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校庭への道を2人、弁当箱を持って歩く。
鈴音とは付き合いも長いし気心も知れているのでかつての妹とのような気まずい沈黙というものは今更ない。
かといって喋りっぱなしな訳でももちろんない。
結構鈴音と黙って居るの居心地良いんだ。
その日も移動中俺と鈴音の間に特にこれといった会話はなかった。
途中鈴音が「ん」と自販機を顎でさしたので「ん」と頷く。
鈴音は小銭を投入し迷うことなくスポーツドリンクを選択。
ひょいと俺に手渡すと自分の分のお茶も購入した。
「ん」とスポーツドリンク代を鈴音の掌に乗せそのまま振り向きもせず玄関先へ歩いていく。
すると鈴音は丁度方向的に向かおうと思ってた場所へ何も言わなくても向かってくれる。
お互いこれで8割意思疎通が出来るのだ。不思議! と言うよりかは鈴音がスゴイのかもしれない。
案外結婚したら夫の3歩後ろを慎ましく歩く本当に大和撫子になるのかも知れないなとあまり深く考えずに思った。
校庭から校舎裏へ向かう道の途中学校備え付けの花壇が道なりに縦に続き、等間隔にベンチが据え置きされている綺麗な風景の場所がある。
春先は奥の方の木々が鮮やかな桜を咲かせるので中々絶景なのだ。
ある程度まで歩くと俺と鈴音は据え置きのベンチに腰掛けた。
「ふむ。春先以来だな、ここで食事をするのは」
「あー、よく女子達がシート敷いて囲んでお菓子とか食べてたな」
女子会とか呼んでた気がする。
「生徒会の皆ともやった事があるぞ、千鶴の焼いたクッキーは美味かった…」
「そりゃまた羨ましいこって」
懐かしそうにそう洩らす鈴音。
大切な思い出の1つなのだろう。
弁当箱を広げて膝の上に乗せる。
中身は千鶴の手作りだ。
チラリと鈴音の弁当を見ると、弁当ではなくコンビニで買ったと思われるサンドウィッチが1品のみだった。
「そんなんで腹ふくれんの?」
「男子が食べる量と一緒にするな、まぁいくらか味気なくはあるが……」
「なんか食っていいぞ、千鶴の手作りだから味は確かだ」
「本当か!? じゃ、じゃあその玉子焼きを1つ…」
「トンカツも食え。あいつ手間かけて2度揚げとかしてるから」
「ではそれも貰おう」
弁当の蓋に玉子焼きとトンカツを乗っけてやり、すすっと鈴音の横に差し出す。
そして麗らかな天気の中俺達は揃っていただきますを言ったのだ。