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第三話 裸足で正座でリベンジ!


 まどかは、今年の春に中学生になったばかりだ。

 昨今の食事情というのもは日本人の子供の発育に好条件なのかしら、まどかはなかなかにスタイルが良い。華奢(きゃしゃ)というほど痩せてはおらず、かといってポッチャリにもほど遠い。

 そして肌はかなりの色白、しかも黒髪ロング(ロングより若干短いが)。

 実の妹ながら、こんなに完成度が高くて良いのだろうかとたまに思い詰めてみるのだが、妹が欲しいのに妹がいない友人からしたら、実にあほらしい悩みなんだそうな。


 そんなまどかは今、隣の自分の部屋でお着換え中である。

 いよいよ「裸足で正座」の動画を撮影するにあたり、衣装の指示をしておいた。上はTシャツ。まあ、柄は何でもいい。下はホットパンツ。さすがに今のまどかにはまだ色香なんてものは滲ませることは不可能だろうが、正座によって強調される太ももを余すところなくカメラに収めるには、ホットパンツが最適だと考えた。


 動画の始まりから終わりまでの流れ・演出についても僕がきちんと脚本を書いて、まどかに渡してある。それを読んだまどかから、いくつかの演出について「こんなの必要なの?」という質問を頂戴したが、もちろん必要なのである。

 例えば正座をした時にカメラでまどかの周りを一周する演出。

 正座しているときの足の裏のアップ。

 正座する前後の足の裏の状態を見るときのポーズなど。

 脚本には、すべて細かく指示を書いておいた。

 それらをまどかがうまく表現し、僕がカメラに見事収めることができれば、最高の動画になると思っている。


 コンコン! とノックが鳴り、まどかが入ってきた。


「着替えたよ・・・」


 なぜかテンション低めのまどか。

 猫の絵が描かれた白いTシャツにホットパンツを履いている。

 おお・・・スラリとした白い足は、裸足だった。

 いや・・・綺麗だ・・・思わず見とれてしまう。


「ちょっと・・・あんまり見ないでっ」

「おま・・・いまさら恥ずかしがってるのか?」

「当たり前でしょ! これから足を撮影されるんだから!」

「やれやれ・・・再生数を上げたいのか、上げたくないのか、分からんな」

「上げたいに決まってるでしょ!」

「そうか、じゃあ始めるぞ。まず、靴下を履いてこい」

「え? 裸足を撮るんじゃないの?」


 脚本にちゃんと書いたのに、もう忘れたのか。

 初めから裸足よりも、最初は靴下を履いていて、途中で靴下を脱ぐ方が萌えるんだよ。

 そう伝えると、「めんどくさい」とか言いながらまどかは自室へ戻り、白いハイソックスを履いて戻ってきた。

 ほお、白いハイソックス、いいじゃないか。


 部屋の一角の家具を退けて、そこにまどかを立たせる。

 カメラは動画も撮影できるデジカメを2台用意した。1台は僕が手に持ち、まどかを様々な角度から撮影するメインカメラ。もう1台は、まどかの足元を常に撮影するように床に直接置く固定カメラとする。


「じゃあまずは自己紹介と、動画の説明部分からな」

「あ、待って。マスク忘れてた」


 マスクをして戻ってきたまどかが再び立つ。

 さあ、撮影を始めよう。


 両手を開いて軽く振りながら挨拶。


「はいっ、こんにちわ! マ・マドっ子まどりんで~す・・・」


 なんだ、声が小さくなってしまった。そんなにその名前が恥ずかしいのか?

 カメラの枠の中でまどかは、もじもじとしている。

 まあ、これはこれで可愛いから、このまま撮影を続行しよう。

 床のカメラは、まどかの白いハイソックスを写している。


「えと、今日は・・・前回の『裸足で正座をしたら足の裏がどうなるか』の動画が・・・その・・・あんまりよく出来てなかったので、作り直したいと思います・・・」


 動画を作り直すことに少なからず屈辱を感じているようだ。

 大丈夫、今度はいいものに仕上がるさ。


「じゃあ、裸足になります///////」


 左足で立ったまま右足を軽く上げ、ソックスの爪先部分を右手でつまみ、そのまま外側に引っ張って脱ぐ。白い素足を床にペタンと下ろし、左足のソックスも同じように脱ぐ。

 まどかの足は、指が長く甲は低く幅は狭い。親指よりも人差し指がわずかに長い「ギリシャ型」である。


 次は足の裏の状態の確認だ。

 ポーズは脚本で、足の裏がよく見えるようなのを指示してある。


「ぇえと、足の裏の・・・状態を・・・////////」


 後ろを向くまどか。

 そのまま両膝を床に着き、両足を揃えて足の裏をこちらに見せる。よしよし、指示通りのポーズである。僕はカメラを構えたまま、まどかの足に寄っていく。


「ぅぅ・・・足の裏は・・・こんな感じです・・・////////」


 驚くほど明度の高い足の裏である。

 一点の曇りもないその足の裏に、カメラ越しにしばし見惚れてしまうほどだ。

 恥ずかしさのためか、たまに足指をキュッと閉じるのがまた可愛らしい。


「じゃあ、正座しますっ」


 いったん立ち上がったまどかは、こちらへ向き直り、正座をする。

 では、まどかの周りを一周しながら撮影しよう。

 まずは上からまどかを見下ろす視点で一周。まどかのお尻の下の足の裏は、ちょっとしか見えない。続いてまどかと同じ目線の高さで一周。まどかの緊張した視線が、カメラから逃げるように彷徨っている。

 足の裏は写ってはいるが、まだまだ本気ではない。次こそが本気なのである。

 床に這いつくばっての一周。もちろん、まどかの足の裏をアップで撮るためである。

 まどかの視線が若干怪訝そうな気がするが、良い動画を撮るためなのだからしょうがない。

 正座するときも、足の裏を重ねてはいけないと指示を出している。重ねてしまったら、せっかくの足の裏の見える範囲が少なくなってしまうから。


「タイマーで15分、セットしてスタートですっ」


 キッチンタイマーをスタートさせたまどかは、両手を膝の上に置いてまっすぐ正面を見据える。

 僕は足用カメラをまどかの斜め後ろに置き、まどかの足の裏が枠に納まるように調整する。

 メインカメラではまどかの全身が枠に納まりつつ足も映るように、まどかの横にポジション取りする。

 この15分間は、漫画を読んだり水を飲んだりしないように演出することにした。そのかわり、まどかに独り言を言ってもらうことにした。

 カメラを構えたまま、手で「独り言、どうぞ!」のサインを送る。


「あっ・・・えー・・・と・・・」


 どうやら、とくに何も考えずに来てしまったらしい。

 しょうがない、カンペを出すか。ノートに「足のサイズは?」と書いて、見せる。


「足のサイズ? えと、22.5だよ」


「もっと独り言っぽく!」とカンペ。


「あっ・・・まどりんの足のサイズは、22.5で~す」


 ぎこちない。

 まあいい、どんどん行こう。カンペ「好きな食べ物、飲み物」。


「まどりんの好きな食べ物は・・・どら焼き!」


 お前はネコ型ロボットか。


「飲み物はね~、トマトジュースが好きです!」


 知ってる。変なやつだなって、前から思ってた。


「あ、今日の夕ご飯はチキンカレーで~す」


 ほお、チキンカレーか、そりゃ楽しみだ。


 と、こんな感じで撮影をしていたら、15分が過ぎた。

 15分の間、まどかはお尻に当たる(かかと)が痛いのか、何度か位置をずらしていた。それもバッチリと足用カメラで撮れている。


 ピピピと鳴るキッチンタイマーを止めるまどか。


「はいっ、15分経ちました! 足の裏の状態を・・・きゃっ!」


 腰を上げたまどかは、突然爪先から膝下までを襲うしびれに驚き、派手に転ぶ。

 いいぞ! こういうハプニング的なのは、とてもオイシイ!

 まあ、脚本で大げさに転べと書いたが。

 だが、まどかの転び方は実に自然で、もっともらしい。


「あ・足がしびれる~~~~~っ」


 四つん這いになって必死に体勢を戻そうとするまどかは、見た目の痛々しさとホットパンツに裸足という衣装も相まって、なかなかのエロさを醸し出している。

 中学生も侮れんな・・・。

 今まどかの足裏をツンツンしたら、きっとすごい怒られる。

 やってみたいが、我慢しておこう。


 やっとで起き上がったまどかは、膝立ちのポーズで足の裏をこちらに向ける。


「あ・足の裏は・・・どうなっていますか・・・?////////」


 カメラでまどかの足の裏に近づき、じっくりと撮影する。

 ほんのりと紅く紅潮している足の裏。まだしびれているからか、もしくは恥ずかしさのためか、かすかに足が震えている。その素足を思わず抱きしめたくなるが、カメラを手放すわけにはいかない。


「そ、そんなに変わってないかな・・・?」


カンペ「まどかの顔みたいに、足の裏も赤くなってる」


「足の裏、赤くなってる!? は・恥ずかしいぃ~!」


 そして撮影は最終フェーズに入る。

 ヨロヨロと立ち上がったまどかは、カメラへと向き直る。


「はいっ、いかがでしたか? 満足していただけましたか?」


 お兄ちゃんは、満足だよ!


「またリクエストがありましたら、コメントくださいねぇ~、それでは、ばいばーい♪」


 胸元で両手を振って、動画の終わりを告げるマドっ子まどりん。

 これで撮影は無事終了した。

 あとは撮影した素材を編集し、適当にテロップなどを重ねてBooTubeにアップすれば終わりだ。たくさんの人に見てもらえることを願おう。

 まどか、お疲れさまでした!



つづく



2017/09/25 体裁を整えました。

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