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「圭吾はああいう破廉恥な話題には乗らないって信じてたのに…」
「わ、悪かったって。そんなむくれるなよマジで」
「この事、千鶴に言っていいか?」
「バカやめろ! 嫌われたらどうすんだ!」
それは軽く死ねる。千鶴に嫌われてしまうのは俺にとって死と同義だ。
「な、なんでそんな必死なんだ、…冗談だよ。……というか妹にバレたら困るようなことをまずするなよ!」
ごもっともな意見だった。
「──まあいい、この代償として当日までたっぷりと君をこき使ってやる。覚悟することだな」
そうしてふふっと鈴音は笑った。
幾分機嫌は回復してくれたようで一安心だ。
「覚悟しとくよ。……ん。というか安心した」
思わず口についてそんな言葉が出てしまう。
「…こき使われるのがそんなに嬉しいのか…? …マゾに目覚めたのか…?」
ザッと鈴音が椅子ごと後ろへ引いていた。あからさますぎる。
「ちげえよ! ──なんてーか…元気あって安心した…最近お前なんか元気なかったし…」
「…ん。ああそっちか…。元気さ、ずっとな」
言うと鈴音はと一息ついて目を伏せた。
心なしか表情は物憂げである。
──そう、ここ数日の鈴音は正にずっとこんな感じで元気がない。
寝不足でもあるようで授業中など少し眠たそうにしていた所を何度か見ている。
珍しいこともあるものだと思いながら鈴音を観察するとやはりどこか難しい顔をしながら憂鬱そうに窓の外ばかりを見ているばかりだ。
うがぁーっと熱血に怒りぐわぁーと熱血に説教する元気な鈴音を見たのは実は久しぶりであった。
何か個人的な悩みでもあるのだろうか?
聞いても鈴音は何でもないを繰り返すばかりだった。
しかし、そんな鈴音を友人である俺があっそうと放っておくことなど当然出来るはずもなく
「──なあ、鈴音たまには一緒に飯食わないか?」
「はっ? 何だいきなり。別に構わないが、私が圭吾の席に行けばいいのか?」
「たまには別の場所で食おうぜ。そうだな──校庭の方でも行ってみよう」
「ど、どうした? 何だその思いつき?」
「そ、別に意味なんてないただの思いつきだから気分転換に付き合えよ」
「ちょ! 待てわかった! 分かったから引っ張るな!」
──かといってろくろくいいアイデアがある訳でもなく結局「気分転換」に連れ出すくらいしか出来ないのであった。