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妹との2人暮らしが始まって早くも10日が過ぎた。
最初の頃は戸惑うことも多かった俺達だって1週間も過ぎれば慣れるというものだ。
その結果、顔を合わせれば会話はするものの基本的に生活サイクルは相変わらず噛み合わないので関係性に変化はあまりない。
それでもかつては1日顔を合わせないということもあったくらいだ。
それに比べればまだマシだろう。
時刻は現在3時50分前後、すでに学校は授業を終え、放課後だ。
普段の俺ならこの時間は既にバイト先に向かっている所だが、本日は昨日まで連日の出勤がようやく終わり、実に10日ぶりのなんの予定も無い暇な日なのである。
といっても学校に意味も無く居続けるのにも流石に限界がある。
親しい友人は部活をやっている人間が多いし、どこかに遊びに行くといったことも考えていない。
という訳で大人しく帰路について、せめて時間のある時くらい俺が家の事をやろうかなどと殊勝じみたことを考え、教室を出た矢先仁王立ちで俺の前に笑顔で立つ鈴音がいた。
「暇そうだな圭吾」
俺に微笑む鈴音。
「まあ今日はたまたまな」
「バイトも休みで何もする事が無いらしいな」
何その情報網、誰から聞いたんだよ。怖えよ。
「千鶴から聞いた」
俺の疑問を察したのか鈴音はそう付け足す。
「何でも最近はバイト続きでロクに食卓も囲っていないそうじゃないか」
「…まあ互いに忙しいからな」
「口には出さないがやはり千鶴は寂しそうだぞ。…全く…高校生からそんなにバイトに精を出してどうすると言うのだ…」
呆れたように鈴音はため息をついた。
確かにあまり高校生らしくないかもしれない。
学生のシフトというのは大抵スカスカになっている。
それは学生の本分が働くことにないということであり、勉学、部活動、遊びなど今しか出来ないことを優先する者が殆どだからだ。
例外ももちろんあるが大抵の同年代はお小遣い稼ぎ程度のシフトしか入れない。具体的には多くても週3~4といったところか。
働く動機だって実に明確なもんだ。
一方俺の場合は、というと恐らくだが普通の高校生の倍以上働いていると言っていい。
動機もやや異なっている。
生活費のためでも遊ぶ金欲しさでもない。
「時間を持て余しているから」だ。