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第三十一話 女子の部屋 後編


  ガチャリ


 僕は、「由香のへや♪」と書かれたプレートがかかっているドアを開けた。

 僕の知らない由香ちゃんの部屋は、菜帆ちゃんの部屋と同じように灰色一色の殺風景なものだった。

 ほこりのようなにおいが鼻をくすぐる。

 薄暗い部屋の中央に、誰かがいる・・・気配を感じた。

 今までの展開からして、由香ちゃんがいるんだろうな、と思い、僕は目を凝らした。


 絶句した。

 そこに由香ちゃんがいたのだが、様子がだいぶおかしいことになっている。

 まず、女囚着を着ているのは、今までの展開から予想できていたことだ。

 由香ちゃんは、両手と両足を縄で一つに括られて、横たわっている。

 手足を括っている縄は、さらに上から垂れる縄と繋がっていた。

 口には手拭いで猿轡さるぐつわをされている。

 僕がフラフラと由香ちゃんに近付くと、由香ちゃんは僕に気付いて目を見開いた。


「んふうぅぅ~~~っ!////」


 括られた両手の平は白く、どこかを裸足のまま歩かされたのだろうか、足の裏は土踏まずだけが白くなっていて、他の個所は黒く汚れていた。

 由香ちゃんの足の裏の汚れを払おうと手を伸ばしたその瞬間、ガコンッ!という重い音が聞こえ、続けてガラガラと何かが回るような音が聞こえてきた。


「んんん~~~っ! んんぅぅ~~~っ!!!」


 縛られた手足が垂れている縄に吊られて、上がり始めている。

 な・なんということだ、誰かが由香ちゃんを吊り上げようとしている。

 このままでは、由香ちゃんは両手足を一つに縛られたまま、タヌキのように吊り上げられてしまう!

 ん~~~~、見たい!

 由香ちゃんが縛られて吊られているところ、見たいぞ。

 よこしまな考えを振り払いもせずに、僕はどんどん吊り上げられていく由香ちゃんを見ていた。


「ふううんん~~~~! んむぅぅ~~~~っ!!////」


 背中が床から浮き上がり、いよいよ由香ちゃんの全体重を両手両足の縛られた一ヶ所で支えなければならない状態になった。

 両手は吊っている縄を掴んで、少しでも体重による痛みを和らげようとしている。

 両足はどうすることも出来ず、虚しく足指を閉じたり開いたりしている。

 その時、由香ちゃんの足の親指同士がまだ縛られていないことに、僕は気付いてしまった。

 急いでポケットに手を突っ込むと、予想通り凧糸が入っていた。

 由香ちゃんの吊り上げショーはまだ続いているが、由香ちゃんの足はまだ僕の胸の高さよりも下の位置だ。

 僕は由香ちゃんの足の親指同士を凧糸で素早く縛る。


「んんんっ!?」


 ふう、これでよし。存分に吊られるといい。

 由香ちゃんにウインクしてあげた。

 由香ちゃんは、悲しそうな顔をする。

 由香ちゃんの体はどんどん吊り上げられていく。

 ガックリと力を失った首が、僕の目とほぼ同じ高さまで上がったところで、吊り上げの縄が止まった。

 ふーむ、ちょうどよい高さではないか・・・。

 実に美しいタヌキの吊るし・・・いや、由香ちゃんの吊るしの完成である。


「ふうぅんん~~~・・・」


 いつもは元気な由香ちゃんが、消え入りそうな声で泣いている。

 助けもせずに、だた見ていることに少なからず罪悪感を感じてしまう。

 しかし、由香ちゃんを下ろす方法も分からない。

 どうすればいいのか。この状況を楽しめばいいのではないか。

 いやいや、そんな非人道的なことをするようなやつだったのか、僕は。

 だが、菜帆ちゃんも助けずに、由香ちゃんの部屋に移動してしまった。まどかだってそうだ。本当は助けなくてはいけなかったのではないか。

 そんな出口の無い自問自答の僕の目に、一筋の光が飛び込んできた。

 「りほのへや」と可愛い字で書かれたプレートが掛けられたドアである。

 ゴクリと、思わず唾を飲み込む音が響いた。

 里帆も、同じなのか・・・。

 由香ちゃんをこのままにしておくのは心苦しい気もするが、里帆の状態も気になる。

 僕は、里帆の部屋のドアを開けた。


 絶句した。

 基本、今までの部屋と同じなので詳細は割愛するが、里帆は逆海老に縛られて、吊り下げられていた。

 逆海老とは大雑把に言うと、背中側で手足を一つに括った縛り方である。

 なるほど、今度は逆海老縛りときたか。

 由香ちゃんと同じような手拭いで猿轡をされ、噛み締めるように泣いていた里帆は僕に気付くと、幾重にも縄の掛かった体を揺らして「うーーーーっ! ううぅーーーーっ!!」と喚いた。

 これまでの三人の女子中学生と違って、里帆は大学生である。

 体もずっと成長して、その存在感の大きさは全然違う。里帆の手首足首に掛かる体重は相当なはずだ。


「ぅがあぁぁーーーーーっ!」


 な、なんか里帆が恐くなっている。

 里帆の顔が、ちょうど僕の顔と同じ高さになるように吊られている。

 なんで里帆がこんなに凶暴になっているのか訊こうと、手拭いを外してあげることにした。


「ぷはぁっ! んもうっ!!」


 あの、なにか怒ってる・・・?


「まどむ・・・これがまどむが求めていたことなのっ!?」


 え、僕が求めていたこと?

 女の子たちが拘束されている、この状況を僕が望んでいたって?

 どうだろう・・・こういうのは嫌いではないが、でも、こんなことをしたら里帆たちは怒るだろうし、僕のこと嫌いになっちゃうんじゃ・・・。


「・・・うっ・・・うっ・・・」


 里帆が嗚咽しながら、泣き始めた。

 どど、どうした! どうしたらいいんだ!?


「助けてぇ・・まどむぅ・・・」


 今まで聞いたことのない声の、里帆のはかなげなセリフ。

 その時、里帆の足の親指同士が縛られていないことに気付いた。

 僕は黙ったまま凧糸を取り出すと、背伸びをして里帆の足の親指同士を縛った。


「里帆、これで完成だ・・・」


 里帆は僕の顔をしっかりと見据えて、口を開いた。


「バカ」



 ――



「と、いう夢を見たんだ。どう?」

「な・・・なにが・・・?」


 まどかは、ゴミでも見るような視線を僕に向ける。

 なんだよ、面白い夢を見たから、話してあげたのに。


「ゲームの邪魔だから、出てって! ヘンタイっ!」


 信じられない罵声を浴びせられ、僕はまどかの部屋を追い出された。

 この夢の話、他の女子にはしない方が・・・いいよな。



つづく



2017/10/27 体裁を整えました。

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