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千鶴は恐らく今日、部活だろう。
以前鈴音から聞いた話では生徒会の会議というものは基本的に、毎日やるものではなく何か起きない限り基本的に週1レベルのペースなので部活動を兼任している者は大抵部活の方を優先させているらしい。
格技場の方にチラリと目をやる。
もう少し気にかけてやれってか…。
「気にかけてるつもりだったんだけどな…」
何事も思っているようにはいかないものである。
× × ×
家に帰ると当然のように誰もいなかった。
物音1つしない空間、ほんの少し前までは当たり前の光景だったのに、最近は
「おかえりなさい!」と出迎えてくれる人が居てくれたので、久しぶりの感覚だったりする。
さすがに高校3年生男子が誰もいない自宅を我慢出来ないほど寂しいとは思わない。
千鶴だってそういう素振りは見せないし、ともすれば鈴音の考えすぎじゃなかろうかなどと受け流すことも出来る。
けれども、もし少しでも千鶴が寂しいと感じていたのなら。
少しでも子供の頃のことを思い出していたのなら。
それを何とかしてやりたい、と思うのは過保護なのだろうか。
よく分からなかった。
「とりあえずたまには俺が家事やるか…」
たまには出迎えるのも悪くないだろ。
とは言ったものの家の中は掃除が完璧に行き届いているし洗濯物もない。
リビング、浴場、キッチン、果てはトイレまで見てみるもなんと汚れ一つない状態だ。
千鶴のやつ、普段どれだけ掃除してんだよ…。
母さんが旅行に行く前より少し綺麗なくらいだぞ。
冷蔵庫の中は少量の具材が綺麗に並ばれていた、恐らくだが今夜の夕食の材料だろう。
しかし千鶴が帰ってくるのはまだもう少し後だ。
今からご飯を作るのはちと早い気がする。
…そうなると俺にやる事はほとんどないのであった。
「千鶴が優秀なのか、俺が無能なのか…」
判断に迷うところである。
それにしても、普段からこれだけ徹底して家事をこなしているのなら千鶴にだって余った時間くらい多少あるはずだ。
千鶴は余暇の時間を何に使っているのだろうか?
真面目だから勉強? いやいつも勉強は夕飯後にしてるみたいだし、自主練? も違うな…。
ううむ、想像がつかない…。