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「ふむ、いいな。ちゃんと兄妹やってるじゃないか」
ほっこりとした感じで鈴音が笑う。
「そ、そんな…まだ私なんて全然ふつつかもので…」
千鶴その表現なんか違わね?
「まあまあ、そんなものだろう家族というのは。弱い所や足りない所を見せあってなお寄り添い合う。それが理想の家族像だと私は思う」
なぜだか含蓄のある言葉だと感じた。
俺と千鶴が感心していると、鈴音は「まあ深い意味はないがな」と軽い感じで流す。
「おっと、これ以上話しこむのは悪いな。それじゃ2人共、なにか困ったことがあったらいつでも連絡してくれ。大切な友人と妹分の頼みとあらば全力で力になろう」
「おう、サンキュな」
「ありがとうございます、会長」
そうして鈴音は去っていった。
どうでもいいけどあいつの歩き方武士みたいでやけに男前だよな。
千鶴は身長のせいかちょこまかと小動物みたいに歩くのだが、鈴音は正に闊歩といった感じで、堂々たるものだ。
花菱鈴音という人間の生き様を表しているようで、なんだかカッコ良かった。
「はあ…会長カッコイイなあ…」
ふいに千鶴がそう呟く。
「なんだ千鶴、鈴音みたいになりたいのか」
「だ、だって、美人だし、人望あるし、文武両道で落ち着きもあって…でも熱い
ところもあって…優しくてカッコよくて………おまけに背も高いし………」
背低いの、気にしてんだな…。
「あんな凄い人が身近にいたら…そりゃあ憧れますよ…」
「あいつは昔から完璧超人だったからな~」
絶対的に正義で、絶対的に優秀。
俺みたいな凡人よりもよっぽど主人公に近く、ヒーローと呼ぶに相応しい存在。
それが花菱鈴音である。
「そういえばやけにあいつ千鶴のこと可愛がってるよな」
「そ、そうですか? 確かにいつも良くしてくれますし、たまにムギュ~ってされますけど」
なにそれ百合かよ。俺は範疇外だぞ。
「妹分って言ってたしな」
「生徒会直々の後輩ですからかね、どのみち嬉しいです。えへへ」
「妹分だと思われてること?」
その問いに千鶴は喜々として答えてくれた。
「もちろんですっ! 私も、会長のことはお姉ちゃんみたいに思ってますから!」
う、羨ましいぜ…。
僅かなジェラシーを感じつつも俺は鈴音と千鶴の仲良し話を聞きながら家路へと向かうのだった。