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玉ねぎ、人参、ピーマンなどなど。
きっちり2人分だろう量をカートにどんどん載せた後どんどん先へ進む。
途中パン粉や卵なんかも手に取り、小さいパックの牛乳まで入れていた。
そして極めつけ、肉コーナーで千鶴が手を付けたのは挽き肉。
これはもしや。
「ハンバーグ、か」
恐らくハンバーグの材料と一緒にカートに入れたじゃが芋とレタスは付け合せだろう。
思わぬ好物に自然、声色も明るいものとなる。
子供舌と呼ばれても構わない。俺はハンバーグが好きだっ!
「ふふっ正解です。前お母さんのハンバーグ美味しそうに食べてましたもんね?」
ドキリとする。そんなこと覚えてたのか。
だからハンバーグにしてくれたんだ。
感激。これで妹じゃなかったら完全に惚れている所だ。
井上のアホあたりは「毎日あんな可愛い娘と2人きりとか理性が持たんだろ~!」とか興奮していたが、これは断じてそんな邪な下心ではない。
(妹って…いいなあ…)
誰かに聞かれたら勘違いされそうなことをぼんやり考える不肖の兄であった。
「そういえば千鶴は食べ物、何が好きなんだ?」
「私ですか? う~ん…何でも食べますよ? でも強いて言うなら…卵料理とか…」
「へえ、卵料理なら何でも好きなの?」
「そうですね、目玉焼きも卵焼きも、オムライスも……プリンとかも……」
好きなものの事を語っている時の千鶴は何だか幸せそうで微笑ましい。
「じゃあ今度は卵料理にしような」
「…! は、はい!」
今日一番嬉しそうな千鶴だった。
サクサクと買い物も終わり帰路についている最中、意外な人物に遭遇した。
「あ」「お」「おや」
順番に千鶴、俺、そして鈴音である。
「会長、こんばんわ」
「こんばんわ千鶴。今日も小さくて可愛いな」
開口一番チャラ男みたいな口ぶりだった。
「よ、鈴音」
「圭吾もこんばんわ。見るからに夕飯の買い出しか?」
小さく頷くと鈴音はふむ、と視線をレジ袋の中身に移した
「袋の中身から察するに…ハンバーグか」鈴音がそう呟く。
「千鶴から話は聞いている。御両親は世界一周旅行だってな」
「あぁ参るよ。1ヶ月子供達だけの生活だからな」
「でも、こういうのも新鮮でちょっと楽しいですよ」
「ん。そーだな」
それについてはまあ同意だ。