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第九話 足裏にお灸を据えて


 今日は菜帆ちゃんが遊びに来て、まどかと一緒にキッチンでクッキーを焼いてくれている。

 昨日撮影した「二人で裸足で正座」動画のお礼ということらしい。

 動画の反響は、なかなかだ。

 一晩で再生数1000回を超えた。

 二人の少女が裸足で正座をするだけという動画は、素足フェチ・裸足フェチはもとより、純粋に素人チューバーの動画を楽しんでいる視聴者の目にも留まったようだ。


 そして、「足の裏にお灸を据えたい」というコメントが来ていた。

 「お灸」とは、身体のツボ部位に対して温熱刺激を与えて、疾病の治癒を目的とする行為である。

 日本ではもぐさを皮膚に乗せて火を点ける方法がよく知られているが、この方法は火傷するほど熱いというのが一般的な認識である。

 最近では「せんねん灸」などの、艾を皮膚に直接触れさせないタイプのお手軽なお灸が熱すぎないお灸として家庭では利用されている。

 次の動画は、二人の足の裏にお灸を据えてみよう。


「それって熱くないんですか・・・?」


 そう、お灸は熱いものだからこそ、動画のネタになるのである。

 可愛い女の子が裸足の足の裏にお灸を据えられて、その熱さに悶える。

 これ以上健全かつ妖艶で甘美な動画が、あっただろうか。


 しかし、今から艾を入手するのは、少々手が掛かるな。

 ここは簡単に、せんねん灸を使うこととしよう。

 実は、熱すぎないはずのせんねん灸も、一手間加えるだけで本格的な激熱灸に変化する。次の動画は、その即席激熱灸を使って撮影するとしよう。


「もし足の裏にお灸を据えるのがいやだったら、やらなくてもいいけど・・・まどかは、やるよな?」

「ふぇ!? え、あ・・・うん・・・」

「わっ、私も大丈夫ですっ! 足の裏にお灸・・・据えてくださいっ!」


 菜帆ちゃんを焚きつけることに見事成功した。

 そのとき、キッチンタイマーが鳴り、クッキーが焼けたことを告げる。

 キッチンに戻って行った二人は、もうお灸のことなんか忘れているかのように、キャッキャッとお皿にクッキーを並べている。

 僕はそんな二人の素足を、目で追いかけていた。



 二日後――。

 菜帆ちゃんが来た。

 今日は、足の裏にお灸を据える動画を撮影する日。僕は「せんねん灸」を買って準備しておいた。

 せんねん灸は、ひとつひとつの艾に5ミリの台座が付いている。この台座があるために、皮膚に乗せて点火しても熱くなりすぎることがないのである。

 この台座をカッターで2ミリに切り落とす。台座が低くなったことで、皮膚に感じる熱さはグンと上がるのである。これが、即席激熱灸を作る一手間なのである(ドヤァ)。


 コンコン


 まどかの部屋で着替えた二人が、僕の部屋へとやってきた。

 今日のまどかは、青い半袖のブラウスに白のキュロット。菜帆ちゃんは、淡いピンクのTシャツにデニムのホットパンツ。

 なんだか菜帆ちゃんらしくない露出度の高さで、ドキドキしてきた・・・。

 もちろん二人とも裸足である。うちって、こんなに華やかな家だったかしら♪

 では、撮影を開始しよう。


 まず、今回の動画の内容を二人に説明しよう。

 二人の足の裏にお灸を据えて、それを撮影する。

 しかし、ただお灸を据えて、熱がるところを撮影しても面白くないよね。


「じゃあ、どうするの?」


 先にギブアップした方が、負け・・・という勝負にしようと思うんだ。

 そういう要素を取り入れたほうが、動画を見る人にとっても面白いものになると思う。


「ま、負けたらどうなるんですか・・・?」


 そうだね・・・追加でお灸を据えるってのはどうだろう。


「ええーっ! 二度も熱い思いをするってこと!?」

「が、頑張ります・・・っ!」


 二人の少女は、かすかに震えているようだ。いいぞいいぞ、その恐怖に脅える表情。

 今回は、足の裏だけではなく、熱さに耐える彼女たちの苦悶の表情もしっかりと撮影しなければ。


「二人同時にスタートさせるのは難しいから、ストップウォッチを使って一人ずつ撮影しようと思うんだけど、どっちからやる?」


 顔を見合わせた二人は、「どうぞどうぞ」「いや、そちらからどうぞ」とコントみたいなことをやっている。

 ジャンケンで決めたらいいじゃんと言ったら、菜帆ちゃんが負けた。


「やったぁ! 菜帆りん、頑張ってねぇ~^^」

「くっ・・・」


 菜帆ちゃんの悔しがる顔、初めて見た気がするがやはり可愛い。

 それでは、菜帆ちゃんの撮影から始めよう。

 ポーズの基本は正座なのだが、普通に正座するとかかとの上にお尻が乗っかってしまい、お灸の熱がお尻に近くなりすぎて危ない。

 そこで、膝の裏に折りたたんだクッションを挟ませ、お尻が少し浮く状態にする。

 足をピッタリと合わせてもらうと、目の前に無防備な裸足が揃えられている状態になった。

 菜帆ちゃんの足裏は真っ白であり、とても美しい。


「あの・・・あんまり見ないで下さいぃ・・・恥ずかしいから・・・」


 消え入りそうな声で発せられた言葉が、耳と心に気持ちよい。

 その声でお灸の熱さに悶える声が聞けると思うと、なんだか興奮してきた。僕はおかしいんだろうか、おかしいんだろうな、でも気にしない。

 菜帆ちゃんの足の裏にせんねん灸をソッと乗せる。

 両足の土踏まずの部分に一つずつ乗せた。


「りょ、両足に据えるんですか!?」


 そうだよ、じゃないと不公平でしょ?

 そのままチャッカマンで点火し、ストップウォッチをスタートさせる。

 まどかはブラウスの裾を握り締めて、菜帆ちゃんの試練を見つめている。


「ゆっくりと熱くなるから、どうしても耐えられなかったら、言ってね」

「はい・・・っ」

「足を動かすとお灸が落ちて火傷しちゃうかもだから、気を付けてね」

「はいぃ・・・っ」


 固定カメラは菜帆ちゃんの足の裏を捉えている。

 僕が手に持っているカメラでは、菜帆ちゃんの全身を映し、そのまま顔の表情を捉える。

 まだ熱さを感じていないのだろう。表情は固いが、苦悶さは出ていない。

 お灸からはうっすらと白い煙がのぼってくる。


「いい匂いですね・・・」


 そうなのだ、艾が燃える匂いには、心身をリラックスさせる効果もある。

 しかし、菜帆ちゃんがリラックスしていられるのも今のうち。

 30秒が過ぎた。


「温かくなってきました・・・」


 菜帆ちゃんが身体をモジモジさせる。

 あんまり動くと危ないからね!

 45秒が過ぎた。


「あっ・・・あっ・・・!」


 膝の上で手を握り締める菜帆ちゃん。

 両足の裏を突き刺すような熱さが襲っているはずである。足の指をギュッと閉じて、熱さに耐えている。


「!・・・・っ!・・・・んん~~~~っ!」


 表情は、梅干を食べたときのようになっていた。

 可愛い子も、こんな表情をするんだな・・・。


「もっもう無理ですぅぅ~~~っ!! 熱いぃぃぃ~~~~~っ!!!!」


 これをギブアップのサインとして、ストップウォッチを止めてせんねん灸を取ってあげた(素手で取ったら、熱かった・・・)。

 菜帆ちゃんはすぐさま、手の平で足の裏をさすって痛みを和らげようとしている。


「ああ~ん、熱かったですぅ~(泣)」


 もちろん、この仕草・セリフも逃さずカメラに収めた。

 まどかが菜帆ちゃんに駆け寄る。


「ど・どうだった?!」

「もう、ものすごぉ~く熱かったですっ!」

「そ、そんなに!?」

「火傷するかと思いましたけど・・・」


 そう言って、右足をヒョイと挙げて足裏を見る菜帆ちゃん。

 お灸を据えた土踏まずは、かすかに赤くはなっているが火傷はしていない。


「火傷はしていないんですね、あんなに熱かったのに・・・」

「よく耐えたほうだと思うよ。さ、次はまどかの番だな」

「ギクッ(汗)」


 今にもこの場から逃げ出しそうなまどかを捕まえ、しゃがませて膝の裏にクッションを入れる。

 足を開いたままだったので手で合わせるように動かしたが、ちょっと力みすぎて踝同士がぶつかってしまった。


「痛いよっ、アニー!」

「はは、ごめんごめん」

「まどかちゃん、おうちではお兄さんのこと『アニー』って呼んでいるんですか?」

「え!? あは・・・そう・・・だよ・・・」

「まどかちゃん、学校ではお兄さんのこと、『お兄ちゃん』って言うんですよ^^」


 なにっ、それは本当か!?

 家でも「お兄ちゃん」って呼んでくれればいいのに。何を照れているのか、この妹は。


 まどかの足の裏も、菜帆ちゃんに負けず劣らず綺麗だ。

 さっ、お灸を据えるぞよ。


「アニー・・・怖いよぅ・・・」


 いいよ、その切ない声。

 脅えた表情もしっかりとカメラに収める。

 そして僕はいよいよまどかの足の裏にせんねん灸を乗せ、チャッカマンを手に取った。



つづく



2017/10/06 体裁を整えました。

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