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異世界怪奇譚  作者: 春ウララ
Calling
20/70

「買い物籠には、お姫様」

「買い物籠には、お姫様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 占いの館の一室。

 ティータイムに興じている、二人。

 ヨミは、パンツスタイルで訪れたアスビーを不満を持つ。

 

 「折角、あげたもん。何で着いひんの。」

 

 足を組み、ヨミの淹れてくれたコーヒーに舌鼓をうつアスビーは、

 

 「着たぞ、昨日。」


 「何で、今日じゃないんや。」

 

 ブーブーと文句を垂れるヨミ。

 

 「あれで、屋敷を出るのは嫌だったんでな。」


 「誰にも見せな洒落る意味ないやんけ。」


 「見せたぞ、琥太郎に。」


 「あの小僧、殺す。」


 「ふむ。好評だったので、この後、一緒に買いに行く約束もしたんだ。」

 

 

 ヨミの反応を試すようにアスビーは、淡々と告げる。

 ヨミの心もちは、ヤンキー男にたぶらかされる一人娘を、如何に正しい道に連れ戻そうか。

 ヨミの顔が固まり、

 アスビーはその様を、上機嫌に見物する。

 

 

 「・・・うちも行く。」


 「そう言うと思ってた。」

 

 ヨミの苦渋の決断も見据えていたとばかりにアスビーは、椅子に背を預ける。

 

 「しかし、珍しいなぁ。自分で服なんて買いに行かんかったやん。

 ムカツクけどあの小僧には、少し、礼を言うかいなぁ。」


 「私も、一介の淑女として、身嗜みに気を配ろうと、思っていたぞ、思っていただけだが。」


 「産まれもった美は、使わな神さんに罰当たりやで、もっと精進せい。」


 「ああ、それも一興かもな。」

  

 私の魅力が増すのは好都合だ。

 パーティーでドレスを着るのも良いかもしれない。

 バカな貴族どもを籠絡しやすいかもな。

 

 今度、キャトルにドレスを選んでもらおうか。

 

 「そんで、肝心の小僧とは何処で会うんや?」

 

 ヨミは、近くの衣装棚を開け、外出用の服を選んでいる。

 

 棚には、紺色のセーラー服が何十着も入っている。

 アスビーは、以前何が違うのかさっぱりわからん。と言った際、

 小一時間、これがドコドコのブランドの、これは、ここにワンポイント入ってて・・・

 と、あまり大差なさそうな服の説明をされたので、

 このことには触れまいと誓っている。

 

 

 「サクヤの祠に行ってから館に来ると行っていたぞ。」

 

 部屋の扉がノックされる。

 琥太郎か、と思って目を向ける二人だが、

 それより早く、上半身裸の玖礼が扉を開ける。

 風呂上がりなのか、肩からタオルをかけ、濡れた青い髪は、いつものように結われていない。

 

 「お、アスビー来とったんじゃな!」

 

 子供のようにニカッと笑う玖礼25歳。

 いまだ滴る水を気にせず、アスビーの隣に腰かける。

 座った際に水が跳ねてアスビーにかかるが、アスビーは気にせず、コーヒーを啜る。

 

 妖剣の件が終わって以来、何度か顔を見せた玖礼は、

 

 馴れ馴れしくなった。

 元々、こういう性格なのだろう。

 妖剣に囚われず豪放磊落な素が見えるのは良いことだが・・・

 眉間に皺を寄せ、アスビーは、ヨミを見る。

 

 

 「もう、濡れたまま座ったらアカンでぇ。」


 「お、おう。」

 

 ヨミは、タオルで玖礼の髪をごしごし拭く。

 子供(玖礼)の世話をやく母親ヨミ

 板につくな。

 

 「相変わらず騒がしい男だな。」


 「そこが、ええんやでぇ。

 はい、終了。さっさと着てきぃ。」


 「暑いんじゃ、もう少しこんままで。」

 

 

 玖礼は、椅子に更に深々と座る。

 アスビーと、ヨミからタメ息が溢れる。

 

 「そんな格好行儀悪いよぅ。

 この前も恋愛相談に来た女の子の前でパンツ一丁で出て来たやんか。」


 「むぅ・・・」


 「最近、酒場の店主から苦情が来ててな、

 青髪の男が毎日ように酔いつぶれ、服を脱ぎ散らせているとか。」


 「うっ・・・」


 「そして、その半裸の男を担いで帰る人がいるわけやな。

 半裸の男を担ぐ、女ってスゴい絵面やなぁ。」


 「・・・」


 「そういえば、最近夜道を一人歩きしてる女性の前に下腹部を晒している変態がいるらしいな。」


 「それは、ワシじゃないわ!

 ・・・着てくるわ!」

 

 玖礼が、耐えれなくなって部屋を飛び出す。

 

 「な、オモロイやろぅ。」


 「そうだな。」


 「元気なのは、エエんやけどなぁ。」


 「ちゃんと、首輪を繋いでおけ、私のところに届く苦情の半分は玖礼関連だぞ。」


 「ごめんなぁ。でも、子供は自由にさせな良い子に育たへんのや、なぁアスビー。」


 「ふむ・・・私も、そうであったか。」


 「今は、つっこむとこやでぇ。

 まぁ、大きくても小さくても純真なら、うちにとったらどっちも変わらんけどなぁ。」

 

 ヨミの手がアスビーの頭を優しく撫でる。

 

 「子供扱いするな。」


 「大きなっても、親にとったら変わらへんよ。」

 

 口をまげるアスビーだが、ヨミの手が心地よい。

 小さい頃から、私は、こうしてもらってたな。

 目を閉じて、その感触に身を委ねる。

 ヨミは慈しむ瞳で子をあやす。

 

 「子守唄も歌ったろか?」


 「結構だ。」

 

 ヨミの手から逃れ、タバコを取り出す。

 

 「あ! グレよったなぁ・・・

 タバコ吸うと、エエことないよ。」


 「一部の人間には好かれるらしいと、琥太郎が言ってたぞ。」


 「何言っとんねん、あの小僧は・・・」


 「やっぱ、暑いわい。」

 

 

 玖礼が、戻ってきた。

 薄手のシャツを着て、髪をてっぺんで纏めている。

 ちなみに、ヨミに着せ替えられた、玖礼は一般的な服装に戻っている。

 腰には相変わらず、剣を差しているが、

 

 「あ、そうだ。玖礼も連れていくか。」


 「ん、なんじゃ?」


 「エエやん、エエやん。皆でお買い物やな。」


 「げっ!」

 

 玖礼は、お買い物と聴いた途端顔を渋る。

 

 「服を買いに行くだけだぞ。」


 「せやでぇ、玖礼。前みたいに下着売り場に連れてったりしないから安心せぇ。」


 「・・・」

 

 ちょっと可哀想に思えてきたな。

 玖礼は、疑心暗鬼でヨミを見ている。


賑やかな買い物デビューになりそうだ。

そう、先の事を考えているアスビーの耳に。

 

 突然玄関から、来客を告げるノック。

 

 琥太郎が来たか。

 

 アスビーは腰をあげる。

 

 「ほら、誰か来よったで。玖礼見てきぃ。」


 「琥太郎だろう。」


 「ん? 琥太郎が来るんか。」


 「せやから、安心せぃ。小僧の前でうちや、アスビーの下着なんて選ぶわけないやん。」


 「そうじゃな!」

 

 そういって、玖礼はかけだす。

 

 「ヨミ・・・」


 「ほんま、かわいいやろう。

 あげへんで。」


 「・・・いらない。」

 

 

 

 






 

 玖礼が、扉を開けると仏教面の琥太郎が立っていた。

 そして、その後ろに・・・

 

 顔を隠すように深く被ったフードの奥から、金色の美しく整った長い髪に薄むらさきの瞳が見える。

 シンプルで動きやすい格好だが、あしらわれてる素材が良く。

 見るからに品のある、幼なげな少女。

 首から下げるのは何かの紋章。それに、緑色の石がはめられた造りのネックレス。



 「ヨミ! 琥太郎が幼女誘拐しよったぞ!」


 「失礼なやつだな、迷子だったから連れてきただけだぞ。」


 「迷子じゃありませんよ。お兄さん。私は、ただちょっと道に迷っていただけですから。」


 「それを迷子と言うんだよ。」


 「それに、そちらのお兄さん。私は、幼女じゃありませんよ。

 プリエルカは今年16になります。」


 「幼女やないかい。」


 「違います!」

 

 顔を赤くして、怒るプリエルカと名乗る少女。

 玄関から響く声に部屋を出るヨミ。

 

 「なんや、アスビーに飽きたらず、子供にまで手を出したんか。

 玖礼! キャトル呼んできぃ。幼女誘拐の現行犯で縛首や。」


  「すまんな、琥太郎。ワシも守れんわ!」


 「だから違うと言ってるじゃないか。」

 

 騒がしい玄関へ足を運ぶ、ヨミ。

 

 「ん? どないしたんや、この可愛い嬢ちゃん。アメちゃんいるか?」


 「いりません! お姉さんが、もしかしてヨミさんですか?」

 

 首をかしげて、訪ねるプリエルカ。

 マジマジと少女を観察するヨミ。

 

 「せやでぇ、お嬢さん。

 何処かの家の子かいなぁ。」

 プリエルカ「そうですか! やった!

 やっぱ、私、運がいいんですね。

 お姉さまがよくヨミさんのお話してましたもの。」


 「ん? 」

 

 ヨミは、少女の正体を推理する。

 

 金色の髪、薄むらさきの瞳。

 それに、首から下げたネックレスの紋章・・・

 

 ヨミに遅れて、アスビーが降りてくる。

 

 「琥太郎・・・残念だ。

 いくらお前でも犯罪に手を染めるほどとは思わなかったのにな。」


 「そろそろ、俺の誤解を解いてくれないか、えーと・・・プリエルカ。」


 「プリエルカ・・・?」

 

 

 アスビーが、その名前に反応し、玄関へ。

 プリエルカは、アスビーを見て、フードを取り、顔を見せる。

 

 「お久しぶりです、アスビーお義姉さま。」


 「・・・プリエルカ、どうしてここに・・・」

 

 

 プリエルカを見て唖然とするアスビー。

 ヨミも、やっと素性を掴んだようだ。

 

 「ほんまやわぁ、

 プリエルカ・イル・グラセニア第3王女。

 何でおんねん。」


 「「え!?」」

 

 

 

 プリエルカは、首をかしげて、王女の微笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外挟んで、新話にいきます。

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