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唯佇むものたち  作者: 鯣 肴
種明かし

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10/10

余話 伝達における差異

 記録を残した者と、それを読み解く者の間には少なからず認識に差異が生じる。それは時には齟齬そごとなったり、矛盾を感じさせたりする。






【プロローグ 最後の仕事】


 島の中央付近、春と夏の境界付近。

 僅かな雲に覆われた晴れ空。

 暑くも寒くもない気候。

 だが、鳥の囀りも蝶の飛翔も一切無い。






 残された記録。

 いつの頃のものかは不明。


 四季が同時に存在する広大な島。

 その大きさを測る尺度は存在せず、ただ広大であることしかいえない。


 自然は残るが、植物以外の生物の存在を一切感じることはできない。






【第一章 春の庭園 意味を失おうとも咲き誇る花々】


 島の東。

 主の居城。

 永遠の春の陽気の花の園。


 影なく光が降り注ぐ。

 生命力溢れる暖色の花々の群れ。


 だが共にあるべき小さきものたちは存在せず。

 もはやその姿を愛でるものも存在しない。






 古城の庭。

 明るい世界。

 常春の世界。

 しかし、どこか寂しい世界。


 一面に広がる、花咲く草木と樹木の園。

 だが、それを作り出して維持し続けるものも、それを見るものも、もはやいない。






【第二章 夏の潮風 色褪せぬ、色褪せた海岸】


 島の南。

 青い空の色を移した巨大な水面。


 それは白い塵のような砂浜。

 響くのは波の音のみ。

 幻想的で美しい風景。


 だが、どこか廃退的で、虚ろ。

 何もそこには居ないのだから。






 透き通った水と白い粉でできた海辺。

 生命溢れるはずのその場所には波以外存在感を示すものはない。


 美しい、だがそれだけ。

 虚ろなのだから。

 自然という現象がただそこに佇む。







【第三章 秋の樹林 寒色熟枯絨毯】


 島の西。

 背の高い樹木の並ぶ場所。


 足元には、赤、黄色、茶色、の順で多くなっていく無数の木の葉。

 赤は黄色に。黄色は茶色に。茶色は茶色のまま。

 そうして、消えることなく、ただ積み重なり続ける木の葉。


 永遠とわの秋。

 厚みを増す枯葉の絨毯。

 せめて記録によって意味を持たんことを。






 成熟直後から枯朽の寸前まで。

 壮年から老年までの無数の葉。

 しかしそこには死は存在しない。

 

 止まり木から降り、積もった葉の絨毯は、無為に積もり続ける。

 それは歪な理に縛られた、弄られ、無為に佇むものたち。






【第四章 冬の墓標 白き灰降り注ぐ繁栄の残骸】


 島の北。

 雪の代用品、白き灰。

 それは街の様子を以前とは違うものに見せかけた。

 灰を払えば、そこにはかつてと同じ光景が広がっているのだから。


 かつて分からなかったことが分かった。

 分かりたくなかった。

 主が求めた形なきものの正体。

 しかし、気付けばもう引き返せはしない。






 再現された、伝統的と言われたある西洋のかつて町並み。

 城郭都市の名残を色濃く残した、旧い街。

 延々と降り注ぐ、白い灰。

 それは雪のように降り積もっていた。


 延々と続いた最長の記録。

 一見意味のない情報がしきりに散りばめられている。


 そこに何だかの意図が込められていることは間違いない。

 しかし、それが何なのかは微塵も感じ取れない。


 届きそうで届かない。

 どこまでも遠い。






 各部前半部分が記録を残した者の伝えたかった点。各部後半部分がそれを読み解いた者が重要に感じた点。齟齬が生じようと、双方共、それに気付くことはできない。


 遥か過去の映像と言葉、それと私たち。これは単方向の意志伝達なのだ。過去から現代への。よってこれはただの余話なのである。


 映像を見て、それを解釈。そして映像に添えられた言葉を確認して照合した結果、我々とかつての人類の間には明確な思考の差異があるようだ。


~遥か未来における見解~

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