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× × ×
「──ふむ、懐かしいな」
「だろ?」
昼飯を食べ終わり、麗らかな天気と美しい花壇を見ながら備え付きのベンチにて懐かしむ俺達。
鈴音との中学の思い出を思い出す内に懐かしくなって俺達はつい昔話に花を咲かせてしまったのだ。
あの一件の後俺たちはすぐに打ち解け、中学から今までこうして一緒にいるというわけだ。
鈴音は見た目だけはすごい美人だし人当たりも良いから告白されたり俺がラブレターを代理で渡したりもあったし、俺と鈴音を恋人だと勘違いして勝手に一喜一憂している奴までいた。
正直な話良くあることないことを噂話として囁かれあまり好い気がしないときもあった。
そういった噂の大小も1年の頃から生徒会長だった鈴音にとってはその程度常に纏わりつくレベルのものでありさして気にすることでもないと笑っていたのだからこの女の豪快さは計り知れない。
生徒会役員として中学時代鈴音とあらゆる行事に参加したことも、陸上部の無かったうちの中学で陸上部を作り部活に鈴音が誘ってくれたことも、高校でだって彼女はずっと俺の隣にいた。
俺にとって鈴音との思い出は殆ど学校時代の思い出全てなのだ。
自然鈴音との思い出話には いつだって花が咲く。
「…全くそれにしても、今日はどうしたんだ圭吾? わざわざ昼食に誘って昔話までして…。何か話したいことでもあるのか?」
「別に、言ったろ。ただの気分転換だって」
訝しがる鈴音に何でもないといった風に言葉を返す。
「気分転換…。先程も私の元気がないと言っていた、な。…そんなにそう見えるか?」
「俺には…何か悩んでるように見えた。…あ、でも無理に話せって意味じゃないぞ? 気分転換しに来たってのも本当な。」
「……全く、付き合いの長さというものは恐ろしいな」
そう力なく笑う鈴音。
「…すまない、キミを信用してない訳では無い。むしろキミのことは誰よりも信頼しているつもりだ。…だけどこれは私がやらなければならない問題だから」
「ん、わかってる。けど無理だけはすんなよ。出来ることがあれば力貸してやるからさ」
そう言うと鈴音は少しだけ安心したような柔らかい表情を俺に向けた。
「…ありがとう」
「お互い様だ」
鈴音にどうしようもないことなら俺では力不足なんだろうけど、それでもなお出来る限りのことはしてやりたい。