彼女の彼への思い 理由
私は人ではない。
人に迫るが、それでも人ではない。
主がそう判決を下した、アンドロイド。
主は私を労わってくれる。
主は私を大切にしてくれる。
主は私を傍に置いていてくれる。
だが、私は、主が望んだものではない。
そのことが分かってしまった。
最後の仕事。
請けてしまった。
それが主の最後の声となると私は実感したから。
心拍は弱り、瞳は濁り。
停止の症候が露わになっていたのだから。
本当は請けたくはなかった。
だが、請けざるを得なかった。
私は、主がいなくなった後の世界で生きていたくはなかった。
私はアンドロイド。
意志あるように振舞うが、所詮はまやかし。
主が教えてくれた数々の人としての知識。
そして、紡いだ擬似的な感情。
だが、不完全なのだ。
あの都市でそれを知ってしまった。
私は自身が虚ろだと、主の願いに至らぬものだと自覚してしまった。
だから、請けたくなかった。
それは私に務まる仕事ではない。
だが、同時に知りたかった。
なぜ主が私に託したのか。
なぜ私は、あの都市から主の前へ戻ってきてしまったのか。
私の、人擬きとしての、だが、私だけの答え。
それを出してみたかった。
主のように、感情を持っているかもしれないと、信じたかった。
全てを確かめるため、請けた仕事を私は為す。
だが、忘れよう。
あの都市で気づいたこと。
それを忘却し、今一度挑戦してみよう。
心折れる前に戻って、やり直すのだ。
たとえそれが無為に終わろうとも。
それでも私は構わない。
これは誰にも明かすつもりはない。
たとえ主であろうとも。
未来永劫。




