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✞ 男女♡体針 ✞  作者: 自由なゆめゆめ
4/13

4話 田中と美少女

 「ただいま帰りました。」


 靴を脱いで家へと上がる。出迎えてくれるお袋。

 

 「おかえりなさいませ。遅いお戻りですね。お夕飯をお済ませあそばせ。」


 お袋はフランス人。日本文化に魅了され高校の時に留学してきたらしい。

 白人で金髪のお袋は、いつも着物を着て綺麗にしている。


 「洋一さん!その胸は何事です!はしたない!」


 ああ。そうだった。


 「慣れぬ服装で、粗相を致しました。」


 「以後、お気を付けあそばせ。」


 「はい。母上。」


 仮面優等生の俺は家族と過ごす時間が一番の苦痛だ。疲れる。。。

 テーブルに座った俺は、飯は食ったからいいが、スマホの事がある。

 ついでにもう一つの願いがあった。


 お袋の料理は和食一色。これが絶妙に美味い。


 目の前にご飯を置かれると箸を取った。


 「父上に母上に感謝致し、戴きます。」


 「ぞうぞ、召し上がれ。」


 少し箸を進ませると、口をひらく。


 「母上。私の今の持ち物は使用できません。取り急ぎスマートフォンの

  新規契約をお願いしたいのです。」


 「そうですわね。明日早々に手配致しましょう。」


 「感謝致します。それと、お弁当を二人分ご用意頂きたいのです。」


 「では、明日から用意致しましょう。」


 「重ねて感謝致します。」


 成績も良く、良い子にしてる俺の希望はほぼ通る。

 それに、かなり自由だ。


 「明日からですが、お父様から電報が届いてございますのでご確認あそばせ。」


 「はい。」


 2枚のFAX文章を受け取った。

 

 「その動物のお人形様と洋一さんがとてもお似合いですよ。

  とても素敵な淑女に見えますよ。」


 ラスカルと俺を交互にみる。

 

 「ありがとうございます。」


 女の姿を褒められてもなぁ。。。とは思ったが。


 「お風呂はご自由にお召し上がりあそばせ。」


 「では、先に戴きます。」


 茶碗のご飯を何とか食べて、礼を取って部屋へと戻った。

 ふぅ~~~疲れた。んで、FAXに目を通す。

 

 ふむふむ、名前は”シャール・フィオーレ”か。親父らしいネーミングだ。

 ブッ。外人の名前やんけ!!


 ふむふむ。母方の従妹扱いで交換留学か。

 めちゃくちゃ無難な設定だな。鏡を見て思うが、

 男時の面影が無きにしも非ず。だ。

 少し顔が似てても従妹なら問題ない。

 それに、急に女言葉も無理だ。ある意味ベストな御膳立てだ。

 んで、取り敢えず一ヶ月だけの編入扱いの様だ。


 早々に、着替えて風呂も済ませた。


 自分であり、自分で無い身体にめちゃくちゃ戸惑った。

 身体を洗うのに、いつもの3倍の時間を費やした。


 明日から学校か。。。2年になりクラスにもやっと馴染んできた所だったが。

 女としての目線では、今までの景色がどんな風に変わるのだろう。。。


 



 翌日。


 僕は、いつもと同じ様に教室へと入る。

 挨拶をする友人も居ない。無言で教室に入って無言で席に着く。

 昨日は楽しかった。スマホに貼ったプリクラを眺める。

 謎の美少女。言葉は乱暴で男みたいだけど、優しく美人で強い。

 そして、何よりも豊満で柔らかい胸。

 今思い出しても、うっとりする。まるで夢。昨日からプリクラの

 謎の美少女から目が離せない。


 「田中~。昨日の美少女は誰だ?」


 声を掛けて来たのは、不良グループの町田。

 今気付いたけど、教室がいつもより騒がしい。


 「ツイッター見た?」「見た見た!!すっげー爆乳美少女だろう?」

 「モデルとか、映画関係者らしいぞ?」

 「この動画すげぇ!!スカートの中も、胸も丸見えじゃん!!」


 クラス中、隠し撮りされて公開された美少女の噂一色だ。

 

 「昨日は初めて会っただけだし、名前も知らない。」


 僕の言葉に、周囲の視線が集まった。

 

 「これ・・・ここに写ってるのって田中だよな?」


 「あ。うん。」


 クラス中の男子が僕を囲む。


 「んで、誰??誰??」


 「良くは知らないけど。。交際を申し込まれた。」


 「「「「「「「えええ??!!それは無い!!」」」」」」


 誰も信用してくれない。僕も信じられないし。。


 「今日から、この学校に転校してくるよ。」


 「うぉぉぉ!!!まじか!!学校が楽しくなる!!」


 何度も何度もセクシー動画を繰り返し再生しながら、

 凄い盛り上がってる。美少女と最初に友達になった僕は、

 優越感でいっぱいになった。

 

 「しかし・・・キモオタ田中と美少女って・・・信じれるか?」

 「田中~男子にも女子にも相手にされないからって・・・

  もっとマシな嘘つけよ。」

 「鏡見てるのか?キモオタって事忘れてないか?」


 みんな・・・口々に言いたい放題言っている。

 何だか、僕も夢だった様な気がしてきた。プリクラを見ても

 現実感が無くなった。


 「田中のスマホに、美少女と一緒の写真あるぞ!!」

 「プリクラ撮っただけで、勘違いのストーカーしてんじゃねぇのか?」

 「田中とじゃ、美女とナメクジだ!」


 教室中に、笑い声が連鎖する。2年になって係決め以外で

 クラスメートと話した事すらない僕が、信じれない事になっている。


 ## きぃ~んこぉ~~んかぁ~~~~んこぉ~~~ん##


 チャイムが鳴った。

 でも、クラス中が美少女の話題に興奮してて、

 エンドレスで再生される動画。騒がしさは止まらない。


 「お~い。席に着け。出席を取る。お~~い。」


 いつの間にか担任教師が教壇に立っていた。やっと静けさを取り戻す。


 出席を取り終わった担任が、微妙な間をあけて、


 「このクラスに転校生が来た。入ってこい。」


 !!! プリクラの写真と入ってきた美少女を交互に見た。


 「うぉぉぉ!!謎の美少女降臨!!」「足ほっそっ!!」「美人!!」

 「可愛い!!」「天使だ!!」「乳でけえ!」「ロリ萌え爆乳!!」

 「外人だ!!外人!!」「ストレートロングがやべぇ!!」


 凄い事言ってる。それにこの熱気。コスプレの人気のお姉さんの

 ブースよりも熱気がある。アイドル以上だ。


 「静かにしろ!自己紹介できんだろう!!」 担任教師が怒鳴る。


 「シャール・フィオーレだ。よろしく。」


 クラス中が再び騒がしくなった。


 「うるさい!!自己紹介できなくて困ってるだろう!!」

  再び担任教師が怒鳴る。


 「えっと、嫌いな物は、虐めと常識ない人と政治家です。

  好きな物は、あいき・・ゲームです。」


 「日本語上手い!」「渋い!!」「天使萌え!!」

 「結婚して欲しい!!」「和製外人!!!」「付き合って!!」

 「エンジェルボイス!!」


 再び騒がしくなった。



・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・



 思った通り、俺の席に俺が座りそうだな。

 だが、一昨日までの景色とは全く違ってみえる。

 それに、見知った奴等に自己紹介ってどうよ。


 ふと教室に入る前に思ったのだが。男言葉では何かと・・・

 問題が出そうな気がする。

 頭を切り替えてみるか。。 俺は女だ。歌舞伎役者だ。

 俺は女だ。女形だ。と思う事にした。


 まっ。フランスからの交換留学設定だ。多少の言葉の

 不備は、「言葉がわかりません。」で解決しそうだ。

 

 しっかし・・・予想はしてたが・・・

 このクラスの男子は特にアイドル系が好きだよな。

 うざ過ぎる。頼むからアホ丸出しは止めてくれ。

 不良共もアホ丸出しだ。見た目通りに行動して欲しいものだ。

 昨日、俺が顎にパンチをねじ込んだ事も忘れたのか?と言いたい。

 

 ん?田中は照れくさそうだが、アホの中に入ってないな。

 それと後三人。アホに・・・なってない奴。


 山根と重富と、大和だ。この三人は俺と気が合って1年も同じクラスで、

 いつもつるんでる。めちゃくちゃのイケメン揃いだ。


 俺がつるむだけあって、アホでは無い事を再確認する。

 

 「シャールさん質問!!キモオタ田中が付き合ってるって

  言ってるけど、本当?」


 このクラスの一番のお調子者の吉田だ。蝙蝠ってか・・・

 あっちフラフラこっちフラフラで嫌いな奴だ。ほぼ話した事ない。


 「えっと、田中に交際を申し込んで返事待ちです。。

  断られたら再度申し込みます。」


 女言葉って意識すると難しいな。

 問題は、言ってる自分に吐き気がする事だ。

 親父、お袋に話すイメージで頑張ってみよう。


 「「「「「「ええええええええええええ。」」」」」」


 「信じられん。明日地球が爆発する!!」


 「信じて頂かなくても構いません。

  田中に交際を申し込んだのは事実です。」


 教室が静まり返る。まぁ。当然だな。

 

 「お弁当も田中君と二人分ここに。」


 「羨ましい!!!」「どうして田中なんだ!!!」


 叫び散らかす見知った男子。うるさい。。


 宇宙の中心で叫んでくれ。


 そもそも、俺が何をしょうがお前等に関係あるのか?


 騒がし過ぎる奴等に担任教師も呆れてる。


 「彼女は槇の従妹で短期交換留学だ。一ヶ月後には、槇が戻り

  彼女が帰る訳だ。短い間だが仲良くしろよ。

  槇の席が空いてるからいいな。」


 教室からブーイングがする。


 「槇は帰って来なくてもいい!!」

 

 皆が同意してる。。こらこら。。お前等。。。


 「あっ。テキストが無いので、今日は田中に見せてもらいます。

  田中の隣の席を空けて頂いてもいいでしょうか?」


 「だ、そうだ。空けてやれ。」


 横の奴は俺のグループの大和だ。こいつも気持ちの良い奴だ。

 気持ち良く譲ってくれた。流石は大和だ。


 騒がしくうざい奴等の間を抜けて、田中の隣に座った。

 冷たい視線が俺を突く。。男子は問題無いが、女子の嫉妬の視線。

 

 ・・・面倒になりそうな予感。その中に俺が片思いしてる本間美佳代の

 姿もあった。実はこの機会に、俺の事をどう思ってるかをリサーチ

 したかったのだ。  

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