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「うぅ……恥ずかしいよお……」
あの後、完全にパニックになった千鶴は普段からは想像もつかない程に取り乱
した。
どうにか宥めようとしたのだが俺も冷静ではなかったらしい。
停電は一過性のもので5分もすれば電気は回復したのだが、パッと点いた灯りの中照らし出されたのは俺が千鶴をギュッと抱きしめている態勢の、見る人が見れば非常に「ラブラブオーラ全開」な姿だった。
しかも電気が点いた後も一定時間千鶴は混乱していたようでそこからしばらくの間俺の腕の中でカタカタと子犬のように震えていたのだ。
「大丈夫だよ、ただの停電だから」とか「落ち着け~もう電気点いたぞ~」とか「も、もう怖いのいなくなったぞ~」とか散々あやしてみたものの、結局千鶴が落着いたのは電気が回復してから更に10分以上経過した後であった。
千鶴は未だに真っ赤なままの顔と潤んだ瞳で申し訳なさそうに頭を下げる。
「ほ、ほんと~にごめんなさいっ…!」
「い、いやまあしょうがないって。それにしても、そんなに苦手だったんだなお化け…」
涙目ではいと応える千鶴。
心なしかシュンと落ち込んでいた。
「小さい頃から本当に駄目で…これだけはどうしても慣れません……」
「なら言ってくれれば良かったのに。怖かったならすぐチャンネル替えたぞ?」
「だ、だって…兄さん…面白そうに見てたから……邪魔しちゃ悪いなと思ったんです…」
そんなものを少しでも見てしまって今更一人自室に篭もるというのは千鶴的には有り得なかったそうだ。
と、すると俺の為に我慢してくれてたったこと?
「なら俺の責任でもあるな…。ごめんな千鶴怖い思いさせて」
「い、いえ! そんな! 兄さんのせいじゃ! そ、それにパニックになった時…………助けてくれましたし………」
俯いてぼしょぼしょと呟く千鶴。
千鶴は優しいからフォローはしてくれるけど、この事態が鈴音あたりに知れたら事である。
「君は、妹の怖いものすら知らんのかっ! それでも兄か!」
文字通り激高する姿が容易に浮かぶ。
「──ひとまずさっきのことは忘れよう。な?」
「えぇ。そ、そうですね。気を取り直しましょう」
気持ちを切り替える。これ結構重要。
「じゃあまず嫌な汗かいちまっただろうし、シャワーでも浴びて来いよ」
そう提案するも、何故か固まった表情のまま動かない千鶴。