逆立っていた。これは何かの前触れに違いない。オカルトだな。


 なんて厨二的発想を考えながら僕は髪の毛をゆっくりと撫でながら教室に戻った。


 何の変哲もないどこにでもある教室だが、このクラスには一際輝いている席がある。

 もちろん、言葉通り輝いているわけではなくオーラ的な意味だ。


 その席の持ち主の名前は神雨虚子。虚子なんて変な名前だが僕の名前も同じぐらい変な名前かもしれない。まぁあまりいい意味で付けるような名前ではない僕の名前ではあるが、それほど気にはしていなかった。


「霊明君、これ。」


 髪の毛も元に戻ってきた頃クラスではプリント配布祭りが開催されていた。前の奴からのプリントを適当に受け取り適当に鞄に入れる。何か重要なことが書いてあるわけでもないはずだから、速攻で鞄に突っ込んだ。


 悪く思わないでくれ、これが僕の性分なんだ。と誰も聞いていないことをクシャクシャになったプリントに向かって考えてながら鞄に突っ込んだ。


「あとこれもね。」


 ・・・さらに配られてきてしまった。今日はやたらと配布物が多い。


 それもそのはず、この学校にまだ入学したばかりだ。色々と配るものがあるんだろう。流石に僕もすべて突っ込むわけにもいかないからクリアファイルに綺麗に挟み込んだ。

 最初の紙はお気の毒ですが・・・だ。


 正直自分は無愛想だ。それをクールと呼ぶ人間もいるのだろうが、友達になりたいかと言われればならないだろう。

 こんな僕だが高校デビューでもしてやろうかと考えたこともあったが、流石に羞恥が上回った。


 高校デビューはしないがそれでも自分を変えてみようと思っていた。


 ・・・それがはっきり言って間違いだったのだ。やはり自分の慣れないものはするべきではないな。


 高校生活序盤の謎のウキウキ感により部活動に入るための気持ちで今日を過ごしてきた。

 そんな時ちょうど部活動の募集の紙が張り出されている掲示板を見つけた。色々な部活動が紹介された紙があるが一際目に入るものがあった。


『オカルト研究部』


 今思えば、これに惹かれた時点でオカルトなんじゃないかと思う。


 そんな甘い考えのまま僕はオカルト研究部の活動拠点の前へと来てしまった。


 よく分からない部活動だが見た目は普通の教室だ。色々と凝っているのかと思ったが案外普通なのかもしれない。まだ壁しか見ていないが。


 はっきり言ってこの時点で僕は面倒くさくなっていた。

 飽き性ここに極まるという感じだが今回の僕は一味違う。自分を変えられるという一縷の望みを抱いてドアを開けた。


「お、新入部員だね。わかるよ、オカルト的に。」


「・・・・・・・・・・はい?」


 この第一声を聞いた僕のこの人の第一印象は、この先ずっと抱き続けるであろう。・・・変人と。


 これはやばい所に来てしまったんじゃないか。面食らっている場合ではない、今すぐ帰ろうそうしよう。


「さぁ中に入って、オカルト的に。」


 オカルト研究部だからオカルト的なのか、なんて安直な語尾だ。とか考えている隙に引っ張られながら強引に教室に入れられてしまった。


 教室の中はよく見るオカルト感満載というわけでもなく、普通の小さな教室だ。


「いやあよかったよ、君が入ってくれて。さっそく自己紹介でもしようかな。」


 !?もうすでに入ることになってしまっている!


「い・・・・いやあの僕まだ。」

「私の名前は星場七魅。一応部長、よろしくね。それで君の名前は?オカルト的に。」


 この人は話を聞かないタイプなのか?いやそれよりもこのオカルト的に、と言う言葉にツボに入りそうになる。

 いやそもそも僕は見学しに来ただけなのだが。


「その、まだ入るとかそういうわけじゃないんですけど。」

「あ、敬語とか気にしなくていいから、オカルト的に。」

 くっ、オカルト的にと言われると何だか口を出しづらくなってくる。これがオカルトってわけか。


 ・・・はぁ、もう観念するしかないか。こういう人は何を言っても無駄な気がする。


「・・・・・霊明禍々士です。もうなんか色々やけくそになっていますけどオカルト研究部に入りますよ。」


「あぁ~そのことぉ・・・なんだけどね。まぁそこらへんは後で話そう。早速だけど名前がオカルティックな霊明君。二人で初めての活動を行おう。」


 なんか失礼なことを言われている様な気がする。ん?二人?

「あの、そういやここ、部長しかいないように見えるけど他の人は?」

 もしかして部員自体がオカルト的な物だったりして。そのままの意味で幽霊部員的な。


「やっぱり気になっちゃうよね。うん、ここはまだ私一人。本当は部活動ですらない。」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「だから初めての仕事、それは。


 部員集め!!」


 ・・・・・本当に無かったことにして帰ってやろうか。まだ間に合うだろ。と思ったがもうこうなったらやけだ。

 やってやるさ、どうにでもなるだろ。



「どうにもならんことってあるもんだな。」


 思わず口に出てしまうほどの苦痛。オカルト研究部に入りませんか、と聞いて回ったが、もちろん答えはNOだ。それに変な目で見られた。そりゃそうか。

 確かに僕は自分を変えたいといった。だが、こうなりたいと思ったわけじゃない。完全に悪い方向だ・・・。


「はぁとりあえず部室に行こう。」

 あ、まだ部じゃないんだったか。本当にどうなることやら。


「じゃじゃ~ん。一人入部してくれるそうだよ、オカルト的に!」

「なっ!?」


 こんなよく分からない部活に入る奴がいるとは驚きだが、それ以上に連れてきた奴に数倍驚いた。


「ここ、何をするとこかしら。」

「オカルトを研究するんだよ。オカルト的に!」


 もう部長が意味の分からないことを言っているが、それよりも目の前の奴だ。


「神雨さん?」


 そう神雨虚子だ。


「あら霊明君。教室以来ね。」


 正直名前を呼ばれるだけで歓喜の舞を踊る奴もいるだろう。それぐらい美人な人間だが、僕は少々苦手だった。


「いやぁ美人が二人もいるこの部活・・・じゃないけど、これはなんというかオカルト的ね!」


 突っ込みどころ満載なことを部長が言っているが無視して神雨虚子の方を見る。こんなよく分からない物に入る虚子ではないはずだ。もしかしたら本物ではないかもしれない。


「部員、まだ三人なんでしょ?あと一人必要ね。まぁ頑張ってね。」

 おいおい、お前も集めるんだろうが。



 ・・・なんて言えるわけもなく素直に了承した。そしてこの強引さ、本物だ。

 今日は厄日なのかもしれない。厄日記念日、そういうのもあってもいいと思う。


 教室から神雨虚子が出ていく。僕も早く帰りたい。


「なんか、私の時と反応全然違うよね霊明君。」

「いやぁそんことないよ。わっはっは。」


 なんだかテンションがおかしい、オカルト的に。


「う~ん、まあいいか。今日はもう遅いし生徒もそんなに残ってなさそうだから帰ろっか。」

「いえす!」


 僕のテンションに若干引き気味の仮部長だったがオカルト的に許してくれるだろう。そして僕もいつの間にかオカルト的の呪いにかかってしまった。解呪解呪。


 今日は実に散々な日だった。プリントはクシャクシャになるし。明日はいい日になるだろう。

 これほど楽観的になることは今までに無かったかもしれない。

 こんな時は空を見ながらコーラでも飲むに限るな。


 ・・・・・・・・・無かった。


 仕方がないのでボーっと星空を見ていた。

 色々な星が見えるが特に何か考えているわけでもないし、星も全く詳しくない。


 そのまま時間は過ぎていき自然と瞼が落ちてくる。おっと、そういえばゲームをスリープモードにしていたんだった。とりあえずセーブだけして眠ろうか。


・・・・・・意外とセーブまでが長い。そして少し面白くてまた始めてしまった。

 謎の大剣のような鉾のような武器が、これほどまでに面白い動きをするのかというくらいに敵を謎の動きで粉砕していく。


 これは朝まで徹夜しそうな勢いだ。


 そんなことはなくステージを超えた場所で詰み、結局セーブして電源を消した。

 そしてそのまま眠りについた。


 朝、昨日あったことを思い出しながら登校する。


 すぐに忘れようとして楽しい気持ちで登校しようと、思わずスキップしそうになったが流石に恥ずかしいので止めた。


「ふぅ。」

 教室に行く途中、掲示板から紙を剥がしている人がいた。


「おはようございます先生。」

「おはよう霊明君。」


 剥がした紙をよく見ると部活募集の紙のようだった。


「あ、それオカルト研究部ですよね。もう剥がすんですか?」

「えぇ、もう必要ないから。」


 もう必要ないとはまさか廃部!?


「あ、違うのよ。もう星場さん的には募集は締め切ったから大丈夫って。一応私顧問だから。」


 顧問・・・、ご愁傷さまです。もしかして先生がこの紙を貼ってくれてたのかな。もしそうなら感謝です。


「そうなんですか、良かったぁ。」


 もし廃部になってしまったらせっかく作った縁が消えてしまうじゃないか。もうこの際乗り掛かった舟だ、なんとか生き残ってみせるさ。


「ふふっ、霊明君も入ってくれたのよね。ありがとう、これからもよろしくね。」

「はい!」


 そういって先生は紙をくしゃくしゃにして職員室へと入っていった。


「それにしても部長、募集を締め切ったって部員集まったのかね。」


 まぁ今気にしても仕方のないことだし放課後部室に向かおう。


 授業中チラチラと神雨虚子の方を見てしまう。

 やっぱりあんな変な場所にいるような人間じゃなかったはずだが見間違えるはずもない。もう一度虚子の方を見た時、視線に気づいた虚子がこっちを見た瞬間視線を逸らした。

 端から見れば完全に変態だと思うけど許してほしい。


 キーンコーンカーン


 !?気づいたらもう放課後だった。時間が流れるのは相変わらず早い。

 僕は大急ぎで部室へ急いだ。


「やぁやぁ霊明君。よく来たね。」

「あ、部長もう来てたんすね。」


 部室に入ると仁王立ちしていた部長がいた。僕自身オカルトというあやふやな物にやる気を無くしかけているが、この人は本気でオカルトを研究する気なのだろうか。


「あ、ところで部長、先生から聞いたんだけど募集もうしないって何で?」

「ふっふっふ、それはオカルト的だからだよ。」


 は?


「まだ神雨さんは来てないみたいだね。じゃあ先に君に見せてあげようかな。」


 部長が教室の隅にあるホワイトボードを移動させる。小さい部屋に不釣り合いな大きなホワイトボードだ。移動させるだけで邪魔だと思わせられるのは一種の機能なのか。


「私たちの部活動、オカルトの研究はこれだ!」


 教室の壁とホワイトボードの間の場所に何かある。


「さぁさぁ霊明君もっと近づいてみてよ。」


 部長に言われるがままそのよく分からないものに近づいていく。

 空中で黒い空間が渦を巻くように動いている。


 それが何かをじっくりと眺めていると引き込まれそうだ。そしてなんともオカルティックな・・・・・


「そい。」


 背中から何かしらの衝撃が襲い掛かってくる。

 そのまま僕はその黒い空間に突っ込んでしまう。


「うおおおおおおおおあああああああああああ。」


 そのままどんどん引きずられていく。


「覚えてろよお、部長おおおおおおおおおおお。」


 そのままブラックアウトしていった。


「私も行くんだけどねえええええええええ。」


 瞼が閉じる前に部長の声が耳に入ってきた。



「・・・明君、・・・・・霊明君!」

「う・・ん・・・。はっ!」


 悪魔のささやきのように感じた声を耳にして僕は目を覚ました。


 あまり嗅いだことの無い匂いと、こんなところにどんな筋肉があるんだよと思うような場所に筋肉痛がある。


「やぁやぁおはよう霊明君。ぼやけた目を擦って窓を見てごらん?軽く感動してしまうかもしれないよ。」


 少し体の自由が利かないが、無理やり動かして周りを見渡す。


「お、おおおぅ。」


 歩く度に木の軋む音を響かせて窓まで歩く。窓から外の景色を覗くと見慣れない光景が広がっていた。


「なんということだ、これはゲームの中か?うわっ!」


 自分の服がいつの間にか変わっている。ファンタジーな服装だ。


「部長、これは一体。」


 部長は僕が部室に入ってきた時と同じように仁王立ちした。そして声高く宣言する。


「これこそが私たちの研究するもの、『オカルト世界』だよ!」


 ・・・・・なんて安直なネーミングなのだろうか、と僕は部長のドヤ顔を見ながら考えていた。


お読みいただきありがとうございます。

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