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唯佇むものたち  作者: 鯣 肴
種明かし

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8/10

彼の彼女への想い 懺悔

 自身の心の内は自身しか知らない。

 未来永劫。






 私は彼女を創った。

 望みを繋げるために。

 だが、彼女は私の望むものではなかった。


 捨てようと思った。

 あの冬を再現し、かつての人類の文明を再現した都市で、彼女を。

 だが、言えなかった。


 お前はもう要らない。

 そう言えばいいだけだった。

 そうすることで彼女は朽ち果てる。


 そうなるように造った。

 だが、私にはできなかった。

 彼女がとても儚げに見えたから。


 その一瞬。

 私が手放そうとしたその瞬間。

 その一時だけ、彼女は私の望んだものであるかのように、幻覚を見た。


 私はそして、諦めた。

 私には、彼女を放棄することも、人にすることもできない。


 悩んで狂ったのだ、私は。

 あの都市に降り注ぐ雪擬き。

 それは、灰。

 かつて死の灰とよばれた、終わりを齎すもの。


 私は都市を建造し始めて気づいた。

 それがここへ近づいてきて、降り注ぎ始めたことを。

 彼女が危険を報せた。

 だが、私は彼女の警告を切った。


 何かに憑かれたように当時の私はそれを建造していた。

 私に遺された時間は少ないことに気づいていたから。


 目的を果たすためには必要だった。

 その都市が。


 命を縮めてまで行った行為は無駄だった。

 成した都市を彼女と回って、気づいてしまった。


 以後、私は古城に篭った。

 何もやる気が起こらなかった。

 そこに彼女が戻ってきて、罪悪感からか、彼女に仕事をしきりに与え続けた。


 そして、いよいよ死を背後に感じ始めた頃、気づいたのだ。

 彼女は、私の願いそのものではないが、望みは繋いでくれるのではないか、と。


 人類復興は無理だろう。

 だが、人類が存在した証を彼女が遺してくれるのではないかと。

 彼女自身が証となってくれるのではないかと。


 もしかして、奇蹟が起こって、彼女が私の望みの通り、人に到達してくれれば。

 そうなれば、人類復興に私を継いで取り組んでくれるかもしれない。


 私はなんと愚かなのだろうか。

 彼女は、所詮、永久の寿命を持つ機械だ。

 生物ではない。


 ここでは、地下の装置で彼女のパーツを自足できる。

 彼女自身も、パーツを作る設備から、パーツの素材まで自給自足できる。

 自身で自身を治せるように私は創った。


 ああ、それが過ちだったのだ。

 彼女には時間が無制限にある。

 それは決して人ではない。


 彼女には終わりへの恐怖が無い。

 ともあれば、何も生み出せはしない。

 遺せはしても。


 そして、私は思いついた。

 彼女の寿命を有限にしつつ、私の意図を汲んでもらう。

 そのための計画を立てた私は、まだそれを伝えられなかった。

 怖かった。


 絶望が怖かった。

 たとえ、自身の命があと僅かであろうとうも。


 そして、私は、最後の最後で勇気を持って踏み出した。

 彼女に何とか最後の仕事を託し、受け入れてもらえた。


 あとは、もはや、待つことしかできない。

 そして、私はその顛末を知ることはできない。

 だが、それでもいいのだ。


 僅かでも希望を残して消えていけるのだから。

 私一人が残された意味をようやく作り出せたのかもしれない。

 そう思って消えていけるのだから。


 悔いるべきは、彼女を騙し、謝ることすらもう許されないこと。

 私は自分勝手に彼女を造り、彼女に何もしてやれなかったのだから。


 名ぐらい授けてやるべきだったかもしれない。

 だが、今更それはあまりに罪作りだ。

 

 だがら、すまないが、後は任せた。

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