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初・対人戦

 然程時間は掛からずに院に戻ってきた。教会の方では当番の者が訪れる人を対応しているらしいのだが、二日に一人くらいとそんなに人はこないらしい。


「そんなに広くないから買い物は楽だね」


「王都は広くて大変そうですね」


 貰ってきた荷物を整理しながらたわいなく話す。


「そういえば、冒険者の人も知り合いなんだね。やっぱり怪我とかグロい?」


「あの人は前に癒してあげた方なんですけど……。また村にきたんですね……」


 どうやら一度は出ていった冒険者らしいが、シアはやっぱり暗い。


「……ねぇ、言いたくないならいいんだけど、何かあるんでしょ?」


 そう聞いてみると、シアは泣きそうな、悔しそうな顔で口を開いた。開いただけ。

 結局彼女は何も言わずに出ていってしまった。

 夕食の時間になっても、彼女は来なかった。最後まで待ってみたけど、来なかった。


「ヒリナさん、今日はもう消灯させていただきたいのですが」


「ごめんなさい。すぐ戻ります」


「あまり気にしないでください。シアも苦しいと思ってますよ。

 みんな……苦しいんです」


 それだけ言ってサッと出ていってしまう。

 苦しんでいる。それが何なのか、シアもさっきの彼女も語らない。一日目の私には想像もつかないことなのか、今はまだ知る由も無い。

 と、私が思った晩でした。



 ✳︎✳︎✳︎



 消灯時間の早さは嬉しかったのに、シアの様子が気になって眠れない。それに加えてまた、あのギシギシ音が聞こえてくる。内装は綺麗に見えても、建物が古いせいだと思って目を瞑る。目を閉じると聴覚が鋭くなるのはよくある話だ。ギシギシ音がよりはっきりと聞こえる。が、その中に艶めかしい声が混じっているのに気がつく。

 一瞬ドキッとしたが、間違えない。断続的に聞こえてくるのはおそらくシアの声。

 ナニしてるの⁈と、でも年頃なのかな、で頭がいっぱいになった。

 しかし、そうではないことはすぐ証明されることになる。

 シアだけではない。男の声も混ざってる。

 思考が停止して、ハテナが浮かぶ。

 それと私の部屋のドアが、最小限の音で開けられたのはほぼ同時。


「起きてますか〜、なんてねー」


 小声でそんなことを言いながら近づいてくる足音。頭はパニックだった。


(えっ?えっと、なんで?私の部屋に誰か来た?)


 そんなことを考えているうちに、布団の上に体重がかかる。


「寝顔を拝見しま〜す!」


 気持ち悪いナレーションとともに頭まですっぽり入って丸まっている布団に手がかかった。

 嫌悪感と相手の体重で押し潰されそうになった時、反射的に魔法を発動してしまった。

 光魔法の障壁。ゼロ距離では発動させたことで相手は吹っ飛んでいった。


「ってー!」


「なんですか⁉︎誰ですか⁉︎どういうつもりですかっ⁉︎」


 布団から飛び出て相手を確認する。障壁のお陰で光量は十分だったのですぐにわかった。

 昼間、シアに話しかけていた冒険者だ。


「寝たふりで不意打ちとは、ヒデェじゃねえか、ねーちゃん」


「貴方こそ、寝込みを襲うなんてどういうつもりですか?」


 確かにパニックになったけど、年の功が出た。急に仕事を回されたり、内容を変更させられたりとしたことも無駄にはなってないようで何よりだ。

 そんな悲しい体験も今は置いておいて、目の前の男。見た感じでは何も持っていないようだけど、仮にも冒険者だと思われる。実戦をしたこともない私にどれ程の事が出来るのかわからないけど、簡単には諦めたくない。


「これってアレですよね、強姦ですよね?いいんですか、人として」


「残念ながら、ここに連れて来られるヤツはみんな捨てられてるようなもんなんだよ。王都から来たって言うアンタももちろんそうだ。

 そうゆうヤツらでも金を生むことができてるんだ!多少のいざこざは許してもらいたいねぇ〜」


 自分の主張をし終えると少しずつ距離を詰めてこられ、緊張、不安が募る。

 どこまでできる?どうすればいい?

 女が素手で男に勝てるだろうか?殆ど無理だ。なら物に頼ろう。何か使えるもの。服掛け。男が邪魔だ。光ってる?何が?障壁が。


 魔法だ。

 この世界には魔法がある。とりあえず何か打ち込めばなんとかなるかもしれない!

 魔法の使い方は魔術士としても仕事をしているシュティーナに教わった。

 基本だよ。と言われた矢の魔法を使う。

 私の使える属性は光らしいので、『光の矢』を放った。狙いは向こうから近づいてくれたので気にしない。

 障壁の魔法から切り替えて、手の平の魔法陣から出た光の矢は、思い切り腹部に当たりそのまま入り口を突き破っていった。


「……神官のクラスじゃ、ないのかよ……!」


 そんなことを言って意識を失ったのか、伸びている。


「ハァー……!

 とりあえずOK、上出来よ、私」


 自分を褒めて、ハッとする。

 シアはどうなってる?

 吹き飛んだ入り口から廊下に出てみると今の衝撃音で部屋から何人か出てきている。魔法を構えるとその光から全員男と確認できた。

 すかさず矢を放つ。廊下は直線で、慌てている奴らにまとめてぶつかっていった。

 威力の加減はしていないので、壁まで飛んでいき、そのまま大きな穴を空けてしまった。


「これは……だいぶ疲れるなぁ……!」


 魔法の使い方が下手過ぎて息が上がる。

 苦しくても、今は気にしない。シアの部屋のドアを開けると、月明かりが差し込むベットの上で未だに男と、その大きな体軀の下の小さな体が揺れていた。

 魔法を構えて部屋に入る。


「ねぇおっさん、そこどいてよ。気持ち悪い」


 男は行為を止めようとせず、夢中でヤッている。その下のシアの瞳は虚ろだった。

 眼前で行われているソレは、愛があるものではない。

 この現状と今までされていたのだと考えると、私の頭は嫌悪と怒りでいっぱいになった。


「どいてよ」


「ハァハァ……!」


「どけって言ってんの!」


「ダブァッ!」


 加減しないどころか、全力で魔法を放った。

 一瞬にして数部屋分、壁を数回突き抜けて消えていった。

 穴の空いた数部屋。そこからの風を感じて一息つく。

 そして、さっきまで辱めを受けていた彼女を抱き上げる。


「シアちゃん⁉︎」


「ヒ……リナ……さんっ!」


 虚ろだった目に少しだけ生気が戻った気がした。


「ごめんね……気づいてあげられなくて……!」


「来たばかりなんてすから……仕方ないですよ」


 こんな状況でも、彼女はしっかりしている。

 もう、なんか逆に怖いよこの子。

 とりあえず何か掛ける物の持ってきてあげる。



 そのあと横の部屋の人たちの様子も見に行くと、どの部屋でも同じようなことがされていたようだった。

 一部屋にみんなを集めて、落ち着かせる。


「流石、王国の修道女ですね。攻撃系の魔法も使えるなんて……」


 シアが他の修道女たちを手当てしながら言った。私も手伝いながら少し休んだ。


「シアちゃんとか、みんなは使えないの?」


「ワタシたち女子陣は、全員支援系と治癒系しか使えません。エゴロくん達は魔術士志望で攻撃系も多少は使えるますけど……」


 やはり相手は冒険者と言うことなのだろう。エゴロが来た時に、初めは魔法を使って抵抗していたらしいがうまくいかなかったそうだ。そう考えると今回私は運が良かったといえる。


「そういえばそのエゴロくんは?」


 助けれたのは、女性のみ。

 と言っても女性も一名いない。

 全員の顔を覚えていないのが裏目に出たようだ。でもまだ昨日今日会った人たちだからしょうがない。

 なんて言っている場合ではない。

 シアは不安そうな顔で俯いてしまった。


「どこにいるかわかる?」


「行って……くれるんですか?」


「やれるだけはやってみるけど……」


 シアたちは顔を上げて私を見ている。

 そんなに期待された視線を向けられても、正直自信はないのだけれど。

 そんなことは今は言えない。若干疲れも引いたので、改めて場所を聞いた。


「食堂にある地下の隠し部屋で、相当な体罰を受けてると思います。毎回過激なので、いつも一人治癒役が連れて行かれるのです」


 死なれては困るが手加減はしないで八つ当たりがしたい。

 現代日本でもたちまち傷が治るなんてことはないから、こっちの魔法とは厄介な力とも言えた。


「シアちゃんたちは逃げてもらいけど、当てはある?」


「そうですね……。村の人も冒険者や、ヒリナさんには悪いですけど、デイナー王国も恨んでいるので、協力してくれると思います」


 もしかして、王国から来た私ってあんなことやこんなことされてしまえって思われてたの⁉︎

 とは思いたくないけど、仕方ないことかもしれない。私は関係ありませんとは、集団に属してしいるうちは適用されないのだ。


「もしかしたらさっきの爆発音で、村の人が起きてるかも知らないから、行ってみて。私は地下に行くから」


 それだけ言って、自身に強化系魔法を使う。

 これもシュティーナに教わった戦闘の基本だ。シュティーナ様々である。


「それじゃ、気をつけて外に出てね」


「ヒリナさん。


 ありがとうございます」


 お礼を言われるのは早い気がした。

 まだこれで解放された訳ではない。

 でも、とりあえずは良かったのかもしれない。

 目下の目標は、地下の残りの修道士たち。

 深呼吸をして、震える身体を落ち着ける。そして地下に向けて脚を進めていった。

表現力が足りないですよね。

勉強します。はい。頑張って。

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