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ユキバナ冒険記  作者: あきぐみ
第一章 新芽の冒険者
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少女、魔法を覚える

練習段階で書いたのでいろいろカオスかもしれません。

面倒なら1話からでもいいと思います。

「今日も一人ー明日も一人。一人ぼっちでらんらんらーん」


 小さな村。ラグロイド大陸の極東にある小さな島の小さな村。

 家も少なく、子供も二人しかいない……そんな小さな村に一人の少女が住んでいた。

 少女はまだ十三歳で、この村のたった二人しかいない子供のうちの二人だった。

 友達はいない。

 そのもう一人の子供と遊ぼうとしたこともあるのだが、家に引きこもっているらしくその子の両親に断られてしまった。

 他の若い人達も、村からは出て行ってしまったため村はもう何年かで潰れるだろう。


 そんなわけで、少女は遊び相手がいないわけである。

 母と父も畑仕事でいないため、いつも一人で生活を送っていた。


「ふぅ……」


 騒いだ後で、少女は床に放置されたリボンを手に取る。そしてそのリボンで、自身の後ろの黒髪をキュッと結び、ポニーテールにする。

 左右の髪は両耳が隠れる程度だが、後ろ髪は肩よりも少し長い。

 白衣と赤い袴の巫女装束っぽい衣装は、この村の中でもあまり見かけるものではない古めかしい衣装だが、少女の持っている衣服の中では一番のお気に入りである。


「さてと……」


 遊び相手のいない少女の最近の日課は、家にたくさんある本を読むことだ。

 前までは庭にある木刀を素振りして基礎的な体力づくりをしたり、両親の畑仕事を手伝ったりしていたのだが、父の部屋でいくつかの本を見つけてからは体力作りなんて投げ出して本を読み続けている。


「えっとぉ」


 だが、読むのは遅い。この前も『吾輩は犬である』という本を読み終わるまでで二週間以上はかかってしまっていた。他に読んだ本といえば『世界を旅行する』くらいだろうか。

 ラグロイド大陸を中心に様々な国のお話が載っていたが、あまりにも多すぎたので暗記しようとするわけではなくあくまで読み物として流し読みした感じだ。というか暗記できそうに無い。

 今日はどんな本を読もうかな、と少女は温かく優しい印象のある橙色の瞳を輝かせる。

 その目に留まったのは……『勇者アーラン物語』と書かれた本だった。


「ゆーしゃ?」


 少女は興味深げに本を見つめる。

 勇者――それは最も戦う人間たちが憧れる称号の名前だ。

 少女は知らないが、勇者アーランはもう二十年も前に、ゾロアスという『魔王』を討伐した勇者の名前である。聞いたことが無い人間はいないとも言われていて、最も最近起きた魔族との戦争で活躍したのだという。

 おとぎ話の類ではなく、真実だ。……少女は知らないが。


「へぇぇ~」





――ついにアーランは魔王の待つ部屋の前に立つ。

 いよいよ最終決戦が始まるのだ。

 後方は仲間が抑えてくれている。自分は前の敵に集中するだけだ……そう自分に言い聞かせる。


「勝負だ魔王!」


 ガタンッ、と巨大な扉を勢いよく開き、アーランは目の前の強大な威圧感を放つ、魔王へと剣を向けた。


「来たな。その勝負、受けて立とう!」


 ニヤリ、と魔王が笑った。そしてアーランが剣で切り裂こうと飛びかかると同時に、想像を絶する戦いが始まった。



「かっこいいなぁ」


 ごろごろと転がりながら、少女は本を読み続ける。

 物語は終盤に差しかかっていた。

 もう四時間近く読み続けている。少女は頬を紅潮させ、橙色の瞳を輝かせながら読み耽っていた。



――戦闘は終盤に差しかかっていた。魔王ゾロアスはアーランから一旦間合いを取り、全身の魔力を振り絞って両腕に集める。両腕にアーランが今までに感じたことのないような絶大な魔力が集中していく。

 魔王が最後の必殺技を放とうというのだ。

 その魔力はバチバチと唸る雷を帯びたものへと変貌していく。両腕で極限まで溜めた雷を放つのは雷の上級魔法、≪ライザーディフュージョン≫と同じだ。


「ライザーディフュージョン……いや、これは!?」


 ただでさえライザーディフュージョンは危険だというのに、そこにどす黒い魔力までもが集中している。恐らく闇属性と雷属性の複合魔法なのだろう。それも上位の複合魔法だ。

 やはり魔族達を統率する実力者だ。いままで見たどんな魔法よりも危険な予感がアーランの脳を過る。

 マズイ、とそれを見たアーランはその魔法を防ごうと飛び出そうかと迷ったが、すぐにその選択肢を打ち消した。

 間合いを取られてしまったために、避けるか迎撃するかしか選択肢は無くなってしまっているのだ。


「やるしかないか……ハァ!」


 アーランは剣に魔力を集中させる。魔力を纏った剣は、使い手の魔力によって通常をはるかに上回る強度を誇ることができる。だが、この程度の魔法剣で迎撃できる技ではない。


「テンペストクルス!」


 アーランは右手の剣には魔力を溜めたまま、左手で風の上級魔法を作り出す。そして風でできた十字の刃を魔王目掛けて撃ちだした。魔力を一部に溜めたまま別の強力な魔法を放つという芸当は普通ではない。それもそうだ。世の中には生まれつき魔力の流れがおかしく、特殊な怪力や膨大な魔力を持った人間が誕生することがある。アーランは凄まじい魔力を持った特殊な人間の一人であった。


「甘いわぁ!!」


 魔王は完全にチャージが終わっていたわけではないものの、十字の風刃を防ぐために魔法を放った。強大な闇の雷は十字の風刃と衝突する。そのまま風刃を破り、アーランへ向かって凄まじい速さで突き進む。


「やはりダメか……≪アルバフォートレス≫!」


 だがアーランが目の前に巨大な土の壁を作り上げ、一瞬だが闇の雷を防ぐ。

 その一瞬が、アーランの好機だった。


「むうぅん!!」


 その一瞬でアーランは左手に巨大な火球、右手の魔力を帯びた剣に輝く光を発生させた。

 まずは巨大な火球をアルバフォートレスが破壊される瞬間に撃ちだした。

 いかに魔王の必殺技といえど、テンペストクルスにアルバフォートレス、そして巨大な火球……プロミネンスバールという勇者の放った三つの魔法の威力によって打ち消されてしまった。早業である。


「うおぉ!?」

「とどめだ!魔王!」


 アーランは光の魔力を溜めた一撃で、自分の魔法が破られたことに驚く魔王の隙を突き、一気に斬りかかる。呆気にとられていた魔王に、成す術は無かった。

 一つの閃光が、人間と魔族の決戦を終わらせた。


 こうしてアーランはただの冒険者から、多数の魔法と剣技を極めた勇者として、名を馳せたのであった。



「かっこいぃぃ!」


 少女は一人しかいない家の中、テンションマックスで転がり回っていた。


「私も勇者になりたいなぁ」


 あっ!と声を上げながら少女は一気に庭に向かって駆け出した。


「勇者になるなら修行しないとね!」


 少女は庭で一心不乱に木刀を振り回し始めた。


 両親が返ってきたときには、庭で木刀を抱いたまま眠っている少女の姿があった。




「ファイアボール!」


 少女の右の掌に少し大きな火球が発生する。

 どこかへ投げようと思ったが引火しては危ないので、左の掌に水球、ウォーターボールを作り出して相殺した。

 少女は何をやっているのか、それは魔法の練習だ。

 少女は影響されやすい性格なので、『勇者アーラン物語』の影響を物凄く受けて、翌日にすぐに魔法の練習を始めたのだ。


「う~ん」


 少女は庭の地べたに女らしさも微塵も無い胡坐をかくと、横へ置いてあった本を拾う。

 その本には『クソバカでもわかる! 魔法解説書!』と書かれていた。


「ちょっとこれ書いた人どんな顔で書いたんだろう」


 疑問に独り言を言いつつも、本をぺらぺらとめくる。

 本にはこう書かれていた。



 これは初心者にわかりやすく魔法を教える、とっても親切な本です!

 これでわからないあなたはクソバカ以下です。諦めましょう。

 魔法とは何か? と言われることがありますが、魔法とは人間に血が流れているように自然と流れているものですから、説明のしようがないですね。

 まずは魔法の契約から始めてみましょう。

 そうですね、まずは最も簡単な火の魔法と水の魔法から使ってみましょう。

 どうして簡単なのかって?それは魔力のエネルギーをプラスにすれば火属性に、マイナスにすれば水属性に、と原理がわかりやすいからです。

 火の初級魔法と、水の初級魔法のページを開いて、早速契約してみましょう!

 ん?なんですって?契約とは何か?

 魔法とは、魔力をどう操作するかによって変わってきます。単純にプラスとマイナスの炎魔法と水魔法、風に魔力を与えることによって突風を巻き起こしたりする風属性、地面に魔力をぶつけることによって土を柱にしたりする土魔法。など様々です。更に同じ火属性魔法。一般的には炎魔法と呼ばれる物でも、魔力の注ぎ方やイメージする形状によって威力も大きさも形もすべてが変わってきます。

 まあ、雷属性、光属性、闇属性は難しく簡単にはできないでしょうが。

 とりあえず、この本にはそうした先人たちが編み出した技の中で初級、中級、上級と分け更に比較的わかりやすい物だけをピーックアーップ! した最高の教科書なのです。

 おっと、話が逸れましたね。魔法とは魔力の変換をイメージして作るのですが、流石に一から一人でこなすのは神業にも近い物です。感覚の掴み方などで教えることもありますが、一般的には魔法陣を使った契約によって体に馴染ませるのが理想ですね。魔法陣は先人が作り出したもので、これに乗るだけで魔法の感覚が伝わって体に覚えさせられるのです! ま、覚えたからといって使えるわけではありませんがね。全ては実力次第でしょう。

 その魔法陣もたくさんこの本に書いています! お高いお金を出して買った甲斐がありましたね!


「いちいちいらんこと言うな。というかこれ高いんだなぁ」


 少女は独り言を言い欠伸をしながらも続きを読みはじめる。

 いちおうこの本の通りゆっくりと魔法陣を書き、習得はしてあるのでこの辺はおさらいだ。


「次は何を覚えようかなぁ」


 少女は攻撃魔法表と書かれたページを開いた。

 攻撃魔法には属性という物がある。

 これは一般的な攻撃魔法とその契約法が載せられた本だ。

【初級】ファイアボール、イグナ

【中級】フレムボム 火柱

【上級】プロミネンスバール プロミネンスタワー

【初級】ウォーターボール、アイスランス

【中級】アクアボム、フローズバインド

【上級】スプラッシュバール、アイジングバーン 

【初級】ウィンドブラスト

【中級】スパイルブレード

【上級】テンペストクルス

【初級】アースシールド、グルーベ

【中級】ロックミサイル 

【上級】アルバフォートレス

【初級】プラズレイザー

【中級】ボルテルウィップ 

【上級】ライザーディフュージョン

【初級】フラッシュ

【中級】ホーリー・レイ

【上級】クララクロイツ

【初級】ブラックボム

【中級】アン・レイ

【上級】ダークペイン

※この他にもたくさんあるけど、一般的な物はこれくらいだよ!


「お、多い……」


 できなくてもいいから全部覚えますか!っと少女はぶっ倒れるまで魔法陣を書いては乗り書いては乗りを繰り返した。ちなみにこの本には魔法陣を使うと体力が消耗することなど書かれていなかったので、少女は知らなかった。



 翌日は、懲りずに回復魔法や状態異常魔法の契約を一生懸命頑張りやっぱりぶっ倒れた。

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