奇跡
人の人生ってそれ自体が物語だと思うんです。
その人の人生の中ではその人が主人公。
ってことは日常の些細な事だって
書き起こせば立派な小説になると!
そうおもいませんか!?
「うおっ!寒っ!」
いきなりの突風に思わず声が漏れる。
年が明けて新学期が始まっても
いきなり暖かくなるわけも無く
制服の上から羽織ったコートの前を全部閉め
ポケットに手を突っ込んでもまだ
北風が身にしみる。
「やぁ〜まとぉ!おはよぉ☆」
と後ろから一瞬で右腕を奪い取られる。
「危ねっ!お前さぁ、朝なんだからもうちょい爽やかに登場しろよな。」
と言うと
「大和だって朝からお爺ちゃんみたいな後姿だったよ?」
と軽く攻撃される
自己紹介がまだだった
僕は『月峰 大和』高校2年の平凡な男の子だ
そしてこの元気のいいのが『小島 唯』俺の彼女
ちなみに唯は高校1年で年齢的には俺のが上なんだが…
「大和ちゃんと今日はご飯食べてきた?」
とまるで母親のような物言いだ
「食ったよ、つうかその短いスカートよく寒くないな。」
ルーズソックスのみの無防備な唯の足を見ながら言うと
「だって大和がスカートの下にジャージは最悪って」
ピンクのマフラーの上の顔がぷぅっと膨らむ
「じゃぁスカート長くすりゃぁいいじゃねぇか。」
「これはあたしのポリシーですから。」
「あっそ。」
どおもこいつは俺より上からモノを言おうとする癖がある
まぁ大抵の場合僕に言いくるめられ、もしくは反論されて
すぐに立場は逆転するのだが。
「ねぇ、今週の土曜日暇?」
と唯が僕の顔を覗き込む
「土曜?あぁ〜悪い、部活の試合だわ」
いちおレギュラーなので休むわけにも行かない
「えぇ〜!じゃぁ何時に終わるの?」
『行かないで』と言わないあたりは聞き訳がいい
「負けるまでだな。」
そう言うと唯はニカっと笑って
「じゃあ応援しに行って負けるの待っとくよ」
「お前なぁ。応援で負けるの待つって…どっちだよ。」
呆れている僕の隣で腕にしがみついたままの唯が
ケラケラ笑う。つられて僕も笑顔になる。
いつもの景色、いつもの道、いつもの笑い声。
この何の変哲も無い状況が
僕にはとても幸せで、
だけどこの当たり前に思えることも
実は奇跡的な事柄が
奇跡的に折り重なって起こっていることを
僕はよく知っている。
だから僕はこの奇跡のような『当たり前』を
絶対に護って行こうって、そう思ったんだ。
ポケットで携帯が鳴る。
出したとたん唯にひったくられる。
これも僕にとって幸せの一部…かな?
当たり前って言葉良く使うけど
実はそんな当たり前こそ自分には
一番必要なんじゃないかな?
って思うときないですか?
もっと自分の周りをよぉく観察してみましょ?
きっと何よりも大切な『当たり前』が隠れてるハズ☆