第十三話 裸足のJC
時刻は夕方の5時近く。
僕の部屋に百科事典を持ってきたまどか。
「お、重いぃ~・・・持ってきたよぉ・・・」
現在のまどかの恰好は、タンクトップに短パン、そして素足。
完全な部屋着である。
「い、石抱き責めの刑って、どんななの・・・?」
僕のゲームのセーブデータを消してしまったまどかは、石抱き責めの刑を受けることになっていた。
石抱き責めについて調べてみたが、使用する石の大きさについては「尺」や「寸」等の単位で説明されていて、正直よく分からなかった。
もっとも、サイズが分かったところで手ごろな石が入手出来るとも思えない。
そこで思い付いたのが、百科事典を使う方法である。
本日より我が家で行う石抱き責めの刑は、百科事典を使うこととしよう。
「石抱き責めの刑とは、正座した膝の上に重ーい石の板を乗せることだよ」
「え・・・ええ~・・・引くぅ・・・」
「僕のセーブデータを消したのは、誰だっけ?」
「はぅ・・・あたしです・・・」
素直に自分の非を認めるのは、おりこうさんの証拠。
では、百科事典はこちらに置いて、そこに正座をしなさい。
「はい・・・お手柔らかに・・・」
なかなか奥ゆかしい言葉を知っているな、まどかは。
だがしかし、お兄ちゃんは甘くないぞ。
フローリングの床に直に正座で座るまどかの白い膝上に、百科事典を一冊、そっと乗せた。
この百科事典は、僕が小学生の頃にはすでに我が家にあった。昔は何度か開いて眺めたりしたこともあったが、最近はその存在すら忘れていたほどである。
まさか、こんな使い方をされるとは百科事典本人(本本?)も思ってはいまい。
「どうだ、重いか?」
「え? うーん・・・一冊じゃそれほど重くは・・・」
そうか、まだ全然耐えられるというのだな。
では、もう二冊乗せてみよう。
僕は百科事典をさらに二冊、まどかの膝に乗せた。合計三冊になった。
「はぐゎ・・・はぅ・・・・っ!」
「おっ! つらい? どう?」
まどかの息遣いが荒くなってきた。
膝の上の百科事典が、ユラユラと揺れている。女の子の膝は、柔らかい。それが如実に分かる現象と言える。
だが、まだ乗せられそうな感じだ。
調子に乗った僕は、もう二冊の辞典を、まどかの膝に乗せた。
「無理無理むり無理ムリっ!!!!!」
合計五冊の百科事典。
一冊の重さが1キロだとすると、5キロの石を乗せているようなものである。
「あああーーーーっ! 膝がぁーーー!」
まどかが大げさに叫んでいる。
いや、ホントに痛いのかな?
「重いぃぃ~・・・重い・・・おも・・・」
膝が重さに慣れてきたのか、徐々に落ち着きを取り戻すまどか。
うーむ・・・見ていて面白くない。
そうだ!
この三角定規で、足の裏を突っついてみよう!
相変わらずろくな思い付きをしない僕であるが、かまわず三角定規を持ってまどかの背後に回り込む。
「な、なに・・・?」
ふっふっふ・・・えいっ!
三角定規の尖った角で、まどかの足裏をツンツンした。
「あっひゃっ!! やっ、やめてっ! 痛い・・・っ! くすぐ・・・ったい~っ!」
笑いながら痛みに悶えるまどかが可愛くて、ついついツンツンする速度を上げてしまう。
膝の百科事典はグラグラと揺れ、ついにはまどかの膝から崩れ落ちてしまった。
はたと我に返る僕とまどか。
僕は黙ったまま百科事典を拾い上げ、まどかの膝に再び乗せた。
「また乗せるんかいっ!」
こうして楽しいお仕置きは、夕飯の時間まで続いた。
ずーっと正座していたまどかは、まともに立つことが出来なくなるほど足が痺れたようだ。
今夜、足マッサージでもしてあげようかな。
翌日――。
この日は大学の講義が午前中だけだったので、午後はリビングでゴロゴロ過ごしていた。
昨夜、まどかの足をマッサージしてあげようと言ったら、やんわりと断られた。
マッサージ、してあげたかったな・・・。
ほどなくして、まどかが学校から帰ってきた。
「ただいま~」
ガチャリ
リビングの扉を開け入ってきたのは、まどか・・・ではない!?
「あっ、お兄ちゃん、ただいまっ♪」
まどかと同じ制服を着ているその少女はいきなり、僕に抱きついてきた。
なななっ、なっ!!??
明らかにまどかよりも髪が短いし、まどかの黒髪よりも茶色い髪だ。
「だ、誰だっ!?」
「ええ~、まどかだよ~?」
そんなバカなっ。
まどかが僕に抱きついてきたのは、小学校低学年までのこと。以来、めっきり抱きついてくれなくなってしまった・・・(さみしい)。
そのまどかが学校から帰ってくるなり僕に抱きつくなんて、ありえないことだ。
まさか、どこかで僕をモニタリングしているのか・・・?
本物のまどかと入れ替わった偽妹を目の前にして狼狽える僕を監視して、どこかで笑っているのではあるまいな!
隠しカメラがないかとリビングを見回すが、所詮素人である僕には、見つけることが出来ない。
僕は偽まどかを突き放すと、距離をとって再確認をする。
ふむ、顔はまどかとは違う。似てもいないが、可愛い。
顔カテゴリ的に言うと、「元気っ子」タイプだ。
制服はまどかのものと同じだが、よく見ると靴下を履かずに裸足である!
な・なんで裸足なんだよ・・・可愛いじゃねぇか・・・////
「お兄ちゃん、私まどかだよ?」
“お兄ちゃん”って呼んでくれるのも、地味に嬉しい。
よく考えたら、この子はまどかなのかも知れない。
見た目はちょっといつもと違うけど、それはそれで新鮮であるし。
「お・おかえり、まどか」
「えへへ、ただいま!」
その瞬間、リビングの扉がバァンッ!と開いて、見覚えのある女の子が入ってきた。
「アニーのバカァッ!!」
あ、まどかだ。
本物のまどかが入ってきた。
やっぱり目の前の少女は、まどかではなかったようだ。
「由香ちゃん、もうやめようよ!」
「あーあ、もう入ってきちゃったのか~」
つまり、どういうことだってばよ?
まどかの説明を聞くと、この子はまどかの友達で「由香ちゃん」という。
今日はうちに遊びに来たのだが、面白いから僕を騙してみようということになったらしい。
ふ、そんなことで、この僕が騙されるわけがない。
「さっき「おかえり、まどか」って言ってたよね!?」
本物のまどかからツッコミが入った。
細かいことを指摘する妹だ。
しかし由香ちゃんは、どうして裸足なのだ。
普通、制服というのは靴下がセットになっているのでは。
「私、靴下あんまり履かないんだ~」
ほお、ということは、いつも裸足なの?
学校に行くときも履かないの?
「うん、そうだよ♪」
なるほど、まどかよ、良い子とお友達になったね(歓喜)。
ニコニコしている僕を後目に、まどかと由香ちゃんは二階の部屋へと上がっていった。
ふむふむ、菜帆ちゃんといい由香ちゃんといい、素直に裸足になってくれる子を連れてきてくれて、お兄ちゃんは嬉しい!
それでは、由香ちゃんも交えて楽しい動画を撮影できないか、考えるとしよう。
つづく
2017/10/16 体裁を整えました。