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 八月二十三日。

 学校から自宅に帰った私の元に友人英子から一本の電話が掛かってきた。

 どうやら彼女は海外の大学に進学することを決めたらしかった。

「二十八日の十一時の飛行機で行くつもり。急なことでごめんね」

 恐れていたことが、ついに起こってしまった。その言葉を聞いた私は戦慄した。



  英子との出会いは中学二年の秋頃であった。道端に銀杏が落ちていて臭かったから間違いないだろう。

 真っ黒いセミロングの髪に茶色い縁の眼鏡、不自然な真新しい制服。今でも覚えている。

 何処とは言わないでおくが、外国から来たという彼女は最初全く日本語が話せなかった。

 私と周りの友人、教師、クラスメイトたちは身ぶり手振り、時に英語を交えながら彼女とコミュニケーションをとった。

 だが彼女の理解力はずば抜けていて、気がつくといつの間にか日常会話が成立していたときにはかなり驚いた。

 更には一年と経たない内に大体の日本語の読み書きをマスターしていた。六年も英語を習っているくせに一向に話せるようにならない私は英子に感心し、尊敬する一方で嫉妬の念も抱いた。(おまけに彼女は英語もペラペラだったのだ)

 そんな英子が自分の故郷へ帰ってしまうというのだ。

 自分の生まれた国へ帰るというのだ。

 私の数少ない友人の一人だったというのに。

 私はしばらくの間一人でネチネチと考えていたが、やがて思い立ってもう一人の友人、梨花の携帯に電話してみることにした。その日の夜のことであった。

 二秒と経たないうちに梨花は電話に出た。

 私は言った。


「英子を見送りに行こう」


 

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