表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この度わたくしに妹が出来ました  作者: 犬塚猫蔵
3章・前編「会長と初めての思い出」
73/163

6P

「どうもなんないって。よくある殺し文句だよ」


「そ、そうなんですか……よかった…」


 ホッとする千鶴だったが、繋いだ手は未だ強く握られている。

 というかいつのまにか俺の腕にしがみつくような態勢になっている。


 DVDの内容よりこっちの方がドキドキものだった。


 しかししがみついている本人はそれどころじゃない。

 こっちが腕に当たる千鶴の柔らかい身体の感触や女の子特有の匂いに内心クラクラしそうになっている間どうにか画面の恐怖と戦っているのだ。


 テレビの中では崩れそうな廃ビルを指し、ビルの地下は魔界と繋がっていて入ったら二度と出られない禁断の場所などともうチープを通り越していっそ少し厨ニ心をくすぐられそうなモノローグが流れている。


 顔は出てないが偶然魔界を見てしまったという男が低い声でエピソードを語っていた。


 魔界から出てこれてんじゃんこの人…。

 あ、しかも声色替えてるけどこれさっきの色んな役こなしてたチャラ男だ。

 服装同じだからすぐ判った。

 せめてキャスト変えろよ。

 などとツッコミどころ満載なこの映像もやはり千鶴は怖いらしい。


「に、兄さんはこういう危ないトコ行かないでくださいね…?」


「いや、行かないけどさ…」


 廃ビル自体危険なのでそれに対しての心配なのか俺が魔界に引きずり込まれるかもしれないことに対しての心配なのか真意は定かでは無い。


「……魔界……恐ろしいです…」


 いや、魔界って…結局なんなんだよ…。



 ──結局なんとか俺が借りてきたDVDを1枚見ることができたのだが


「何回一時停止押したんだよ…」


「………うぅ」


 30分で見終わるはずのDVDは千鶴の恐怖が限界になる度一時停止して休憩、落ち着いたらまた再開を繰り返したおかげでなんと見終わるのに1時間半も掛かってしまった。


 1時間半ずっと握られっぱなしだった俺の手はほんのりと赤く充血している。


 よほど神経を使ったのだろう、千鶴はグッタリと疲労していた。


「で、でも……何とか見終われました…」


 確かに何度も逃げそうになりつつも一本ホラーを観た事は千鶴を知る俺からみればこれはすごい事だ。


「ん。…頑張ったな」


 千鶴の頭に手を載せワシャワシャと撫でてやる。


「…えへへ」


 親に褒められた子供のように嬉しそうな千鶴だった。

 いかん、つい甘やかしてしまう…!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ