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異世界怪奇譚  作者: 春ウララ
妖刀
14/70

「俺を選べ!」

小噺です。

「俺を選べ!」

 

 

 

 

 

 

 

 「死の森」

 そんなことを、人間が言っていた。

 

 森に入るのは、死を求める人間か、死を覚悟して求める者に会おうとする人間か。

 

 

 そんな、人間の想いなど知らぬ。

 興味がない、

 ただ、うちを愉しませるか、どうか?

 

 

 屍の山の上に、寝転がるヨミ。

 

 

 変わらぬ光景。

 増える屍の数など、興味がない。

 

 森は、今日もその主に呼応するように人を喰い、

 屍にしていく。

 

 

 「また、来たんか。」

 

 

 気づけば、いつもあの鬼が目の前に現れる。

 

 鬼は、屍を踏みヨミへと近寄る。

 

 ヨミは、何度も繰り返されたやり取りをなぞる。

 

 煙管の煙を吹き掛けてやると、後ろに回り込まれ抱きしめられる。

 

 その熱に身を、委ねていると

 気づけば鬼は消えている。

 

 

 ただ、それだけ。

 

 何が愉しいのやら。

 

 

 ヨミは、相手するのも面倒なので鬼の好きにさせてやっていた。

 

 

 ただ、今日は違う。

 

 鬼は煙を吹き掛けても消えず、

 

 ヨミの目の前に立ち尽くす。

 

 

 ヨミは、顔をあげ、マジマジと鬼の顔を見る。

 

 鬼の、全身は返り血にまみれていた。

 

 

 それで、寄らんのか。

 

 

 何とも律儀な鬼だと、思うヨミ。

 

 

 

 森が揺れる、何かが森へ入り込んだ。

 鬼がヨミの顎に、優しく、不器用に手を添える。

 

 

 「狐狸精、お主はいつ、俺についてくる?」

 

 添えられた手に、指を絡ませるヨミ。

 

 

 「うちを、愉しませてくれればええねん。」

 

 

 鬼は、黙る。

 森に入った侵入者は、真っ直ぐに此所を目指してくる。

 

 ヨミは、腰をあげ、森を見通す。

 

 

 「ぬらの、百鬼やなぁ。」


 「誰だ?」


 「お前以外に、うちを欲しがるヤツや。うち、モテはるんやで。」

 

 

 悪戯に鬼へと微笑み、

 ヨミの尻尾が森へと伸びる。

 

 

 何匹かの魍魎を刈り取った、尾がヨミへ帰ってくる。

 

 

 「面倒やなぁ・・・」

 

 そう言うと、

 ヨミと鬼を、大きな影が覆い被さる

 

 影の主を見上げるヨミ。

 

 

 「がしゃの者か・・・」

 

 

 大きな影は、ヨミを捕らえんと腕を伸ばす。

 

 その腕を、鬼が片手で受け止める。

 

 

 ほう、中々、豪気なやつやん。

 

 

 鬼は、伸ばされた腕に拳を叩き込み、弾き飛ばす。

 

 

 鬼が、ヨミを見る。

 

 

 「俺を選べ!」

 

 

 鬼が、ヨミへと手を差し出す。

 ヨミは、その手を見つめ、

 

 

 「そんな、軽い女やないで、うち。」

 

 

 鬼は、豪快に笑う。

 

 

 「では、また来よう、狐狸精。」

 

 

 鬼は、大きな影へと向かって飛び上がっていく。

 

 

 

 ヨミは、その鬼の闘う様を、遠くで眺め、

 

 

 「不器用なやっちゃなぁ・・・」

 

 

 もう少し、こやつの口説きを聞いてやろうと

 愉悦に思うヨミ。

 

 

 

 森は、いつしか騒ぎを止めて、

 その主を眠りへと誘った。

 

 

 

 

 

 

 

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