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子供の頃、親父との二人暮らしがどうにもこうにも嫌でたまらなかった時期があった。
親父が嫌だった訳ではなく、母親というものをよく知らず他に兄弟もいなかったので親父が仕事中はいつも1人家の中だ。
家の中がやけに広く感じて、それがあんまりひとりぼっちで取り残されたみたいな孤独感がたまらなく嫌だった覚えがある。
だからだろうか、子供の頃の誕生日やクリスマスに決まって頼んだお願い事は
「妹か弟が欲しい」だった。
その時の親父の困ったようなどう答えていいか解らないような顔は今でもはっきりと覚えている。
そんな願い事が時を超えて今、まさか叶ってしまうなんて昔の俺が知ったら大喜びだろう。
当時は「もしも俺に妹か弟が出来たらどんなことをして遊ぼうか」なんて出来るわけもないはずだった夢物語に胸を膨らませてたものだが、実際に妹が出来た今当時の夢物語は一向に叶う気配がない。
しかし今の俺はそれほど悪い気分じゃない、むしろ心がウキウキしているとはこのことだろう。
何せようやく俺と妹は2人きりで買い物に出掛けるという約束を取り付けることが出来たのだから。
そう、きっかけは言わずもがな。
親父の誕生日プレゼントだった。
× × ×
「ふ~~~む」
プレゼントの相談を受けた次の日の夕方頃、バイトも休みだったので俺は家に帰ると部屋のパソコンでなにか参考になりそうなものはないかを調べていた。
俗に言う「ググる」というやつだ。
ところでこのググるという言葉検索サイトでお馴染みのグー○ルが元ネタなはずだが、ヤ○ーなんかで検索してもググるというのだろうか?
なんてどうでもいいことを考えながら手馴れた動きで検索エンジンにキーワードを打ち込んでいく。
父親 プレゼント、と。
面白いものでちちお、まで打った段階で予測ワードの欄に「父親 誕生日プレゼント」という素敵なワードがあった。
他の所には「父親 ウザい」だの「父親 憎い」だのあったような気もするがなに、気にすることはない。
どのサイトにもやはりおすすめはネクタイやお酒などいかにも父親へ、という感じのプレゼントばかりピックアップされている。
予想通りだな。確かに良いとは思うのだが…親父もこういうものをあげれば喜ぶのだろうか。
あまりにも無難なもの過ぎて俺にはあまりピンとは来なかった。