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だが、待てど暮らせど言い訳の猛者達が戻る気配はない。
まさか失敗…?
誰かがそう呟いた。そしてその不安はすぐさま伝染していき男子更衣室内は半パニック状態となる。
「──信じて待つんだ…!」
井上の力強い声が響いた。
「俺達の仲間を──信じるんだ! あいつらなら…やれるっ」
井上は笑う。
心底仲間を信じている頼もしい目だった。
井上…! 井上…!
皆が井上の言葉に涙を流しかねん勢いだ。この時だけは鈴音以上の信仰力だった。
「──今俺達に出来ることはサミットの続きだ…! 女子のコスプレエロ写真を考えるんだっ! あいつらを信じてっ!」
高らかに宣言する井上。
「「「うおおおおおおっっっ!!!!」」」
再び男子更衣室は熱狂に包まれた。
──ひとしきりそうして盛り上がった所で話題は希望写真を言ってない俺に向けられる。
「お前の一番は妹ちゃんだろうけどな」
「何決めつけてんだよ」
「下級生故、妹ちゃんコスプレ写真は無理だ。が──しかし、もし、だ。妹ちゃんに好きな格好をさせられるとしたら……どうする…?」
なん……だと……?
俺に電流のような衝撃が走る。
「ナースに婦警、ゴスロリ…。意外とチャイナも似合うかもなあ…」
確かに優しくて甲斐甲斐しい千鶴にナース姿はよく似合うだろうし、小さくて一生懸命な千鶴になら逮捕されてみたい。
ゴスロリなんか着たらきっとそれこそお人形さんみたいになりそうだし、チャイナも……うん、それはそれでアリだ。
「兄として…お前が一番いいと思うのは何だ…?」
一番似合いそうなコスプレ…。
小さくて一生懸命でおっとりしてて、とすると……。
「──犬耳、とか…? …尻尾も込みで」
──その瞬間、クラスの男子が一斉に大歓声をあげた。
さ、さすがだ、その破壊力はすごすぎる、それも尻尾まで込みだぞ、なんてこだわりだよ、本人のキャラを完全に理解してる、シスコンだ、ああシスコンだ。
男子更衣室全体が絶賛だった。
「流石だ圭吾…。じゃあ次はクラスの女子だ! お前なら誰のどんな写真を選ぶ!」
クラスの女子。問われて直ぐに鈴音の顔が浮かび上がる。
「…鈴音の…猫耳メイド…とか──」
「──何の話だ、圭吾」
──瞬間、氷よりも冷たくナイフより鋭い鈴音の声が背後から突き刺さった。