表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/40

第三十三話 まどかの悩み


 夏休みも中盤に入ったある日の午前中。

 朝食を食べ終えたまどかは、シャワーを浴びている。

 僕は、居間でテレビをダラダラと見ていた。


「ひ・・・ぴやぁぁ~~~~っ!!」


 脱衣所の方から、変な声が聞こえた。

 まどかが悲鳴を上げたようだ。それにしても情けない声である。

 脱衣所の前まで行き、ドア越しに声を掛ける。


「どうした、ゴキ〇リでも出たのか?」

「アニー!? ち・違うよ・・・っ」


 ゴキ〇リが出たわけではないんだな、良かった。

 ではいったいどうしたというのだ。

 僕は、ドアを開けた。


「えっ!? きゃあーーーーーっ!!」


 てっきり裸のまどかがいるものと思っていたが、Tシャツを着ていた。下はパンツだけだったが。

 Tシャツのすそを下に引っ張ってパンツを隠そうとする。

 なんだよ、ちょっと前まで家の中ではパンツ丸出しで歩き回っていたくせに。中学生になった途端に大人ぶっちゃって。


「ででっ、出てってよっ! はやくっ!!」


 すごい剣幕けんまくで追い出されてしまった。

 僕はまどかの悲鳴が聞こえたから、助けようと思ってかけつけたのに・・・。

 しかたないので、僕は居間に戻ってテレビを見続けた。

 着替えを終え、髪を乾かしたまどかが居間へやってきたので、何があったのか訊こうとしたが、言葉をにごされて答えてはくれなかった。


 そしてお昼ご飯の時間になった。

 今日のお昼は、お兄ちゃん特製のチャーハンだぞっ☆

 まどかのお皿に山盛りのチャーハンをよそってあげた。

 しかし、五口くらい食べたところで、まどかは「ごちそうさま」と言ってスプーンを置いてしまった。

 いやいやいやっ、今日のチャーハンはすごく上手に出来たと思うんだが!?


「ぅ・うん、美味しかったょ・・・」


 じゃあなぜ残すのさ。せっかく山盛りにしたのに。

 まどかは俯いてしまった。食べない理由を言いたくないのだろうか。

 お兄ちゃんが一所懸命に作ったチャーハンを残すなんて、許しませんよ!

 食べ物を粗末にするような子は、お仕置きしちゃうから!

 まどかの体がビクッと震えた。

 ふふふ、お仕置きという単語に反応したな。

 さあ、お仕置きが嫌なら言いなさい。ご飯を食べない理由を!

 すると、まどかは泣きそうな顔を上げた。


「た・たた・・・体重が・・・っ、増えちゃった・・・の・・・」


 ほお、体重が増えた・・・ふむ。

 まあ、女子には大変ショックな出来事なんだろうな。

 しかし今のまどかを見ても、細くはないにしても、太っているようにも見えないが・・・?

 むしろちょうどよいスタイルに見える。


「ダメなのっ、体重は増えちゃダメなのっ!!」


 まどかは中学生なんだし、成長期だから、体重が増えて当然なんじゃないの?


「夏休み明けに太った体で学校になんて行けない・・・! ダイエットする!」


 まどかは僕の言うことをさっぱり聞かない。

 ダイエットをするって、いったい何をするんだい?


「腹筋する。アニー、手伝って」


 いきなり居間の床に寝そべるまどか。

 たぶん、両足を押さえてほしいのだろう。僕は、まどかの足首を両手で押さえる。

 真剣な顔のまどかは、鼻息を荒くしながら上体を起こしては寝かせ、それを繰り返す。

 10回ほどを過ぎたあたりから、体を起こすのが苦しくなってきたようだ。


「ふんむぐぅぅ~~~~っ! ぅうぅう~~~~」


 まどか、あんまり無理しない方がいいぞ。

 そうだ、ダイエットに良いツボがあったと思う。調べてあげよう。


「え、ツボ? そうなんだ。よろしくー☆」


 ネットで調べたらすぐに出てきた。もちろん、足の裏のツボである。

 両足の土踏まずの少し上のあたりにあるらしいツボを刺激すると、体脂肪の燃焼が促進されるらしい。

 僕は居間のソファにまどかを俯せに寝かせ、両足を揃えさせる。

 まどかの綺麗な足の裏が、僕の目の前に揃えられている。


「ツボを押すだけで痩せられるなんて、簡単なんだね~」


 甘いことを言うまどか。

 そんなに簡単に人間が痩せられると思うか?

 僕はまどかの足の裏に親指を当て、思いっきり力を込めた。


「ぎゃあっ!!!??」


 まどかが反り返った、面白い。


「ちょっと! 痛いってば!」


 ツボは、痛いくらいに押さなければ意味がない。って誰かが言ってた。気がする。

 暴れるまどかのお尻に乗っかり、親指で足の裏を押し込んでいく。


「ぎゃおお~~~~!!」


 まどかの足の指が開いたり閉じたりして可愛い。そして楽しい。

 ダイエットのためなんだから、我慢しなさい。


「きゅううぅ~~~~!!!」


 5分ほど、まどかに激痛足ツボ地獄を味わわせた。

 ヘロヘロになったまどかは、ノロノロと起き上がり、フラフラとキッチンへ向かう。

 何をするんだろうと思って見ていると、冷蔵庫から牛乳を取り出すとコップに注ぎ、腰に片手を当てて一気に飲み干す。


「プハーーーーッ!!」


 続けて冷蔵庫の中に魚肉ソーセージを見つけると、それも取り出してムシャムシャと食べ始める。

 な、何やってるんだ、おまえ・・・。


「えへ、足の裏のツボ押されたら、お腹空いちゃった♪」


 いや、食べちゃったら意味ないじゃん。


「あ・・・・う、うわわぁ~ん! 悔しいよぅ!」


 はあ・・・僕はため息まじりにスマホを取り出すと、里帆にメッセージを送った。



つづく



2017/10/28 体裁を整えました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ