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季節は春、5年前の4月のこと。
佐倉圭吾ピカピカの中学一年生であった。
小学校とランドセルを卒業し、同級生とも何人かお別れをした。
そして新しいステージの幕開けである年だ。
春は出会いと別れの季節、というのはその通りだと思う。
新しい友人に中学から導入される部活というものへの興味、思春期ならではの異性への興味もこの頃から沸々と湧いてきたような気がする。
かつて、小学生男子にとって惚れた腫れたというのは男にあるまじき軟弱な行為で恥ずかしいからかいの対象ですらあった。
しかし進級していく毎にその軟弱な行為はいつからか憧れに変わり色めきだつようになり、周りの奴らはカレシカノジョという関係をおママゴトみたいに作ろうとしていくものになっていった。
勿論俺も例外ではない。
これを機に可愛いカノジョか女友達を作ろう、なんて思春期なら誰でも思うようなピンク色の野望を胸に俺の中学生活は始まった。
そして、1ヶ月──。
今日も俺は友人のけんちゃんとユッキー、そして中学に入って新しく友達になった、なっさんとまもるの5人で他愛もない話で盛り上がる。
女っ気まるで0だった。
それはそれで楽しかったのだが、これでは小学生の頃と殆どやってる事は変わらない。
部活も迷ったのだが結局どこにも入部をしなかった。
本末転倒だ。
みんな実は口には出していないが変わろうとしている。
けんちゃんはバスケ部に入部したしユッキーはオシャレに気を遣い始めた。
なっさんとまもるは出会ったばかりだけど、2人共毎日野球部で遅くまで白球を追いかけてる。
俺だけ何も変わってないような気がした。
──そんな俺に人生の転機というものは唐突に訪れた。
ある日の放課後のことである。
俺とユッキーは学校帰りコンビニで道草を食っていた。
1ヶ月以上も過ぎれば変化したものは日常になり、ボンヤリと抱いていた中学生活の憧れというものは諦観へと変わっていった。
──中学生ってつまんないんだな。
そんなことを思いながら週刊誌のページをめくる俺。
そしてふと目をやると隣で立ち読みしてる同じ制服で面識のない男子生徒──ワッペンの色からして先輩だろう──が突然キョロキョロと辺りを確認すると、物陰に隠れおもむろに漫画本を数冊カバンの中に入れていた。