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──そうして探し回ることしばらくして
「あ、あった! ありました!」
と、突然女の子が鍵を発見して何とか俺達は鍵探しにピリオドを打つことが出来た。
俺も女の子も泥だらけである。
よかった。ホッと息を撫で下ろす。
鍵っ子にとって家の鍵というのは正に生か死かの境を分ける文字通りキーアイテムなのだ。
絶対になくしてはならないものだし、なくしてしまった場合一番困るのは他でもない自分だ。
そのことを痛感している俺は女の子が嬉しそうに笑うのを見て自分まで嬉しくなってしまっていた。
そうして2人しばらくあはは、えへへと笑い合っていたが、ふと我に返るともう日はどっぷり暮れていた。
「流石にそろそろ帰んなきゃな」
「……はい」
と言いつつも女の子は掴んだ手を離さない。
「なんだよ、寂しいの?」
「………うぅ」
顔を俯かせて唸るだけだった。
どうやら当たりらしい。
「さっき頑張ろうぜって言ったばかりだろ?」
「……………うぅ」
先程まで聞き分けが良かった女の子は駄駄っ子のようになっていた。
「これ以上暗くなるとほんとに帰れなくなるぞ?」
思いついたように言ってみる。
すると女の子は途端に涙目になって「……お、おばけがでるからですかっ!?」
と俺に縋るような目を向ける。
ぎゅ~。
繋がれた手が更に強固になってしまった。
「い、いや、暗くて危ないからだけど」
何故かお化けというワードを極端に恐れていた。
まあぶっちゃけ俺も怖いし、別に普通なのかもな。
「大丈夫だ。おばけなんていない。…家どの辺?」
「…すぐちかくです」
「そっか、なら1人で帰れるな?」
躊躇いがちにこくんと頷いた。
だが女の子は俺の顔を潤んだ目で見上げるばかりだ。
どうやら本気で寂しくなってきたようだ。
「…また会えるって」
「……ほんとに?」
「ああ、寂しくなったらここ来いよ。俺大抵いるからさ」
言うと「……はい」と1言だけ返事をして女の子は名残惜しそうにゆっくりとその小さな柔らかい手を離してぺこりと行儀よく頭を下げた。
「…あ、あの、…助けてくれてありがとうございましたっ! ええと──」
そう言えば名前を聞いてなかった。
むしろ名乗ってすらいなかった。
「俺、佐倉圭吾。お前は──?」
「──私は、私の名前は」