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──そもそも何故俺たちがこうして日曜のリビングでカーテンを閉め切って雰囲気を出してまでホラーもののDVD鑑賞をしているのか。
きっかけは2日前千鶴から相談されたのが始まりだった。
× × ×
「文化祭の出し物?」
「は、はい…」
控えめなノックと共に現れたのは千鶴。
最近俺達兄妹の関係はそこそこ良好になっていると思う。
まず、よく部屋を行き来するようになった。
親父達は世界一周旅行からまだ帰って来ていないので、この佐倉家においてコミュニケーション相手としては家の中ではお互いしかいない。
二週間近くそんな状況が続けば流石に仲も良くなろうというものだ。
そして、俺と千鶴が子供の頃出会っていたという事実。
それもまた俺達にはいいカンフル剤となった。
俺がその事を思い出せたあの日から何故か俺達の間の気まずい空気というものは鳴りを潜めたのだ。
おかげで、少し前までは考えられなかったくらいに俺達は「兄妹」をやれている。
そんな俺達の最近の話題は専ら、開催が近づいている我が校の文化祭だった。
「兄さんのクラスは何をやるんですか?」
「まだ本決まりはしてないんだけど、多分喫茶店になると思う」
営業方針について今うちのクラスでは男女で激しい討論を繰り広げている真っ最中だが、話しの方向としては喫茶店自体になるのは間違いなかろう。
ちなみに題目はコスプレ喫茶。互いに理想の喫茶店像が違うらしく、主に衣装の問題で壮絶な舌戦を繰り広げているのだが、それはまた別の話だ。
「喫茶店…兄さんも出るんですか?」
「俺はなし崩し的にキッチンに回されたよ」
「あ、なるほど」
千鶴が納得する。
料理が少しでも出来るならキッチンへ、ということらしい。
どうもキッチンに関しての戦力が心配なところだ。
「多分接客係のリーダーは鈴音だな」
「会長がウエイトレスさんやるんですかっ!?」
言った途端目をキラキラと輝かせる。
「うわあ、見てみたいなあ…どんな感じなんだろう…。会長のことだから何着ても似合うんだろうなあ…」
ウエイトレス姿の鈴音を想像しているのだろうか、千鶴は幸せそうにニヤニヤとしていた。
お前は鈴音のこと好きすぎるだろ。
何? 百合なの? 兄さんそれ範疇外だからね?