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第二十三話 極楽の露天風呂


 山を覆うブナの森の中に建てられたどでかい旅館。

 バス停から歩いてきた僕たちは汗だくになっていたが、旅館の入り口をくぐった瞬間、肌に感じる上質な涼しさに体力が一気に回復した。

 温度だけではない、湿度も最適に保っているのだろう。


「いらっしゃいませ、フロントはあちらでございます」


 僕はフロントへ案内され、女子たちはロビーのソファへと案内される。

 フカフカの絨毯を歩くだけでもお金持ちになった気分になれる。

 フロントで宿泊メンバーの名前を確認したり、商店街から貰った宿泊証を提出していると、冷たいお茶が出てきた。

 まどかたちの方を見ると、あちらでもお茶を出されているようである。

 ああ、グレードの高い旅館って、やっぱり素晴らしいサービスなんだな、と感動した。

 由香ちゃんは濡れタオルを貰って足を綺麗にしている。バスに乗った時からこの旅館に到着するまで、ずっと裸足のまま歩いてきたのだ。そうとう汚れていたことだろう。

 しまった、汚れたところを撮影しておくんだった。

 フロントで部屋の鍵をもらい、僕らは仲居さんに案内されながら部屋へと向かった。


 五人が泊まれる部屋ということで、かなり広い部屋だった。

 当然女子たちのテンションは上がりまくり。僕まではしゃぎ出しそうになってしまう。


「お兄さんがたは、どういう・・・ご関係なんです?」


 女子四人に男一人というハーレム状態に興味を持ったのか、仲居さんが訊いてきた。

 別に隠すようなことでもないので、僕とまどかが兄妹で、里帆と僕は幼馴染、菜帆ちゃんと由香ちゃんはまどかの友人と明かした。

 「ほぉ~ん」という顔をしながらお茶を淹れてくれた仲居さんは、「では、ごゆっくり」と言って部屋から出て行った。

 部屋に置いてあるテレビもテーブルも大きい。見晴らしの良い窓のそばには、これまた大きな衝立ついたてがある。

 窓から外を見ると、眼下に大きな川が流れていて、その向こう側は山の斜面になっている。実に温泉地らしい景色である。

 川のせせらぎがかすかに聞こえてきて心地よい。


  ググウゥ・・・・・


 せせらぎに交じって、お腹が鳴った。

 時刻は十四時を過ぎようとしている。僕らはまだお昼ご飯を食べていない。みんな、お腹が空いていた。

 テーブルの上には、旅館が用意してくれた温泉まんじゅうとクルミ柚餅子(ゆべし)が人数分、置いてある。

 お茶とお茶菓子は、あっという間になくなった。


「夕飯はバイキングだって! それまでお風呂入ろうよ!」


 まどかの一言で、菜帆ちゃんと由香ちゃんが動き出す。


「あ、まどかちゃんたち先に行ってて。私もあとから行くから」


 里帆の言葉に「はーい」と返事をしてまどかたち三人は、部屋を出て行った。

 部屋には僕と、里帆の二人だけが残った。

 旅館、宿泊施設に、里帆と、二人・・・・!


「里帆・・・ついに、二人きりになれたね・・・」

「なに雰囲気作ろうとしてるのよ。はい、靴下脱ぐから嗅いでみて」


 ・・・・・・。

 もう少しムードというものを大事にできないだろうか。

 里帆は座り込むと、無造作に靴下を脱いでこちらに素足を投げ出す。

 ど・どうすればいいのだ。這いつくばって里帆の足の匂いを嗅いでいいのだろうか。

 しかし、それもなんか屈辱的だな・・・這いつくばっているところをまどかに見られたら、兄の威厳は消滅してしまうかもしれない。

 ここは里帆に協力してもらおう。


「足を挙げて」

「はい、どうぞ」


 里帆が右足を挙げてくれた。

 両手で足首と(かかと)を持ち、鼻先を近づけた瞬間、(かぐわ)しい匂いが鼻を突く。

 これは・・・っ。

 途中で足湯に入ったとはいえ、長時間スニーカーに包まれていた素足。

 結構強烈な匂いである。だが「(にお)い」ではない。「(にお)い」だ。美人の里帆の素足とは思えないほどの強烈さだが、けっして(くさ)くはない。

 むしろ、いつまでも嗅いでいたい匂いだ。


「左足もいいかな・・・」

「同じ匂いだと思うけどなぁ・・・はい、よいしょ」


 右足を下ろし、左足を挙げてくれる里帆。

 うむ、確かに同じ匂いではある。

 調子に乗った僕は、里帆の左足の親指と人差し指を広げてみた。指の股の匂いを嗅いでみたかったのだ。


「きゃあっ! 何するのっ!!!」

「えっ?」


 左足のキックを顔面に喰らわされ、とても痛い。

 な、何かいけないことでもしたのだろうか・・・。


「スケベっ」


 足の指の股を広げることは、やっちゃいけないことだったんだ・・・。

 しょんぼりしているうちに里帆は立ち上がり、大浴場へ行く準備を始める。


「早く足洗いたいもん。行きましょ」


 里帆と二人で部屋を出る。

 なんだか新婚旅行にでも来たような気分だ。

 里帆は部屋に用意されていた「雪駄(せった)」を素足に履いて来ている。

 旅館内はこの雪駄を履いて自由に散策してよいのだ。

 まどかたちも、雪駄を履いて大浴場に行ったと思われる。


「じゃ、またあとでね」


 里帆は、女湯の暖簾(のれん)をくぐって行ってしまった。

 僕は、一人になってしまった。

 ふー・・・だよな、当たり前だよな。よし、温泉を楽しもう。

 僕は、男湯の暖簾をくぐった。


 目の前に広がる湯舟。広い。泳げそうだ。しかし大人なので、泳いだりはしない。

 洗い場も何か所も設置されている。誰もいないようだ。まさに貸し切り状態。

 まず、何が起きてもいいように体を念入りに洗った。

 よし、身も心も綺麗になった。僕は湯舟に体を沈めた。


「かーーーーーーっ!!」


 長旅で疲れた体に、熱い湯が染み渡る。

 広いから、手足を伸ばして入れるのが嬉しい。家のお風呂ではここまでノビノビとは出来ない。

 「極楽」という言葉が脳裏に浮かぶ。

 露天風呂に出られるドアを見つけた僕は、股間をタオルで隠しながらいそいそと露天風呂へと向かう。

 天井が無くなり、青空が見える露天風呂。

 周りには木々が生い茂っている。そして旅館の横を流れる川の音がダイレクトに聞こえる。

 この開放感は半端ない。

 この露天風呂エリアには、広い湯舟がひとつと、お椀風呂が三つある。

 まずは広い方の湯舟で、この大自然を満喫しよう。

 湯船の横にはずいぶんと高い壁がある。

 竹を隙間なく組み合わせて作られた壁の向こうはどうなっているのかと思っていたら、まどかたちの声が聞こえてきた。

 どうやら女湯と隣り合わせになっているらしい。

 キャッキャッ♪と楽しそうな声が届く。

 こちらは僕以外に入浴している男はいない。

 女湯がちょっと羨ましい。こんど章雄と旅行にでも来ようかな・・・。

 そして僕はお椀風呂へ移り、このあとどうやって女子たちの素足と遊ぼうか、考えることにした。



つづく



2017/10/27 体裁を整えました。

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