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「いつもお世話になってるし、すごく優しくしてくれるし…せっかくだからちゃんとしたものをお贈りしたくて…その…プレゼントの内容のご相談です」
なるほど。
実の息子である俺はすっかり忘れていた。
親父の誕生日を思い出したと同時に千鶴の相談事にも合点がいく。
「私、誰かに贈り物をしたことが無くて…どんなものをプレゼントすれば喜んでくれるのか…よく分からないんです」
「プレゼントねぇ…。親父は多分何プレゼントされても喜ぶと思うぞ」
親父は滅茶苦茶千鶴を溺愛している。ともすれば実の息子よりもだ。
まぁ真面目で可愛らしく、お淑やかな出来のいい娘が出来たのだ。気持ちはすごく分かる。
そんな娘からのプレゼントだ、元々単純でお人好しの親父がその上愛する娘への贈り物にケチをつけるなどどう考えてもあり得ない。
「それは、そうかもしれないんですが…」
お父さんは優しい人ですし…と付け足してそれでも千鶴は考え込む素振りを見せる。
「どうせなら本当にお父さんが欲しいものをあげられたらなって、きっとその方が喜ぶだろうなって…思ったんです」
「まぁ確かになあ」
貰って嬉しいものとそもそも貰う行為自体が嬉しいことは似ているようで別だ。
「お母さんに話したらうっかり喋っちゃいそうだし、自分一人でも頑張ってみようと思ったんですけど…いい案が思い浮かばなくて…」
それでここまで来たと。確かに妥当ではある。
ともあれ千鶴がどうして急に俺を頼ってきたのかはなんとなく分かった。
「分かった。協力するよ」
「本当ですか……?」
俺がそう答えた瞬間顔を上げた千鶴の表情が少しだけ明るくなった。
けど、と俺は付け足す。
「親父の欲しい物を調べるのは明日からだな」
横目で部屋の時計を見る、ハッと気付いたように千鶴も時計を見た。
時刻は現在0時過ぎ。
この時間じゃ何をやるのにも遅すぎる時間帯だ。
あと千鶴は朝も早いのでこれ以上夜ふかしさせる訳にはいかない。
「ご、ご、ごめんなさいこんな夜遅くにっ!!」
多分時間も確認するのを忘れるくらいずっと考えていたのだろう。
焦りと申し訳なさから何度も頭を下げる千鶴。まるでテストで悪い点数を取ってしまった子供みたいだった。
そんな謝るほどの事じゃないのにと内心で苦笑する。