第三十話 女子の部屋 前編
・・・・・・・・・。
おや? と思ったら、僕はまどかの部屋の前に立っていた。
目の前のドアは、閉じられている。
外から蝉の鳴き声が、家の中に流れ込んできている。
うるさいな・・・・まどかの部屋に逃げ込めば、この喧騒から逃げられるのでは・・・そう思った僕は、ノックもせずに目の前のドアを開けた。
部屋の中を見て、僕は絶句した。
まどかが、十字架に磔にされているのだ。
まどかの部屋にしては殺風景に感じる。十字架は、僕が木材で作った土台のしっかりとした十字架だ。
数日前の磔プレイにハマったまどかが、自らを十字架に架けて悦に浸っていたのであろうか。だとしたら、ノックをしなかったのは申し訳ない・・・と思ったが、よくよく見るとどうも様子が変である。
まどかは、女囚着のようなものを着ていた。うっすらと青みがかった簡素な着物。裾が太ももまでしかない短いものだ。
そして十字架にまどかを固定しているのは、数日前に使った布テープではなく、麻縄だった。
「まどか、そんな縄、どこにあったんだ?」
「んんんうんんんぅ~っ」
まどかの返事が変だったので、顔を見てもう一度絶句した。
まどかの口に、竹の節で作った轡が嵌められているのである。
おいおいおい、そんなものまで・・・いったいどこで?
これではまどかは喋ることができない。
ううむ、なぜまどかがこんな状況になっているのか、理解できないぞ。
とりあえず、この素晴らしい目の前の十字架を観察しよう。
まどかの体は何ヶ所も麻縄に縛られることによって、十字架にガッチリと固定されている。
よく考えたら、自分一人でここまでしっかりと縄を掛けるのは、まず無理だろう。
ということは、いったい誰がまどかを磔にしたんだ・・・?
僕以外には考えられないが、もちろんそんなことをした記憶がない。
使用している小道具もなかなかマニアック。磔の完成度としては、非常に高い。
ただ一つ残念なのは、まどかの足の指が縛られていない。
ポケットを探ると、偶然にも凧糸が入っていた。しかも長さもちょうど良い感じ。
僕はその凧糸で、まどかの足の親指同士を縛ってあげた。
「ふうぅんんんぅ~~////」
よし、これで完璧。
数歩後ずさり、まどかの全身を確認する。
注目すべきは太ももの裾から爪先まで開けた脚のライン。十字架に沿って綺麗に縛られている。
血の繋がった妹でなければ、大変興奮していたことであろう。実に惜しい。
と、横を見ると「菜帆のへや☆」と書かれたプレートが掛かっているドアが目に入った。
・・・・おや?
このまどかの部屋から菜帆ちゃんの部屋に通じている、だと?
「ふむぅぅぅ~~~~~ぅ!!」
僕が菜帆ちゃんの部屋へのドアを見つけたことに、まどかも気付いたようだ。
なぜか必死に頭を振っていやいやをしている。
なんだろう? 菜帆ちゃんの部屋に行ってはいけないのかな?
しかし、菜帆ちゃんの部屋には興味がある。
どうせまどかは十字架から逃げられないんだし、ちょっと菜帆ちゃんの部屋に遊びに行ってみよう!
僕は、菜帆ちゃんの部屋のドアを開けた。
絶句した。
僕は、菜帆ちゃんの部屋には遊びに行ったことがない。だから、菜帆ちゃんの部屋がどんな部屋なのかは知らないのだが、今目の前にあるのは、がらーんとしたコンクリートの、まるで地下室のような部屋だった。
そこに、菜帆ちゃんがいた。菜帆ちゃんは、正座しているようだった。
“しているようだった”、そう書いた理由は、菜帆ちゃんの姿勢が確かに正座しているようだったからである。
実際はもっと複雑である。
まどかと同じ女囚着を着ている菜帆ちゃんの膝の上には、分厚い石の板が何枚も乗っていて、両手は後手に縛られている。
な、なんで菜帆ちゃんまで、こんな目に遭っているんだ・・・・。
菜帆ちゃんの石抱き責めは、これだけではない。なんと、菜帆ちゃんは十露盤板の上に乗せられているのである。
膝の上の石板と脛の下の十露盤板に挟まれ、菜帆ちゃんの脚は悲鳴を上げている。
菜帆ちゃんの顔を見ると、竹の節の轡を噛ませられている。
僕の存在には気付いていないのか、正面を見たまま泣いているようだ。
なんだか僕まで泣きそうになる。
とりあえず、この可哀想な菜帆ちゃんを助ける前に、くまなく見て脳裏に焼き付けておこう。
デジカメで撮影するのが一番だと思ったが、残念なことに今はデジカメを持っていない。この部屋を出ると二度と戻って来られない気がしたので、デジカメを取りに行くのは諦めた。
菜帆ちゃんの後ろに回り込んで、足の裏を楽しむ。
むむっ、足の親指が縛られていない!
すかさずポケットに手を突っ込むと、ちょうどよい長さの凧糸が出てきた。
僕は凧糸で、菜帆ちゃんの両足の親指を揃えて括る。
「んぐぅっ!?」
やっと菜帆ちゃんは、僕の存在に気付いたようだ。
縛られた足の指を動かして、凧糸から逃れようとしている。
ふふふ、しっかりと縛ったから、解けないよ。
ところで、菜帆ちゃん、助けてほしい?
「ふんむ~・・・ん~ん・・・・」
おや? 軽く拒否されている気がする。
痛くないの?
「ふむ~・・・いふぁいえふ~」
だよね、痛いよね。それでも健気に耐えている菜帆ちゃん。おりこうさんである。
ふと顔を上げると、「由香のへや♪」と書かれたプレートのかかったドアが目に入ってきた。
次は由香ちゃんか・・・。
僕は石抱き責めに喘ぐ菜帆ちゃんをそのままにして、由香のへや♪のドアノブに手を掛けた。
つづく
2017/10/27 体裁を整えました。




