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この度わたくしに妹が出来ました  作者: 犬塚猫蔵
3章・前編「会長と初めての思い出」
77/163

10P

 俺達の緊急サミットはクラスに1人も男子がいないので心配になって探しに来た女子に駄々漏れだった。


 サッカー部マネージャーの青崎だ。


 同じくサッカー部の刈谷から大アプローチを受けて先々週ついに恋人同士になりクラス公認のラブラブカップルだったというのにも関わらず刈谷が名指しされた時、なんの躊躇も恥じらいもなく


「自分は鈴音会長の巫女写真であります!!」


 と高らかに叫んでいたのをバッチリ聞いたものだからドア越しから見える彼女はドン引きの表情だった。


 ちなみに刈谷が好きなのはもちろん青崎だ。それについては紛れもなく本物の想いなのだ。


 だが、しかし彼は巫女萌えだった。


 そしてクラスで一番巫女姿が似合う女子といえば、見た目大和撫子の鈴音を置いて他にいなかった。


 決して青崎も悪くはない、しかしそれは刈谷の求める完璧な萌えとはまた一線を画すものだったのだ。


 しかし青崎にとってはそんな男のロマンなど到底理解できないものだった。

 どうでもいい後日談をすると、青崎に聞かれたと知った刈谷は大慌てで青崎に何度も釈明し、泣いて謝り、あまつさえ土下座までして見せたが


「近寄らないで変態!」


 と3発も平手打ちを喰らい、あえなく破局してしまったという。


 それを聞いたクラスの男子は口を揃えて女はひでえだの人間のやることじゃないだのあいつらには血も涙もないだのと糾弾した挙句傷心の刈谷を「俺達がいるじゃねえか!」と青春映画も裸足で逃げ出す爽やかさで手厚く励まし胴上げまでかましたことによりクラス男子陣の結束が深まっていくことになるのだが、それは全く関係ない。


 問題は女子にこの緊急サミットが知れてしまったことだ。


 それもその事態にまだ俺以外気付いていない。


「井上、待て緊急事態だ」


 事の重大さを俺はゆっくりと皆に告げる。



 ザワザワ、お、おいやべえぞ女子にバレたぞ。おい誰か刈谷の顔色が土毛色だぞ! 



 男子更衣室に激震が走った。


「写真販売どころじゃない、このままだとコスプレ喫茶案だってなかったことに──」


「誰か言い訳を! 自信があるものは5分で言い訳を考えるんだっ!」


 そして立ち上がった言い訳のスペシャリストたち。


 皆女たらしで日頃から女子に言い訳ばかりしてるような猛者ばかりだ。


「頼んだぞ──」


 皆の期待を一心にその猛者達は女子たちの元へ行った。

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