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出発

 ガタガタガタと、凸凹道を走る馬車。その中で私はどうにかして寝ようと考えていた。誰の目にも触れられないこの場所なら邪魔されることがないから。しかし、実際はそれどころじゃない。試しに横になってみたが、時折大きく弾み頭が叩きつけられるし、座ったままではお尻が痛かった。


「すいませーん、もう少し揺れを少なくできませんか?」


 トスク村には朝出発しても着くのは夜になる。半日もこんなガタガタ馬車で過ごすのは無理だった。


「すまないねシスターさん、最近出た馬車は揺れが少ないらしいんだけども、俺はそんな立派なもん買えるほど稼ぎがよくないもんでねェ」


 馭者のおじさんは申し訳なさそうな顔で振り返ったて言った。まだ出発して1時間しか経ってないので、諦めるには早かった。せっかくの半日睡眠ライフはどうにかして手に入れなければ。

 そもそも国王も国王だ。優秀な人材を辺境の村に送らせるのだから馬車くらいもっと立派な物を用意してほしい。


「シスターさんは魔法使えるんだろ?なんかやってみればいいじゃねか?」


「魔法ですかー……。ちなみにどんなことしてるのが多いですか?」


「そうだなー、自分に硬化魔法かけてるやつとか、少し体を浮かせてるやつとかいたよ。変わったやつだとなんか雲みたいなのを作って座ってるやつがいたなー」


「無駄に凄いことしてる人いますね」


 残念ながら私ができそうなのは硬化くらいだ。しかも硬化魔法は耐久性が高くなるだけで実際に硬くなる訳ではない。というか硬くなったとこで揺れを解消できるわけではないのだ。

 仕方なく、体の痛みは起きた時に精算するとして自身に睡眠魔法をかけることにした。一応、持ってきたタオルケットで体を覆いカバンを頭の下に引いたりしてみたが、効果は薄かった。


「おじさん、着いたら起こしてください」


「お?目処立ったか?」


「諦めました」


 そう言って魔法を使う。


(国王とコフラーには、いつか絶対意地悪してやる!)


 などと思い、眠りについた。



 ーーー



 揺れが止まった。魔法で寝ていたが、感覚的に馬車が止まったと判断し目を覚ました。案の定やっぱり体に痛みがあった。様子を伺う為にノビをしながら外に出ると薄暗くなり始めていた。


「あれ、どうしたんですか?」


「起きたのか?いや、馬も疲れてきたし、ちょいと休憩を……。遠出は始めてかい?」


「えー、まぁ、こっちに来てからは初めてですかね」


「あれ、違う国出身か?通りでなぁ」


「どうゆうことですか?」


「馬車乗った時から不満そうな顔してもんで」


 たしかに、産まれてから馬車に乗ったことは、前世も含めて一度もなかった。そもそも出身が違うどころか世界が違う。こっちには新幹線もなければタクシーもない。初めて乗った長距離移動手段が馬車で、乗り心地は最悪だ。それが顔に出ていたのだろうが、しょうがないと思う。


「まぁそれに普段は荷物乗っけてるから、人が乗る用の加工はしてないからな。さて、そろそろ出るで」


 そう言って馬を立たせ、休憩を終わらせた。

 おじさん、最後のいらなかったよーーー



 ✳︎✳︎✳︎



 再び始まった馬車の旅。もう少しで着くと言われたので、今度は寝ずに昨日のことを思い出していた。


 マザーに呼ばれたのは言うまでもない。みんなも自分の予想と一緒だったのだろうあまりざわつくこともなかった。


「出発は明日の朝です。一番最初の馬車を手配してありますから、正直心配ですよヒリナさん」


 マザーはこめかみを抑えながら言った。だったら遅めの馬車にしてくれたらいいのに。


「では、一年間よろしく頼みますよ」


「一年ですかっ⁉︎」


「それと、パレア神の啓示によると、近々魔物の動きが活発になるそうなのでトスク村に行くヒリナさんは特に注意していただきたい」


「いやいや、一年で―――」


「では話は終わりです。皆さん今日もよろしくお願いしますよ」


 パンパンと手を叩きマザーが強制的に話を終わらせ、私の質問は無かったことになった。


「なんなのよ一年って!」


「まぁ、頑張ってほしいわね」


 淡々とした返事が返ってきた。今はシュティーナと街に買い出しにきている。買うものは多くないので一人でも十分なのだが、私は明日からの出張の準備のためについてきたのだ。


「しかもよりにもよってあんな危険なところに飛ばされるとは……」


「正直私も可哀想だと思うわ。無事に帰ってきてくれることを祈って待ってる」


 どこまでが本心なのかよくわかりずらい。でも待ってるなんて言われると、なんだかときめいてしまう。


「貴女は買うもの買っては早く荷造りしなさい?夜までかかると起きれなくなるわよ」


「あっ、ちょっとときめいたのに、いつものシュティーナだ」


「さんをつけなさい」


「あぐっ!」


 脳天にチョップが飛んできた。本当に聖職者なのだろうか。


 朝、


「よろしくお願いします」


 そう言って私は馬車に乗らされた。荷物はまとめてあったが結局起きるのはギリギリだった。それを見兼ねたシュティーナがここまで連れてきてくれたのだ。


「ありがとう、シュティーナ……さん」


「……間が気になったのだけれど?

まぁいいわ。昨日の夜調べたのだけど、夢の話が本当なら貴女は転生してきたと言うことよね?」


「転生したのは本当なんですけどね。記憶があるし。それがどうかしたんです?」


「いるかもしれないのよ、貴女以外の転生者」


「えっ?」


「一年かけて調べておくわ」


 それじゃあ、頑張って。と言って、シュティーナは戻っていった。気になることを言い残して行ってしまったので、なんだかモヤモヤする。こうして馬車は出発したのだった。

買い出しシーン、小話をひとつ入れたかったんですけど個人的に長くなるイメージでしたのでいつかまた。

ありがとうございます。頑張ってみます。

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