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第十九話 里帆の野外撮影(前編)


 少し汗ばむくらいの気温の中、僕と里帆は小学校の裏山にやってきた。

 昔と少しも変わっていない裏山だ。南側には、僕たちが昔通っていた小学校が見える。

 今日は休日なので、校庭に子供の姿はない。


「懐かしいな」

「そうね、昔と変わらず静かだね、ここ」


 まもなく来る初夏になれば、ここもセミの鳴き声でうるさくなるだろう。今は嵐の前の静けさのようだ。

 裏山には舗道はなく、獣道(けものみち)しかない。藤山公園の森と似ているな。

 何か施設があるわけでもなく、森に包まれた小高い丘というだけの場所なので、よっぽどの暇人でもなければここを訪れることもないだろう。

 背中のリュックに入れて持ってきた百科事典五冊が重い。疲れてヘロヘロになる前に、ここをスタート地点にして撮影を始めよう。


「じゃあ、始めようか!」

「うん・・・」


 お互いに緊張がはしる。

 里帆は突っ立ったまま、ピクリとも動かなくなってしまった。しょうがない、僕がリードせねば。


「スニーカーを脱いで」

「う・うん」


 紐も解かずにスニーカーを脱ぐ里帆。

 脱ぎたての白い素足で土の上に立ち、足の裏の感触を楽しむかのようにその場で足踏みをする。


「今日晴れてて良かった・・・」

「うん?」

「まどかちゃん、雨の中歩かされて可哀想だった・・・」


 まどかの野外撮影のときは、途中から大雨が降ってきた。

 今日は晴れているので、まどかみたいにびしょ濡れにはならないだろうが、これから行う撮影内容の方がはるかに過酷なものになるはずなのに。里帆は優しい、とくにまどかに対しては。


「雨降ったら足の裏ドロドロになっちゃうよね////」


 降らなくても十分汚れると思うけどね。


「じゃあ、指を縛るので手を後ろに回して」

「なんか・・・変態っぽいね♪」


 嬉しそうにそんなことを言う里帆は、まごうことなき変態さん。

 後ろに回された里帆の両手の親指を結束バンドで縛る。これで里帆の準備は完了。

 僕はデジカメを取り出し、電源を入れた。

 里帆の全身を爪先から頭のてっぺんまで、文字通り舐めるように撮る。

 当たり前だが、中学一年のまどかより女子大生(!)である里帆の方がスタイルがいい。

 ホットパンツからスラリと伸びる脚は、肌がきめ細かくまるで天女の羽衣のようだ。天女見たことないけど。

 両手を後ろに回しているので、胸が前に強調されるように出ている。

 里帆の胸は大きくはないが、小さくもない。言ってみれば“ちょうどよい”加減である。


「ちょっと・・・恥ずかしいかな・・・////」


 ちょっとなのか・・・。

 里帆は体をくねらせてカメラの視線から逃れようとする。しかし、僕は里帆の眩しい体を微塵も逃さずカメラで撮影していく。


「まどむ、ほんとこういうの好きね・・・////」


 ああ、好きだとも、好きだとも!

 さあ、歩くのだ、裸足の里帆よ!


「歩き始めよう、後ろから撮ってます」

「はい////」


 一歩を踏み出す里帆。その後ろからカメラで里帆の足を追う。

 木々の葉の匂いが、僕たち二人を包み込む。


「あ、待って。足の裏を見せて」

「え? うん」


 里帆はその場に膝を着き、両足を揃える。

 こちらが指示を出さなくても嬉しいポーズで足裏を見せてくれる里帆は、やはり男心を理解している。

 僕は里帆の足裏に近づき、アップで撮る。土が少し付いているくらいで、まだほとんど汚れてはいない。

 これからこの素足が汚れていくのか・・・楽しみである。


「よし! 歩こう!」

「うん!」


 しばらく歩くと、木々が開けている場所に出た。

 そこは地面が土ではなく、砂利が敷き詰められている広場だった。


「砂利の上を歩いてみよう」

「え・・・痛そうなんですけど・・・」


 まあ、痛いだろうね。まどかがギブアップしたくらいだし。

 でも大丈夫! 里帆は大学生だから、耐えられるはず。


「うう・・・」


 里帆が恐る恐る砂利の上に足を下ろすと、小さな石が一斉に足の裏に突き刺さる。

 まどかよりも体重が重いのだから、その分ダメージも大きいのだろう。

 土の地面のように平坦ではないので、砂利の上で里帆の素足は歪んでしまう。


「ううう~」


 しかめっ面で立ち尽くす里帆だが、それでは撮影していて面白くない。

 「歩いて」と言っても、なかなか次の一歩が出ない。

 それでは、と僕はいったんカメラを置いて砂利を両手で掬うと、里帆の足に向かってそれを投げつけた。


「いっ、痛い痛い! 何するのよ!」

「はっはっは! 歩かないとどんどん投げるぞ~」

「ひとでなしっ」


 今時「ひとでなし」とは・・・古風な罵声を浴びせられたものだ。

 しかし、里帆は健気にも砂利の上を歩こうとする。一歩を踏み出すたびに、足の裏に幾千もの痛みが走る。その度に里帆が悩ましい声を発するのが楽しい。

 僕もまぎれもなく変態だな。


 「もう無理!」と言って、里帆は砂利地帯を抜け出てしまった。

 まあ、十分に撮影できたから、砂利責めは終了としよう。

 そして、里帆の足の裏の状態が気になる。


「足の裏? また見るの?////」


 何度でも見たいです、はい。

 ブツブツ言いながら里帆は土の上に膝を着き、足の裏をこちらに見せてくれる。

 砂利に苛まれた足の裏は、何か所も凹んでいてボコボコだ。

 きれいな里帆の足の裏が、実に可哀想な状態になっているのは、なんとも興奮する。


「痛かった?」

「痛かったわよ!」


 当然の答えが返ってきた。

 砂利って、裸足で立つとそんなに痛いのか・・・。

 まどかよりは耐えてくれた。さすがは大学生。中学生よりもヒットポイントが高いんだな。

 さて、次は石抱きお灸責めをしよう、と場所を探しながら歩いていると、面白いものを見つけてしまった。

 ブロック塀用のコンクリートブロックが、無造作に積み上げられている。

 どう見ても使うために置いてあるようには見えない。不法投棄だろうか。

 僕は、恐ろしいことを思い付いてしまった。

 これを里帆に言ったら、嫌われてしまうかも知れない。

 しかし、どうしてもそれを実行してみたい。背中に背負っている百科事典五冊が無駄になったとしても、やってみたいんだ!


「ねえ、良い石があるね」

「石って・・・それ、コンクリートのブロックじゃない」

「コンクリートだって、見ようによっては石だよ!」

「な・なによ・・・それをあたしの膝に乗せたいの?」


 ご名答、察しの良い女性でありがたい。


「もうっ、まどむにしかさせてあげないんだからねっ!」


 里帆の言葉が僕のハートを貫いた。

 僕の人生、今日以降に里帆ほど僕のことを理解してくれる女性には会える気がしない。

 里帆の気が変わらないうちに、ブロックで石抱き責めをやらせていただこう。



つづく



2017/10/16 体裁を整えました。

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