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6P

「そんな気にすんなって」


「あぁもう……なんてことを…おかしいなあ、お風呂から上がった時は確かに22時くらいだったのに」


 どうやら聞こえていないらしい、千鶴は涙目で後悔の言葉を呟いていた。少し大袈裟なくらいの反省ぶりだった。


 俺は、本当に大したことじゃないんだよー、謝るほどの事じゃないんだよー、という感じに千鶴に声をかける。


「本当に気にすんな、俺いつもこの時間まだ起きてるし」


「うぅ…それでも本当にごめんなさい。こんな時間にいきなり押しかけてしまって」


 まぁ確かにびっくりはしたけど。


「そんだけ親父のプレゼントを真剣に考えてたってことだろ、頼ってくれて嬉しかったよ」


 これは本音だった。少しでも千鶴の力になれることが俺はかなり嬉しいのだ。


「あ…い、いえ…その…こちらこそ…ありがとうございます」


 何故か更に顔を赤らめる千鶴。


 わたわたと慌てた後、ぺこりと頭を下げた。


 その様子は小動物のようでどこか微笑ましい。


「そ、それでは私部屋に戻りますね」


 まだ少し赤い顔のまま、ゆっくりと立ち上がった。


 部屋のドアを開けようとするその華奢な背中に俺はもう一言だけ声をかけた。


「千鶴、おやすみ」


「え、あ、…おやすみなさい…」


 振り向いてその大きな瞳をこちらへ向ける。


 ドアを閉める寸前、隙間から千鶴がもう一度軽く頭を下げたのが見え、パタンと控えめな音を立て、ドアが閉まった。


 と同時に俺はふっと息をつく。


 千鶴はかなり緊張していたが、実は俺も少し緊張していたのだ。


 だってどんな感じで話せばいいか解らないし、そもそも女子と話すのは得意ではない。


 加えて千鶴の一挙手一投足にドギマギしてしまい、平静を装うのが大変だった。


 兄としていかんと思いつつも異性を意識してしまう。


 千鶴と話す時はいつもこうである。


 お互いに余所余所しいというか、どこか遠慮気味というか。


 千鶴と仲良くしたいと思えば思う程、上手く話せなくなってしまう。


 そんなものだからてっきり千鶴の方は俺にあまりいい印象を抱いていないものと思い込んでいたが、こんな相談をしてくるくらいだ。


 向こうも少しは良好な関係を望んでいると思って、いいのだろうか。


 さっきまで千鶴が座っていた場所をぼうっと眺めながら俺は今日のことを少しだけ思い出していた 。



                × × ×


 

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