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この度わたくしに妹が出来ました  作者: 犬塚猫蔵
妹と初めての2人ぐらし
65/163

35P

                 × × ×



「──ね? 会ってたでしょ?」


 イタズラっぽく当時の俺が助けた女の子──千鶴は笑った。


「おもい、だした」


 そうか、あの時の。

 あの時のあの子って

 千鶴。だったんだ。


「とっくに気付いてると思ってました」


 途端に拗ねたような声を出す千鶴。


「私、ちゃんと名前名乗ったし。同じ学校だったし、あんなに優しくしてくれたのに──」


「だ、だって! お前公園来なかったじゃん!」


「行きましたっ! 何度も! 声はかけられなかったけど……」


 ご友人と遊んでましたし…と力無く千鶴は付け足す。


「あの後すぐ私、あの時のお兄ちゃんのこと探し回ったんです。思ったより早く見つかりましたけど」


「あ、そうなの…?」


「はい。──小学校同じでしたから」


「うえええええ!!!?」


 何それ初耳!


「やっぱり気づいてなかった!」


 すっかりふくれっ面な千鶴だった。電気付けなくてもはっきりわかる。


「なんで、兄さんは妹の出身校も知らないんですかっ!」


「ご、ごめん…」


 千鶴に怒られた…。ショックすぎて死にたい。あ、涙でそう。

 もう、まったくもう。と千鶴はブツブツと文句を言っている。

 こんな千鶴は初めて見る千鶴だった。


「その様子だと兄さん、もしかして中学も同じだって知りませんでしたね?」


 ジト目を向け俺を見る千鶴。


「……あ、や、やっぱりそうなんだ」


 ため息をつく千鶴たった。


「………兄さんのバカ……。まあ私中学まで地味で目立たない子だったから無理ないですけど……」


 確かに小、中と千鶴のような優秀な生徒がいたら嫌でも耳に入るはずだ。

 なのに俺はそんな話をチラリとも聞いたことが無かった。


「中学の終わりにたまたま会長と出会って……変わろうって思ったんです…」


「あー、なるほどね」


 あいつそういうの大得意だから。


「とにかく、だから私は兄妹になるずっと前から──兄さんを信じてるんです。……あの時の言葉本当に……嬉しかったから……」 


「千鶴…」


「ずっと声はかけられなかったけど……兄さんのことはいつだって見てました。…ずっと…話したいなって思ってました…だから──」


 そう言うと千鶴は俺の手を握る。



「──私、兄さんの妹になれて良かったです」



 そんな言葉と共に、いつまでも手を繋ぎ合う俺達だった。

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