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× × ×
それからしばらく、俺は自室で勉強をしていた。
気付いた時に勉強をしないとすぐに成績が落ちてしまう。
俺の志望校は、東京にある少しレベルの高い大学だ。
その気になれば目指せる、という担任の発破を真に受けこうして必死に努力を重ねているのだが、いつまでやっても勉強というものは中々キツい。
区切りのいい所で参考書を一旦閉じ、時計を見るとそろそろ4時半前。まだ日は高いもののもう夕方と言っていい時刻だった。
──と、その時控えめなノックが聞こえる。
「どうしたー?」
今この家には俺と千鶴しかいないので間違いなく千鶴だろう。
「えっと……私これなら夕飯のお買い物行ってきますけど……何食べたいですか?」
「え? う~~ん…。…すぐには思いつかないから俺も行っていいか?」
そう言うと、少し間を空けて、
「………は、はい」
と帰ってきた。
「ちょいまち、すぐ支度する」
「は、はい! 急がなくていいので、ごゆっくり!」
その声を聞いて俺はのそのそと着替えを始めた。
──という訳でその数分後2人で夕飯の買い出しに行くことに相成った訳だが、ここで1つ主観的な話をしたい。
バリューマックスというスーパーはなかなかに優秀だと俺は思う。
品揃えも豊富、値段は優良、品質だってまあ捨てたもんじゃない。
まあうちの場合は徒歩10分圏内で行ける最寄りのスーパーだから、というのが一番の理由だが。
自動ドアを通過し、ガラガラとカートを押しながら俺は千鶴の後ろを歩く。
先程のシーフードドリアの1件で当面の食事担当は千鶴に相成ったので、ここでは千鶴がイニシアチブを握ることになる。
あんな美味いもん、俺には作れないからな。妥当だろ。
「兄さん、晩御飯は何が食べたいか決まりましたか? 遠慮しないで何でも言ってくださいね♪」
スーパーに入った途端女性の機嫌指数はほんの僅か上昇するような気がする。特にセールの時とか。
それは女性特有の本能なのか、千鶴の機嫌も割りと良かった。
ゆっくりなテンポで俺たちは野菜コーナーを闊歩していく。
「そうだな、さっきは魚介類だったから……肉とか?」
「お肉ですねっ、了解です♪」
と言いつつ玉ねぎを放り込む千鶴。
野菜も食えってか…。いや好きだけどね野菜…。