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夕食を食べ終わり、後片付けも済ませると途端にやることが無くなってしまう。
テレビをぼーっと眺めているがやはりそこまで面白い番組はやっていないようだ。
千鶴は後片付けが終わると、宿題があると言い自室へ戻ってしまった。
……暇だ。
親父達の見送りがあったので、俺も千鶴も今日一日はバイトや部活を休ませてもらった。
その結果なんとシフトの都合上明日から当分休みはないらしい、先程店長が申し訳無さそうな声で電話をくれた。
働けるのはありがたいし、もう随分慣れた職場なので、それはいいんだ。
だけど…また明日から千鶴とすれ違いになってしまうかもな。
少なくとも今日みたいにずっと一緒にいるということは当分無さそうだ。
まあ普段からずっと一緒に居るわけじゃないから、ある意味平常運転なんだけどさ。
と、つらつらと明日の心配をし始めていた時、浴場の方からピロリロリン♪と間抜けなメロディが響いた。
風呂が湧いた合図である。
「ま、明日からのことは明日考えればいいか」
独りごちて千鶴を呼びに行くことにした。
──千鶴の部屋を軽くノックする。
しばらくして「…は、はーい」とぐぐもった声が聞こえてくる。
「千鶴、風呂湧いたから先入れよ」
「あ、わかりました、すぐ行きます」
物音1つしなかったからもしかして寝てるんじゃなかろうかと思っていたが、どうやらかなり集中して勉強をしていたらしい。
さて俺も一旦部屋に戻るか。
適当にパソコンでネットでもやっていよう。
だが、そうして帰ろうとした矢先ガチャリとドアが空いて千鶴に呼び止められた。
「あ、あの、兄さん」
「ん? どした?」
「その……お風呂、先に頂きますね」
やけに顔を赤くしながら千鶴はそんなことを言い出した。
照れる要素なんかあるか? なんでこんな真っ赤になってモジモジして俯いてんのこの娘?
「おう、ゆっくりして来い」
無難に言葉を返す。しかし千鶴はまだそこから動こうとせずモジモジしている。
「は、はい。………あのっ!」
「な、なした?」
「えと……その……1ヶ月……よ、よ、よろしくお願いします……」
そうペコリと頭を下げた後、俺の返事を待たずぴゅーと浴場に向かって行った。
「……こちらこそ」
聞こえるはずもない返事を思わず呟いて苦笑してしまった俺だった。